マジもマジですわっ!
しかし、マオの口から出た言葉はわたくしの想像以上に頭がおかしい内容であった。
「わ、わたくしまだ死にたくないのですけれども……」
「いや、流石にダンジョン【双頭の蛇】で死ぬとかは大袈裟過ぎやしないか?ご主人様」
「そ、それはマオが強過ぎるからそう思うのですわっ!ダンジョン【双頭の蛇】と言えば推定冒険者ランクA以上の上級者向け、それも六人以上のパーティーを組んで挑む様なダンジョンですわっ!」
「………マジ?」
「マジもマジですわっ!」
そしてこの桁外れな力を持つが故に感覚が常識から大幅にズレてしまっているマオへ世間の常識を叩き込む。
するとマオは「この程度のダンジョンで上級者向けのダンジョンだと………もしかしたらゲームとは難易度が異なるとでも言うのか………いや、コレは恐らくゲームと現実との差異であるな。ゲームなら簡単に蘇る事が出来るが現実であれば死ねば終わりである事から来る差異であろう」などとぶつくさと呟いた後謎が解けてスッキリした表情をしていた。
その表情を見てわたくしは安堵のため息を吐く。
一般人であるわたくしでは死にに行く様なもにであるという事を理解してくれた様で何よりである。
マオと二人っきりでダンジョン攻略というのに惹かれない訳では無いのだが、流石にわたくしも死にたくはない。
「なら大丈夫だな。さぁ行くぞっ!ご主人様っ!」
「………へ?」
「なにボケっとしている?時間は有限だぞ?」
そう思っていたわたくしがバカで御座いました。
どうやらマオには常識というものが通用しない生き物であるという分かりたくなかった事が分かった。
そして、今サラッと頭のおかしな事を言っているマオなのだが、こてんと首を傾げてわたくしを見つめてくるその表情が普段から魔王っぽい立ち振る舞いをしているマオとのギャップから思わず『可愛い』などと思ってしまう愚かな自分自身がいる事も分かってしまう。
「さ、先程のわたくしの話を聞いていたのですかっ!?冒険者ランクA以上の者で六名以上のパーティーを組んで挑む様なダンジョンなのですわよっ!?そもそもマオは人間国のダンジョンなど来たこと無いですわよねっ!?」
「大丈夫だ任せろ。万が一ご主人様に危険が迫る様な場合は全て俺が払い除けてやるよ」
あぁ、そんな事を自信満々に告げてくれるマオが頼もしく、そしてカッコよく見えて思わずときめいてしまいそうですわっ!
ですがわたくしも自分の命がかかっているのでときめきそうになるのをグッと堪える。




