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24 災禍の化身




 私は崩れ落ちたままのアレスヴェルグに近寄りながら、どのスキルから試していくか考えます。

 そうですね、まずは即死する可能性の低いものから試していきましょう。


「ではアレスヴェルグさん。まずは『災禍』と『加齢臭』のコンボから試させていただきますね」


 私は言って、二つのスキルを同時に、全力で発動します。

 まずは『災禍』にて自分を呪います。呪詛と疫病の二重苦で自らを苦しめます。当然、肉体は負担から脂汗を流しますし、何より疫病を患った皮膚からは異臭が漂い始めます。

 そうした臭いの微粒子を『加齢臭』のスキルで増幅します。


 私の身体から漏れ出した呪詛と疫病の微粒子は、途端に黒い煙のようなものになって周囲に漂い始めます。

 それと同時に、私は自分のスキルが確かにこの瞬間、次の段階を迎えたことを感じました。


「ふむふむ。なるほど、これがカルキュレイターの予想した、加齢臭の可能性ですか」


 私が単なる体臭による魔物撃退手段として使っていたスキル。ですが、カルキュレイターはこのスキルの先を見通していました。

 こうして『災禍』により生まれた微粒子を増幅することで、加齢臭は単なる臭いから実際に他人を呪い病に侵すスキルへと変貌しました。

 そのスキル名は『瘴気』。肉体から呪詛と疫病に満ちた煙を自在に発生させる力を持ったスキルです。


 さっそく、私はこの『瘴気』を発動。『災禍』と『加齢臭』で生み出していたときよりもスムーズに、大量に黒い煙が発生します。

 そして煙は私の意思である程度操作出来るようです。アレスヴェルグの右腕に集まるよう念じた所、ある程度の煙が実際に集まり、包み込みます。


『グアアアアッ!』


 痛みからか、アレスヴェルグが叫び声を上げます。

 咄嗟に『瘴気』を解除してみると、一瞬で黒い煙は消え去ります。そこには、まるで酸か何かでも掛けたかのようにドロドロに崩れ落ちたアレスヴェルグの右腕がありました。


「スキル『瘴気』の威力がここまでとは。加齢臭もバカに出来ませんね」


 想像以上の威力に満足しつつ、そんなことを呟いてから次のスキルのテストに入ります。


 続いて試すのは『鉄血』のスキルです。

 まずは腕から流れ出る血液を『災禍』で呪い、大量の『瘴気』を集めて濃縮。生み出されたのは、極めて濃い呪いと病魔が圧縮された赤黒い血液。

 これが、私が求めていたさらなるスキル。習得したスキルの名前は『詛泥』。私自身の血液から、濃厚な呪いと病魔が宿る液体を生成するスキルです。


 そしてこの『詛泥』ですが、呪いを凝縮した物体であるため『瘴気』と共に霧状に散布することも可能。また、素材が私の血液なのですから当然『鉄血』スキルの対象にもなるわけです。


「この『詛泥』を『瘴気』と共に拡散、漂う霧となり空間のあちこちに存在することが可能になった私の血液は、それでもまだ私の『鉄血』スキルの対象内です。ですので、こういうことが出来ます」


 私は『詛泥』をアレスヴェルグの周囲に展開させます。彼自身を包み込んでしまうと、瘴気以上の呪いを持つ『詛泥』により即死してしまう可能性がありますので、注意が必要です。

 そうして展開した『詛泥』から、瞬時に無数のオリハルコンの刃を生成します。

 腕を振って鞭打を行った時よりも、さらに効率的に。無数のオリハルコンを糸状に生成し、これを『貧乏ゆすり』で振動させて切断力を高めます。


 さらには『詛泥』を経由することでオリハルコンは変質し、呪われた金属へと変貌しています。触れるだけで人の皮膚を爛れさせるような力を発揮するようになった、無数のオリハルコンの糸。これがアレスヴェルグの鱗を上から斬りつけます。

 結果として、最初にオリハルコンの一撃を防いだはずの鱗はいとも容易く切断され、アレスヴェルグの巨体のあちらこちらに切創を刻みます。


『ゴハッ! な、なにが起こっているのだ?』


 アレスヴェルグは血を吐きました。恐らくは切断されたことによるダメージに加え、オリハルコンの刃を介して『詛泥』の呪いを受けた為でしょう。


「そろそろお疲れでしょうから、楽にしてあげましょうか」


 私は求めていた二つのスキルを習得し、その使用感のテストも済ませたため、決着を付けることにしました。

 すでに身動きの取れていないアレスヴェルグです。このまま放置して詛泥と瘴気による呪いでゆっくり死んでいくのを待つことも可能ですが、念の為にいちおう手早く始末してしまうのが良いでしょう。


「では、お疲れさまでした、アレスヴェルグさん。お陰で私も、予定通りの力を得られていると確認することが出来ました。ありがとうございます」


 そう告げて、次の瞬間には『詛泥』からオリハルコンの刃を生み出し、アレスヴェルグの首を切り落とします。

 当然、これで死んだはずですが、油断はしません。死体はそのまま大量の汚泥で包み込み、腐らせ、溶かし、完全に消滅させます。


 すると、幸いなことにアレスヴェルグの鱗は希少な金属を含む結晶構造をしていたようで、一部が『鉄血』スキルで収納可能でした。

 このまま溶かしてしまうのももったいないので、回収してしまいましょう。


 そうして十数秒ほどの時間をかけて、アレスヴェルグの死体は溶けてなくなりました。


 驚くべきことに、アレスヴェルグは首を切り落としてもまだ意識があったのか、泥の中で何やらもごもごと喚いていました。


『恐るべき、忌まわしき力。災禍の化身め』


 と、言われていたように聞こえました。


 ともかく、これでアレスヴェルグとの戦いは終わりです。

 無事、基地を守りきることは出来ました。

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[良い点] もう主人公が魔王よりも厄介な存在になっちまったな… 勝ったとは言え、味方兵士達にはトラウマもんだろな 少なくとも現場を目撃した兵士はオトギンが四天王より怖い存在に見えてると思う。 イザ王…
[良い点] しょうき [一言] わろたw YABEEEEEEEw
[良い点] なんて忌まわしい主人公なんだろう
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