知らない内に人間を辞めていたらしい
「しかし、マオさんを疑っている訳では無いのだが、本当に我が娘は大丈夫なのです?相手側も聖女に魔王と言うではありませんか。大切な娘には変わり無いのでそれだけが心配で心配で」
そして家族団らんな雰囲気から一転、お父様の質問で楽しそうな雰囲気がガラリと変わり、家族や使用人達の視線がマオへと向けられる。
その目は皆真剣そのもので、コレから話すであろうマオの言葉一語一句聞き逃すまいという気持ちが伝わって来る。
そんな皆と共にわたくしも実は不安だったりするので心臓は緊張により大きく脈打ち始める。
「それならば問題ない。何せご主人様には今現在も死ぬ事を無かった事にする魔術を付与しているので、その他にも一度死んだら瀕死状態に戻るという似た様な効果をもつアイテム等も装備させており常に身に付けておくように毎日言っているし毎朝確認もしている。そして常にリジェネ、この場合はそうだな、一定のタイミングで持続的に少量回復するバフ効果をもつ魔術も付与している為瀕死まで生き返れば後は勝手に回復して行く上にそもそもダメージを食らっても次の瞬間には回復するというまるでゾンビの様な存在で御座います。それこそ殺せる物なら殺してみなさいと言えるくらいには安全ですね。それこそバラバラにした上で燃やし尽くしても次の瞬間には見事蘇生してしまうくらいには今のご主人様は気持ち悪い程に不死身ですね。因みにこの効果は時間が来たら効果が消える様な中途半端なものではなく、付与したもの全て一度死なないと効果は切れません」
「は?」
「へ?」
「まさか」
「えーーーー…………」
全く持って全然実感が沸かないのだが、どうやらわたくしは知らない内に人間を辞めていたらしい。
◆
「良い天気だな」
あれから三日が経ち、魔王討伐の為に出発する為に前回準備をした場所へと向かう。
その場所には既に私達以外のメンバーが揃っており、少しだけ待たせてしまった事に罪悪感を感じてしまう。
「絶好のピクニック日和じゃないの折角だしピクニックを楽しみましょうよ」
「しかし、馬車はいつく来るんだ?そろそろ出発の時間だと言うのにまだ馬車は来ていないみたいなのだが、時間通りに向かえるのか?」
「あら、カリカリしてては頭がハゲますわよ?ゆっくりと待ちましょう。ま、貴方の髪の毛が今更少しだけ生えて来た所でハゲはハゲなのですけれども、気休め程度にはなる事でしょう」
「あ、あれか?ストレスは肌に良くないとか言うあれか?少しは自分の年齢を考えて欲しいものだな。世の中には無駄な努力というものもある」




