法と静寂
第43話 法と静寂
前章 混沌と黒龍
アラゴーは、汗びっしょりになってベッドから跳ね起きた。
「……またか」
寝汗を拭いながら、重く深いため息をつく。夢に出てきたのは、あの時代――戦前。彼は数千の兵士を訓練し、雷鉾を掲げて前線を駆けていた。
かつての名は、雷鉾万人隊長ジェネラル・アラゴー=ルイス
部下は彼を「万人隊長」と呼び、敵は「戦術の鬼神」と恐れた。
そんなとき、夢の闇の中から、声が響く。
「アラゴー=ルイス、人呼んで、雷鉾万人隊長――ジェネラル・アラゴー」
その声は低く、地の底から響いてくるようだった。立ち上る黒煙、ざわめく炎。姿を現したのは――黒龍。
アラゴーは目を細めた。
「……ほう。ワシの古い名を呼ぶとはな」
「まだ、自分の居場所に戻らないのか?」
アラゴーは答えず、ただ夜の風に目を向けた。
「……考えておるところじゃ」
「カールは返してもらう!!」
二章 法と静寂
エスオゴの
一軒家に戻ってきていたカール。
若かったカールの髪には、
白髪が混じって見える。
時の交差。
白い部屋。
音がない。
カールは、座っている。
筆を持っている。
ただ、描く。
何を描いているのかも、分からない。
紙。
線。
円。
歪んだ形。
「……」
言葉が、ない。
思考も、ない。
ただ、動く。
再び、出会う、アラゴーとの再会。
口ごもるカール。
カールの肩に手をやるアラゴー。
アラゴー「カール、ソフィアを描けるか?」
「ソフィア? 」
「思い出せないが、聞いたことがある名前だ‥」
頷く、カール。
一心不乱に、チョークを走らせるカール。
何枚も何枚も、破っては、描き続ける。
日は登り、沈み、繰り返す。
目にくまが走り、ヒゲは、放射状に、伸び逃げる。
キャンバスと戦う、カール。
息は荒い。
窓から、日が差してくる。
紙を破くカール。
カール「思い出せない」
アラゴー「カール‥」
「思うだけ、描け」
ソフィア「アラゴー‥」
アラゴー「今会ってはダメだ」
ソフィア「何が、彼をこんな?」
アラゴー「ノエールの、記憶の塔じゃ」
「過去の記憶の、全てが、セーブされている」
ソフィア「私、いくわ」
「もう一度」
「カールが見たものを見てやるわ!」
「アラゴー、カールが落ち着いたら、
母国、ソホンの、ユグドラシルゴディーブルの、光の大神殿に
連れて行って欲しいの」
アラゴー「ああ、わかった」
「?」
「風が?」
ソフィア「すきま風?」
アラゴー「いかん!!」
カールの部屋に飛んでいく、アラゴーとソフィア。
そこには、もぬけの殻になった、部屋と、キャンバスが。
アラゴー「ワシは、カールを探しにいく!!」
「ソフィア、ノエールの、記憶の塔は、危険な賭けだが、
行って来い!!」
「何を見たか、わしにも、聞かせてくれ!!」
ソフィア「私も探しに行かないと!」
アラゴー「今は会わせるわけにはいかん!!」
ソフィア「!!」
To be continued




