12「英雄の初スタート」
英雄都市ヴィクトリアマジェスティの青空の下をご機嫌に歩く、一人の少年、勇樹。
英雄アカデミーでの説明会に向かっていた。
すると、
「勝負だ!――ッ!?…あう!」
少年、勇樹の目の前に、木登りをして、隠れていた、ヘンリー国王陛下の孫のアーサーが、飛び降りて来て「勝負だ!」と、着地しようとして派手に転けた。
「なにやってんだ?アーサー?」
「さすが勇樹の兄貴!――俺が見込んだ男だな!」
「俺は何もして無いぞ?」
痛がりながらも立ち上がり、アーサーは、勇樹に尊敬の眼差しを送っていた。
勇樹は、困惑気味に、冷静に突っ込みを入れた。
「尋常に勝負だ!」
アーサーが、勝負と称して杖を構えて、勇樹に魔法を発動させようとしている。
「あ、わりぃ…、これから説明会なんだ…」
「説明会?」
勝負を挑まれた勇樹は、謝りながら後ろ頭をかいている。
ポカンとした表情で、構えた杖を下ろして何それ?という顔をするアーサー。
「俺、今日から【英雄】だからさ?」
少年、勇樹が【英雄】という言葉を口にしながら、自身の上着の胸に光る、英雄の紋章付きのバッチを指差しながら、自慢気に言う。
「はぁぁ…」
「へへへ…」
アーサーは、いいなぁと、羨ましそうに勇樹の胸に光るバッチを見ている。
その反応を見ながら、勇樹は嬉しそうにニヒヒという顔を見せる。
~エリザベス・レイアの自宅の部屋~
部屋は綺麗に片付けられており、女の子の部屋に似合うピンク色の壁紙と、タンス、化粧台、化粧箱、勉強用の机、ふかふかのベッドがある。
壁にかけてある上着には【闘魂!!】と書かれた文字が刻まれていた。
「フフン!」
楽しそうに鼻歌を歌いながら、大きな鏡の前で、自身のピンク色の艶やかな髪をセットする。
「よし!」
「お嬢様、そろそろお時間です」
メイドのリリィが、髪をセットし終えたタイミングで、エリザベスの背後から優しく伝える。
「わかったわ、リリィ!」
(よっしゃー!行くわよ私?気合いよ?気合い!!)
エリザベスの内心と頭の中で、メラメラと両目が炎に燃えるながら叫び声を上げている。
内心と頭の中のエリザベスが、シュッシュッとシャドーボクシングをしている。
「(今日から私は、英雄アカデミーの生徒じゃなくて、この都市の英雄のエリザベス・レイアよ!)」
そう心の中で決意し、やる気満々の表情で上を見上げている。
馬車に乗って、説明会へと向かう。
しかし、その途中、
見知った相手の馬車と並び立つ。
馬車の窓が開いて、エリザベス・レイアの馬車へと話し掛けて来た。
「あら?おはようございます、エリザベス・レイア!」
「おはよう、アネモネ・イーリス!」
アネモネ・イーリスは、エリザベス・レイアと、友人であり、幼なじみであり、ライバルでもある。
普段は、仲が良いし、話も合う間柄だが一度、喧嘩に火が付くと、口喧嘩が始まってしまう。
お隣さん同士で、昔は仲が良かったが、ある日を境に、喧嘩や口論が始まってしまった。
それは、色恋沙汰である。アネモネ・イーリスとエリザベス・レイアは、一人の男の子を巡っての恋の火花を上げている、恋のライバルなのだ。
その男の子とは、ロイド、ロイド・ペンドラゴンという、英雄アカデミーの中でもトップクラスの実力者である。
戦闘、魔法、体術、武術、剣術、学力、全てに置いて、優秀な男である。
「私、昨日、ロイド君とお話したのよ?」
「それなら私もよ?」
「なによ?」
「そっちこそ!むー!」
アネモネ・イーリスとエリザベス・レイアの喧嘩と口論と馬車による競走が勃発。
「アネモネの馬車より速く説明会に行くのよ?」
「ちょっと聞き捨てならないわね?」
凄まじい速さで、道を走る、アネモネ・イーリスの馬車とエリザベス・レイアの馬車。
お付きの使用人とメイド達が「はぁ…またかよ?」と、呆れている。
「わわぁ!?――な、なんだ?」
少年、勇樹の前を、凄まじい速さの馬車が横切った。
勇樹は、寸前で止まり、難を逃れた。
~英雄アカデミー校門前~
凄まじい速さの馬車が同着する。
「私の方が速く着いたわよね?」
「さあ、私は見ていませんでしたので」
エリザベス・レイアと、アネモネ・イーリスが、同着した事に納得していなくて、お付きの使用人の人たちに、質問をしている。
冷静に返す、メイドのリリィ。
「ふん!今回は引き分けのようね?」
「あら?負け惜しみかしら?」
その後もしばらく、エリザベス・レイアと、アネモネ・イーリスの喧嘩と口論は続いた。




