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21・思い出はこれから……
「嫌じゃない!」
反射的に答えて、あなたはわかった。
好意を持つ、どころではない。
あなたは一郎に恋をしていたのだ。
自分でもおかしいと思う。
相手は記憶喪失のあなたを座敷牢に閉じ込めている男性なのだ。
きっと理由があるのだと思っていろいろ考えてきたのだが、納得できる理由は思いつかなかった。記憶喪失の人間を座敷牢に閉じ込めることに、納得できる理由なんてあるはずがない。
「あ……」
頬が熱くなる。
初めての感覚だ、と思う。
記憶喪失でもわかる。これがあなたの初めての恋だ。
「……良かった」
一郎が幸せそうに微笑む。
「あなたは僕の花嫁です」
真っ直ぐにあなたを見つめて、彼は初めて会ったときの言葉を繰り返す。
それは真実なのだ、とあなたは感じる。
座敷牢に閉じ込められていた理由はわからない。記憶を失う前のあなたと彼の間になにがあったのかはわからない。それでも――
「あなたは私の花婿なのですね」
「はい」
あなたが彼を愛していて、彼があなたを愛していることはわかる。
「きゃふ」
祝福するように犬が鳴く。
あなたは一郎の花嫁になる運命を受け入れた。
思い出はこれから作っていけば良い。
【ストックホルム症候群エンド】




