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座敷牢の花嫁  作者: 豆狸
狐ルート

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22/31

21・思い出はこれから……

「嫌じゃない!」


 反射的に答えて、あなたはわかった。

 好意を持つ、どころではない。

 あなたは一郎に恋をしていたのだ。


 自分でもおかしいと思う。

 相手は記憶喪失のあなたを座敷牢に閉じ込めている男性なのだ。

 きっと理由があるのだと思っていろいろ考えてきたのだが、納得できる理由は思いつかなかった。記憶喪失の人間を座敷牢に閉じ込めることに、納得できる理由なんてあるはずがない。


「あ……」


 頬が熱くなる。

 初めての感覚だ、と思う。

 記憶喪失でもわかる。これがあなたの初めての恋だ。


「……良かった」


 一郎が幸せそうに微笑む。


「あなたは僕の花嫁です」


 真っ直ぐにあなたを見つめて、彼は初めて会ったときの言葉を繰り返す。

 それは真実なのだ、とあなたは感じる。

 座敷牢に閉じ込められていた理由はわからない。記憶を失う前のあなたと彼の間になにがあったのかはわからない。それでも――


「あなたは私の花婿なのですね」

「はい」


 あなたが彼を愛していて、彼があなたを愛していることはわかる。


「きゃふ」


 祝福するように犬が鳴く。

 あなたは一郎の花嫁になる運命を受け入れた。

 思い出はこれから作っていけば良い。


【ストックホルム症候群エンド】

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