恐怖でおかしくなりそうだ
「今の課金育成アイテムのみで上げれる限界値までレベルと能力その他もろもろを上げ、魔術も全て覚えて貰った上に課金装備を今身につけているご主人様ならばあの蛇擬きなど簡単に倒せますよっ!はい、行ってらっしゃいっ!」
「ひぃいいいいいいっ!?」
しかしわたくしの抗議も虚しく、わたくしはこの蛇と言うよりかはむしろドラゴンと言われた方がしっくりくるであろうダンジョンボスの元へとマオにより文字通り放り投げられてしまう。
「お、覚えておきなさいよ………」
そして何とか空中でバランスをとり着地に成功する。
この人間離れした動きもマオがわたくしに装備して下さった装備品の一つのお陰であろう。
もうどの装備も凄すぎてどれがどの能力を付与してくれるのかごちゃごちゃになって全く把握しきれていない。
そもそも単体でも付与されていればとんでもない価値の能力であるのだが、その様な能力が何個もついているのだから手に負えない。
そしてそのふざけた能力の数々が無かったとしても装備品の能力上昇値は桁外れでありそれだけでとんでもない代物であるのは間違いがない。
そして、そんなぶっ壊れた装備品の数々を身に付け、同じくぶっ壊れた効果をもたらしてくれたアイテムの数々によりこれから国を何国か一人で侵略しにいくのかと言われてもおかしくない程の能力を誇っているであろうわたくしの目の前には蛇の様な巨躯を持つ真っ赤なドラゴン擬きがその大きな顎門を開けてわたくしを見下ろしていた。
勿論、開いている顎門は即座にわたくしを食そうとダイブして来る。
「ひぃいっ!?わ、わたくしを食べても美味しくはないですわよっ!!」
唯一の救いなのは双頭に別れている箇所が首元付近であるために双頭の良さを十二分に発揮出来ていない事であろうか。
これが身体の真ん中付近で別れていたりするのであれば違う動きをする二つの頭と360度見渡せると言っても過言ではない広い視野を意識して戦わなければいけなかっただろう。
それでも頭が二つある事や、頭が一つに比べて視野が広い事には変わりないのだが。
勿論頭が二つあるという事は炎を吐き出して来る口も二つあるという事でもある。
しかしこの魔物、蛇だ蛇だと思っていたのだけれども手足が無いだけでもしかしてもしかしなくてもサラマンダーではないのだろうか?
いや、考えるのはやめよう。
恐怖でおかしくなりそうだ。
そんなこんなでわたくしは双頭の強大蛇の攻撃を何とか逃げ回るのだが、流石に集中力が切れ始め石に足を引っ掛けてしい、頭から見事にズッコケてしまう。




