だから私は奪ってやった
だから私は奪ってやった。
彼女の目の前で婚約者であるカイザル殿下を奪ってやった時は味わった事もない程の快感が私の身体を駆け巡った。
それと同時に次期王妃の座も奪った。
人生の絶頂だった。
この幸せがずっと続くと思っていた。
対照的に目で見ても分かるほどシャルロットは落ちていった。
シャルロットの周りに常にいた令嬢達はクモの子を散らす様に居なくなった。
今彼女に残っているのは公爵家の娘という肩書とカイザル殿下から婚約破棄をされた不良物件という評判しかない。
この『カイザル殿下から婚約破棄された』という外聞の悪さは凄まじく、公爵家の娘などという肩書など無いに等しい程であった。
むしろ公爵家の娘という肩書ですら庇い切れない程の毒女として瞬く間に広まって行った。
そして私はそれを利用した。
毒女にすら救いの手を差し伸べる、正に慈愛に満ちた聖女という名を恣に手に入れた。
順風満帆であった。
輝かしい未来が約束されている筈であった。
しかしその輝かしい未来はたった一日で崩れ去った。
シャルロットが本物のドラゴンを、それも白銀に輝く竜を召喚したのである。
いくら私の契約しているワイバーンが純白で珍しい色をしているのだとしても、格が違う事など見ただけで分かる。
しかもそれだけでは無い。
そのドラゴンは私の事を聖女じゃ無いと鼻で笑い一蹴した。
今この世で唯一光魔術を使える私に向かってである。
そう抗議したらそのドラゴンは何とシャルロットへ光魔術を伝授したと言うでは無いか。
私がどれ程の努力を重ねて習得したのか、これではまるで私が馬鹿みたいでは無いか。
そしてシャルロットはたったの数秒で光魔術、それも光の攻撃魔術までも習得していた。
更に止めとばかりにシャルロットはスキル『聖女降臨』というスキルも件のドラゴンから伝授されており、私の目の前でそのスキルを行使する。
眩い光に包まれた後、そこに居たのは神々しいと言わざるを得ないシャルロットの姿だった。
コレが聖女なのだと、分からされた。
光魔術はただの魔術の一色でしかないと証明された瞬間でもあった。
気が付けば私の持っていた物は全てシャルロットに奪われた。
次の日から私とカイザル殿下には『聖女シャルロットに対して無礼な行いをした者達』というレッテルが貼られていた。
腐っても王位継承権第一位のカイザル殿下とワイバーンの使い手である私に面と向かって言ってくる者は流石にいないのだが、そういう空気は痛い程伝わって来る。
この世界に神がいるというのなら、こんな不公平な世界を何故作ったのかと問い詰めたくなった。
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