命令されたら殺しに行くのか?
「ふむ、大変な事になったの」
トリステン皇帝陛下はそう唸る様に呟く。
その声に集まっていた上位貴族達もまた皇帝陛下と同じく重苦しい表情をしており部屋の空気は最悪である。
「まさか数百年ぶりに光魔術使いが現れて、その者が我が帝国に魔王と共に手を組んでやって来た時も驚きはしたのだがその魔王は話せるものであり平和的な未来がもう数十年、下手をすればもう数百年もの間続くと思っていたのだが………」
「光が産まれれば同時に闇もまた産まれる、という事ですな」
そして皇帝陛下は現状を簡潔に話すと、それに宮廷魔術師であり齢八十七歳と最早生き字引でもあるローレン・ハイツが表現を変えて肯定する。
しかし、だからと言って事態が良くなる訳もなく、寧ろ時間が過ぎれば過ぎるほど悪くなっているであろう事は火を見るよりも明らかである。
「あのー、魔王に魔王をぶつければ良いのでは?もしかすれば魔王同士で共倒れしてくれる可能性も………っ!」
そんな中、この中では比較的若者の部類である三十路半ばで公爵家当主を継いだばかりの男性、ルージ・ペインが手を上げてメンバーがメンバーである為に遠慮がちに、しかしながら『良い案考えました』という期待を目に宿しながら提案するものの他のメンバーは誰一人として良い顔はしなかった。
それどころかため息まで吐く者が現れる始末である。
その光景に納得が行くはずもなく、食い下がる。
「何ででしょう?上手くいけばこの世から魔王が二人も消す事ができるのですよっ!?魔族国家がどれ程の数存在するのかは分からないものの決して少なくない数だと思われるのですが?」
「ではお主、今から隣国のエルフの国であるグリーン・ウッド王国国王を殺して来い」
「何で今そんな意味の無い事を言うのですかっ!?それに例え命令されたとしても私には友好国であるグリーン・ウッドの国王を殺すなど大義名分が無ければ出来よう筈がありませんっ!!」
そう言うも周りの目線は更に冷たい目でルージを見つめ始め、ローレンがため息を吐きながら答える。
「エルフと人間ですらその国の王を殺すのを躊躇っている、それが答えだよ青二才。今この国で今のところは皇帝陛下との謁見の件以外は比較的大人しくしている魔王に人間である我々の為に同族の王殺しを依頼してどうする。最悪帝国は魔王二人を相手にしなければならなくなる事態も考えられるな。お主は高位貴族レベルの魔族達に人間側の王を殺せと命令されたら殺しに行くのか?」




