貴族の淑女としてどうなのかと思う
「ええ、そうよ。私があなたを召喚したの。だからつべこべ言わずに私と契約しなさい」
普通であれば目の前の化け物を見れば悲鳴を上げて一目散に逃げていたことであろう。
だが今の私は目の前の化け物が異形であれば異形であるほど恐怖心よりも嬉しさの方が圧倒的に勝る。
この化け物さえ私の物にすればあのシャルロットの伸びきった鼻をへし折る事ができるかもしれない。
そう思うだけで血肉が躍る。
「良かろう。俺を三百年ぶりにこの忌々しい封印を解いてくれた功績に免じて貴様と契約を使用ではないか」
「ではさっそく────」
「だがらと言って人間の小娘如き者の下につく気など毛頭ない。貴様が今行おうとしている契約はお主が上なのだが、どうして羽虫如きの人間の様なゴミがこの我よりも上なのか。本来主従関係は強いものが弱いものを従える物であろう?貴様は我より強いと、そう言いたいのか?」
「────………い、いえ」
「では我を主として契約を致そうか」
その時初めて私はとんでもない者を召喚してしまったのだという事に気付くのであった。
◆
マオと夢の様な時間を過ごしたあの日から三日近くが過ぎた。
この三日間はマオの『なんだか嫌な予感がするから』という理由により私は帝国にあるダンジョンをひたすら潜るはめになった。
ダンジョンを潜るなど貴族の淑女としてどうなのかと思うのだが、マオが冗談でではなく真剣に言ってくるためこの三日間で私も不安が大きくなり本日ついにダンジョンへと潜る運びとなったのである。
マオの話はよく分からないのだが要約すると『ご主人様が本来召喚すべき魔王ではなくてこの俺を召喚したツケは、必ずやってくる気がする』というものであり、わたくしではない誰かが本来わたくしが召喚するであろう魔王を召喚するのではないかという事らしい。
そして魔王なのだが人間界にも国の数だけ収める王無いし皇帝がいる訳で魔王も同様に複数人居ても何らおかしくはないという事実に気付かされた。
「にしても、いきなりこの【双頭の蛇】を挑むとは言いませんわよね………?」
それによりわたくしは危機感を覚え、わたくしの能力値を飛躍的に上げる方法があると言うマオの言葉を信じてその方法を行うと言った事は認めよう。
しかしながら目の前にあるダンジョンの入り口、その入り口に【双頭の蛇】と書かれているのは気のせいだろうか。
願わくばわたくしの勘が外れてほしいとこれ程強く思った事は無い。
「何を言っているんだ?【双頭の蛇】はレベル上げに最適なダンジョンだろ」




