金貨三百枚で手打ちと致しましょう
「………許す訳ないでしょう?寝言は寝てから言って下さいな。あの婚約破棄がカイザル殿下の本心からのものであり、お父様がヘルカイト国王陛下へ抗議しに行っても婚約破棄を無かった事にしなかったのはわたくしよりも聖女メアリーの方が欲しかったから。そして今、わたくしが本物のドラゴンを召喚し、聖女メアリーが実は聖女では無いと分かり、わたくしも光魔術を扱える様になって、そしてこの格好と『聖女降臨』というスキル名からわたくしこそが本物の聖女であると分かったからこそ掌をひっくり返しただけではなくて?今度は聖女メアリーを捨てるのですか?控えめに言ってカイザル殿下と今一度婚姻を結ぶ等、絶対に嫌です。こんなクズみたいな男性とその親、わたくしの方からお断りですわっ!」
言ってやった。
言ってやりたかった。
逃した魚はこんなにも大きいんだぞと。
でもわたくしはつい最近までは小さな魚でしかなくて、我慢して口を紡ぎ日々耐える事しか出来なかった。
ざまーみろっ!でございますわっ!
「き、貴様ぁあっ!!この我に向かって何という無礼な物言いっ!誰か不敬罪で引っ捕らえ───」
「黙って聞いておれば、我がご主人様に向かって何という無礼な物言いと態度の数々。貴様等王族を殺して王政から民主政に変えてやろうか?当然我がご主人様に噛み付くのだ。その位の覚悟はあると見て良いのだろう?」
「───てこ……い………ひぃぃぃいいいいっ!!?ち、近寄るでないっ!我を食べても美味しくないぞっ!おいそこの娘っ!貴様が契約しているドラゴンであろうっ!早うどうにか───」
「あ?貴様は我がご主人様に向かって命令出来るとでも思っているのか?矮小な人間如きが」
「───ぐぬぅぅっ………早う、早うこのドラゴン様を止めて下されっ!お願いじゃっ!国王陛下である我からのお願いじゃぞっ!そ、そうだっ!!我の願いを聞いてくれたのならば金貨三百枚はやろうっ!!」
あぁ、マオの驚かされてヘルカイト国王陛下が腰砕けに地面へと倒れ黄金水を垂れ流しておりますわ。
そしてマオが口を開きヘルカイト国王陛下を食べるようなモーションに入った所で、国王陛下は金貨三百枚を上げると言うではないか。
仕方ありませんわね。
わたくしがカイザル殿下から婚約破棄されて受けた心の傷は金貨三百枚で手打ちと致しましょう。
もう貴族としてこの国への忠誠心もございませんし家族と使用人達と一緒に隣国である帝国へと鞍替えするのも良いかもしれませんわね。




