24 決着?
私は勝利を得る為に、いよいよ決着をつける為の攻撃に入ります。
手の腫れ、痛みによる怯みを金浜君が見せたため、一気に勝負を決めにかかります。金浜君も当然それに気づいて、即座に対応。守り、受けの体勢から攻めに転換。搦め手により徐々にダメージを受けていく前に勝負を決するつもりなのでしょう。
地面に刺していた剣を抜き、構えた金浜君が間合いを詰めてきます。当然、光の膜による防御が無くなったのでダークマターフレシェットは金浜君に当たり始めます。が、金浜君自身もまた光のようなものを纏っている為、それに阻害されて針が刺さる様子はありません。
とは言えダメージがあるのか消耗が激しいのか、金浜君は苦々しい表情を一瞬浮かべました。
ここが攻め時だ、と私は考え、さらにスキルを発動します。
それは、今まで幾度となくお世話になってきた『加齢臭』のスキルです。複数のスキルの効果により発展した『瘴気』とは異なり、これは単なる異臭を発するスキル。
しかし、戦闘中に突如異常なレベルの臭気を感じた場合、人はどう反応するのか。
その答えが、現在の金浜君です。違和感の余り、一瞬動きが鈍ります。冴えた剣技も、異臭によって反射的に身体が硬直してしまえば普段どおりとはいきません。
そしてこの『加齢臭』は毒でもなければ呪いでもない。ただびっくりするほど臭いだけのスキルです。
その為、恐らくですが金浜君の未来予知系スキルに把握されることも無かったと考えられます。
予知により感知できない、何らかの攻撃としか思えないほどの異臭。そんな事態に陥った金浜君は、あまりにも大きすぎる隙を晒しました。
当然、それを見逃す私ではありません。
ダークマター製のカランビットナイフに唾を吐き、付着させてから金浜君に攻撃します。当然、反応して金浜君は攻撃を剣で受け止めます。
それと同時に、私は複数のスキルを発動。
最初に発動したスキルは『発光』。眼球から魔力を込めて強い光を放ちます。これもまた攻撃性のあるものでは無いため、金浜君の未来予知系スキルでは反応出来なかったことでしょう。
次に発動したのは『保湿』。私がナイフにつけた唾の周囲の空気を強烈に保湿することで、水分を確保しようとする反応が働き、唾が乾燥します。
そして、この唾が実はそもそも『粘着液』のスキルによって発生させた、乾燥すると強固に固まる唾だったわけです。
特に意識しなければ、せいぜいコンクリ程度の堅さにしかなりませんが、今回は出来る限り頑丈に固まってくれるように意識して吐き出した唾です。
これが固まることによって、完全に金浜君の剣と私のナイフが接着してしまいます。
当然、金浜君は発光により目を潰されているため、また未来予知系スキルによる感知も唾が乾いただけのことなど対象外でしょう。
そんな状態で、私がナイフを力強く引くとどうなるか。
本来、金浜君は私のナイフを受け止める為に剣を構えたわけですから、金浜君の側から私に向かって腕や踏み込みの力が働いています。
そこから虚を突かれる為、一瞬姿勢を崩されます。
当然、反射的に金浜君は体勢が崩れないように踏ん張ろうとするわけですが、ここで剣とナイフが接着されている為に、予想外の方向に力が加わります。
予想外が二重に重なった結果、金浜君は体勢を崩し、私の胸の内に向かって倒れ込んできます。
ここでようやく私は、攻撃に使うためのスキルを発動。当然、金浜君は未来予知スキルで何が起こるか察知した様子ですが、もう手遅れ。既に体勢が崩れきり、距離も詰まっている為、せいぜい防御の為に身体強化系の魔法等を発動するぐらいしか出来ません。
そんな状況下で、私が発動したスキル。
その名前は『自爆』です。
ここが正念場であると考えた私は、私に耐えられる限りの最大限の威力で『自爆』スキルを発動します。
それこそ、この自傷ダメージによりこれ以上の戦闘など不可能なぐらいの威力です。
私のステータスが高いからこそ、その威力は必然的に高まり、強烈な爆破の衝撃が私と、金浜君を同時に襲います。
また、爆発により地面の砂が巻き上がり、煙が立ち込め、三森さんが張ってくれている結界内部は完全に視界が通らない状態へと陥ってしまいました。
そんな中、既に自爆による自傷ダメージであちこち傷だらけ、血を流している状態の私の首に。
ぴとり。鋭い刃物が触れる感覚がありました。
「これで俺の勝ちです」
そう呟いたのは、金浜君です。





