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白夜の都 ~処刑の光でも死ななかった怪人は、世界の境界を書き換える~  作者: もろ
第7章【光の逆襲】

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8話【反撃】

――天岩戸周辺――




光統院が、山を攻め上がる。


追い込んだ怪人を仕留めるために。


「日が落ちる前に任務を完了させろ!」


「一匹も逃がすな!」


「周りに潜んでいないか確認して包囲を縮めろ!」


「どこかに隠れ場所があるはずだ!」


怒号が飛び交う。


周囲を探索しながら登る光統院。




姿を現す頼光と綱。


「貞光は……遅れているのか」


登って来ない南の部隊を見る。


「ついて来れない者など、気にかける必要はありません」


頼光の冷たい眼差し。


「今日で終わらせますよ」




「巨大な一枚岩を発見」


「内部に空洞らしき反応があります」


部下から報告が入る。


「行きましょう」


向かう頼光と綱。




――隠れ里――




怪人たちは、完全に追い詰められていた。


最後の砦。


逃げ場は、もうない。


美鬼と華が抱き合う。


負傷者は家に搬送される。


紡は介抱するため雫を支え家に向かった。




剛鬼は片腕を失いながらも天岩戸の前に立っていた。


「美鬼を守ってくれたそうだな……礼を言う」


まだ、わだかまりは溶けない。


それでも、天岩戸を見つめたまま朧に感謝を伝える。


朧は小さく目を伏せた。


何も答えなかった。


それだけで十分だった。




その横で朔夜は血に塗れた木刀を握る。


剛鬼と朧を見て少し顔が綻ぶ。




朧は傷だらけの身体に忍装束を再び羽織る。


『少しでも時間を稼がなければ……』


クナイを握り締める。


「私は……行く」




剛鬼は何も言わない。


ただ、視線を向ける。




「待て! 奴らが近くまで来ているのじゃ!」


「今出れば犬死にじゃぞ!」


朽木が慌てて止める。


「今、天岩戸を動かすのは危険です」


朔夜も一緒に止める。




その時。


ズド――ン!


隠れ里が激しく揺れた。


「きゃっ――!」


華が美鬼の身体を覆う。




「天岩戸が攻撃された――!」


天岩戸を睨む剛鬼。


「くそっ!」


落ちてくる石を払う朔夜。




「見つかったのか……?」


「どうしたら……」


里に不安が広がる。




「他に出口はないのか?」


朧が朽木に尋ねる。


「……天井の吹き抜け穴じゃ」


「だが、あそこは飛べる者しか行けぬぞ」


「ホバーブーツでは……無理か」


悔しそうに見上げる朧。


「……私たちが送るわ」


鳥の怪人姉妹。


「僕も送ってください。お願いします」


朔夜も頼む。


「俺も行く! 天岩戸は壊させねぇ!」


剛鬼も前に出る。




「私たちは非力だから...…」


困惑する姉妹。


互いの顔を見合わせる。


「三人同時には運べないの……」


「一人ずつ行きますね」




籠に入る朧。


籠に結ばれた紐を両手で掴む姉妹。


バサッ!


息を揃え羽ばたく。


吹き抜け穴へ一気に飛び立った。




――頂上口――




順番に送り届ける姉妹。


剛鬼を運ぶ時は、ふらつきながらも懸命に飛んだ。


息の上がった姉妹。


最後に朔夜が運ばれる。




「ありがとうございます」


礼を言う朔夜。


「少しでも、お役に立ちたかったから」


「……頑張ってくださいね」


疲れを隠し、微笑む姉妹。




身を潜め眼下を探る三人。


天岩戸に群がる光統院。


爆薬が次々と岩戸へ固定される。


導火線が一本に束ねられていく。




「破壊する気か」


剛鬼が歯を食いしばる。




「全員退避!」


爆薬を仕掛け終えた隊員が頼光へ敬礼する。


隊員たちが一斉に天岩戸から距離をとる。


頼光が静かに右手を上げた。




――隠れ里――




「華! 家の神棚から木箱を持って来るのじゃ!」


何かを思い出した朽木。


「はい!」


駆け出す華。




その時――


ズドン――!


天岩戸が、大地が激しく揺れた。


「きゃ――!」


混乱と悲鳴。


怪人たちは頭を抱え地面に伏せる。


泣き叫ぶ子供。




――天岩戸周辺――




振り下ろされた頼光の右手。


天岩戸が爆破された。


白煙が天岩戸を覆う。


徐々に晴れる煙。




「なんて頑丈なんだ」


天岩戸はひびが入り、表面が砕けたが耐えた。




「……」


冷たい空気が綱の頬を撫でた。


背筋を這うような視線。


『覗かれている……!?』


綱は、ふと空を見上げた。


頼光も異変に気付き見上げる。




いつの間にか暗雲が広がる空。


霞んだ太陽を隠す。


影が消える。


急に夜のようになる。


「来る」


綱が柄に手を掛けた。




グギギ……


岩影から這い出す魍魎。


影のような塊。


地面と溶け合う黒。


輪郭は定まらない。


だが――確かに、“そこに在る”。




「天候が急変!闇に覆われました!」


「魍魎が発生!」


騒然とする隊員たち。




「対魍魎部隊前に」


頼光が冷静に指示を出す。


ビカッ!


ビカッ!


真っ白い照明が魍魎の足を止める。


ビュンッ!


ライトサーベルを構える対魍魎部隊。




――頂上口――




頼光と綱が顔を上げる瞬間に身を隠した三人。


「感付かれたかと思ったぜ……」


息を殺す剛鬼。


「魍魎……」


朧が呟く。


「光統院や私は魍魎に襲われるが……剛鬼と朔夜は襲われない」


「……今がチャンスだ」


頷く剛鬼。


「どうした?」


空を見上げたままの朔夜に尋ねる朧。


「……なんでもない……です」




一気に滑り降りる三人。




――天岩戸周辺――



突如、魍魎と戦うことになる光統院。


ザジュ!


電子刀で切り捨てる綱。


だが、魍魎は死なない。




「光で消滅させないと駄目か」


電子刀を収めると、ライトサーベルを構え直す。


その背後に襲いかかる影。


一気にライトサーベルを振り抜く。




光が影の首を斬った――


はずだった。


光が影の首を抵抗なく通り抜ける。


影は霧散しなかった。


『魍魎ではない!?』




バゴン!


同時に木刀が綱の脇腹を捉えた。


結月に斬られた傷と同じ場所に、叩き込まれた木刀。


思わず後ずさる。


わずかに歪む綱の顔。




「貴様……!」


綱の鋭い眼差しの先――


木刀を構え指を立てる朔夜がいた。


「光では僕は斬れないぞ」


「未熟者が」


ライトサーベルを消し、電子刀へ持ち替える綱。


ホバーブーツと電子刀が赤く光る。


「今度は……負けない!」


朔夜の青い目が光る。




――もう一方。


「怪人! 怪人だ――!」


怒号。


キュイ――ン。


滑るホバーブーツ。


魍魎と光統院を巧みに掻い潜る朧。


混乱に乗じ、切り落とされた腕が入ったバッグを奪う。




「金剛力」


「決着をつけようか!」


金棒を頼光に向ける剛鬼。


「そんな状態で私に勝てるとでも?」


ライトサーベルで魍魎を斬り伏せながら、頼光が聞く。


失った左腕をわざとらしく見る。




その時。


キュイン!


剛鬼の横に着く朧。


「腕を回収した」


バッグを剛鬼の腰に結んだ。


頼光に向き直る。


「すまねぇ」


短く答える剛鬼。




「貴方は……?」


一瞬眉を潜める頼光。


だが、直ぐに笑う。


「誰か知りませんが……」


「二人がかりで良いですよ」


「魍魎も、貴方たちも、まとめて相手します」


「結果は変わりませんから」


片手で童子切を抜いた。


「二刀流です」


「もっと楽しませてください!」


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