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28話  俺が看病をしに行くわけ......ない!?

28話  俺が看病をしに行くわけ......ない!?


夏美「............それで、初音はどう思う?」

初音「え~それはないと思う......だけど、ボクはやっぱり猫派かな?」

美雪「私は断然犬派です! 犬は従順ですし!」

ベル「わたくしも犬派ですわ、子猫さんは色々と世話するのが大変ですし......」

夏美「う~ん、私は猫派かな~......」


今、拓人の机の前で”犬派”と猫派”でかれこれ20分は話している

この美少女たちは、言うまでもなく夏美たちだ。

拓人は序盤からはちゃんと話についていっていたが、中盤からは夏美たちの熱すぎるそれぞれの思い

に話がついていけなくなり、今に至っては窓の景色を悠長に眺めている始末だ。

そんな拓人に、夏美が気が付くと、すごい形相をして拓人に尋ねた。

夏美「ねー拓人!」

拓人「は、はい!?」

夏美「拓人は猫派なの? それとも犬派なの? どっち!?」

その夏美の問いに、ベルたちも机に身を乗り出して拓人の返事を待つ。

拓人「ま、待てよ! この場合どっちか答えたらどっちかじゃない方の奴が俺に文句つけるだろ!」

夏美「つけないわよ、ただ、拓人が犬派って言ったら......ね?」

拓人「いや怖えーよ!」

美雪「それで、ご主人様はどっちなのですか?」

拓人「うぅ......猫派......」

ポツリと呟いた拓人の発言に、半分は喜びの声を上げ、もう半分は抗議の声を上げた。

その反応になることが分かっていた拓人は、ぐったりと机に突っ伏し「はぁ」と呆れながら息を吐いた。

しかしその数分後、抗議の声も収まったところで拓人は「あ」と何かを思い出したように顔を上げた。

ベル「どうしたんですの?」

拓人「いや、今日は茜来ないなって思ってさ......」

初音「あ~確かに......」

拓人は今日明らかにもう一人メンバー的に足りないと思っていたが、それは茜だったようだ。

茜は普段こっちの教室に来てくれているので、居て当然の人物になっていたが、

今日は茜がいなかったので話し合いにまとまりがないように見えた。

拓人「なぁ、普段茜からこっちに来てたから、今日は俺らからあっちの教室に行こうぜ」

夏美「そうね、それで茜を驚かせましょ!」

拓人の提案に反対の手を上げる者は誰もいなかった。

そして拓人たちは、拓人を筆頭に1-3に乗り込むのであった。



拓人「失礼しま~す......」

拓人が恐る恐る3組の扉を開くと、ゆっくりと教室をぐるっと見回した。

ベル「茜さん、居ませんわね......」

ぐるっと教室を見回してから、ベルが拓人にそう囁く。

拓人「あぁ、そうだな......」

もう間もなく1時間目の始まりのチャイムがなる時間なので、大体の生徒は教室にいるのだが、

窓際の席で一つ、ぽつんとカバンも何もたてかけられていない机があった。

その机に拓人が気づくや否や、スタスタとある女子が拓人の前に歩いてきた。

??「......アナタ、朝峰拓人くんでしょ?」

拓人「え、えっ!?」

突然知りもしない女子から自分の名前を言われて、大きく動揺する拓人。

これが男子だったら対して動揺もしなかったのだろうが、あいにく女子だったので

拓人にとっては仕方ないことなのだろう。


??「それで、どう? あたり?」

拓人「あ、あっと、えっと......うん、あたり......かな?」

明らかに動揺している拓人を横目に、夏美は拓人の代わりと言わんばかりにその女子に質問した。

夏美「それで、そういうアナタは誰?」

至って穏やかに聞いた夏美に、その女子は「おっと失礼失礼」と小声で呟いてからこう名乗った。


紀子「私は五十嵐紀子いがらしのりこ。一応茜の親友やってる」

そう紀子が言うと、拓人はそういうことかと、自分の名前が知られていることに納得した。

拓人「それで、その......五十嵐さんに聞きたいことがあるんだけど」

紀子「紀子でいいよ、それで、何?」

拓人「あ、じゃあ失礼しまして......紀子は今日、茜が学校に来ているかどうかわかる?」

紀子「あ~茜は今日熱を出して休みよ」

拓人「そうなんだ......わかった。ありがと、助かったよ」

拓人は紀子に軽く一礼すると、紀子はクスっと笑い声を漏らした。

拓人「な、何か俺おかしなことした?」

紀子「い、いや......茜が言った通りの人だなって思って......ぷぷ」

紀子は笑い声を必死にこらえながらそう拓人に言った。

その拓人は首を傾げて、「どういうことだ~?」と一人唸っていた。

紀子「......でも、会えてよかったわ、拓人くん」

笑いもだいぶ収まってきたのか、紀子は一度深呼吸した後にそう告げた。

紀子「茜が気になってるやつってどんな奴かって、一度確認したかったのよね」

拓人「え?」

紀子が小声で呟いている声が聞き取れず、拓人はキョトンとした顔を浮かべたが、

紀子は「なんでもない」と、首を横に振った。


キーンコーンカーンコーン


拓人「やべっ、そろそろ行かないとな」

1時間目の開始を知らせるチャイムが鳴り、拓人は夏美たちの方を向いてそう催促した。

拓人「そ、それじゃあまた」

紀子「うん、それじゃあ」

拓人は紀子にさよならの言葉を告げると、夏美たちと足早に自分らの教室へと向かった。



拓人「うぅ~~6時間目終了~」

夏美「おつかれ拓人」

拓人「そっちもな、夏美」

朝の出来事からはもう6時間以上経ったただいまの時刻午後3時。

周りのみんなは帰宅の準備やら部活の準備やらをしている。

今日は茜もいないし、部活はやめておこうという話になり、夏美たちも帰宅の準備をしていた。

そして、同じように帰り支度をしていた拓人の耳に、ある放送が流れてきた。

放送「1年2組の朝峰拓人くん、お話があるので、至急職員室へ来なさい」

その放送の声の主は明らかに花山先生だった。

どこか怒っているようなからかっているような口調だったが、拓人は帰り支度をやめて、

気があまり進まないまま職員室に向かおうとした。

ベル「大丈夫ですの? わたくしも一緒に参りましょうか?」

拓人「大丈夫だ、ベルたちは少しの間待ってていてくれ」

拓人はそう言い残すと、教室を出て行き、小走りめに職員室へと向かった。

拓人「俺、なんかやらかしたかな......?」

拓人のその独り言は、空しくも通り過ぎて行った廊下の賑わいの声に消えた。



拓人「失礼します」

拓人は緊張した面持ちで職員室へ入ると、ドアを開けてすぐに花山先生を見つけた。

花山先生も拓人が来たことに気づいたようで、何故かニコニコしながら拓人を自分の机に案内した。

拓人「それで、俺なにか問題起こしました?」

自分の指で自分の顔をさす拓人の顔がキョトンとしていたのか、花山先生は思わず吹いた。

拓人「な、なんですか!」

花山先生「あはは、ごめんね?」

思わず笑った先生に拓人がツッコミを入れると、花山先生は「あはは」と笑い、

その後「こほん」と一度咳払いをして、場を取り戻した。

花山先生「それで、本題に入るわよ」

拓人「最初からそうしてください......」

花山先生「今日3組の雨宮茜さんが欠席していたって言うのは知ってるわよね?」

拓人「? は、はぁ......」

拓人は、何故ここで茜の話が出てきたのか、少々悩んだが、自分では答えが出なかったようだ。

花山先生「それで、拓人君に少しお願いがあるの」

そう言うと、花山先生は今日配られた連絡用のプリントやら宿題やらを机の上に置き始めた。

拓人「な、なんですかこれは」

花山先生「茜さん用のプリントです」

拓人「はぁ~......それで、そのプリントがなんだって言うんですか?」

花山先生「拓人君に、このプリントを今日の放課後に茜さんの家に届けてほしいのよ」

ニコッと笑う花山先生のまさかすぎる発言に、拓人は思わず「はい!?」と声を裏返した。

花山先生「では、よろしくね!」

拓人「いやちょっと待ってください!」

花山先生がこの話ももう終わりと言わんばかりの雰囲気を作ったので、拓人はなんとか食い下がった。

拓人「なんでわざわざ俺に頼むんですか!?」

花山先生「だって、”私が”顧問の部の部員ですもの!」

分かりやすく”私が”を強調したが、今の拓人はそんなことよりも

自分が頼まれたことに疑問を抱いていた。


拓人「会話コミュニケーション部の部員だったら俺意外にもいるじゃないですか」

花山先生「う~ん、まあそうなんだけど、拓人にやってもらわないと意味ないのよね」

拓人「え?」

花山先生が言っていることに、さらに疑問を抱くことになった拓人だが、

その疑問も、次の瞬間に晴れることになる。

花山先生「私知ってるの、拓人くんが女子が苦手でこの部活を創部したこと」

拓人「なっーーー!///」

拓人は思わず赤面した。いや、正確に言えば恥ずかしさでいっぱいでと追記するべきか。

ともかく、拓人は先生がその事情を知っていることに驚きを隠せなかった。

拓人「な、なんでそれを......?」

花山先生「そうね......私の透視能力が、拓人くんの心をも見通して......」

拓人「......先生今何歳ですか......」

花山先生「あら? レディーに年齢を聞くのは禁句よ?」

拓人「あ、ああすみません......って違う!」

思わず花山先生ペースになったことを自覚して、一度落ち着かせるために深呼吸し始める拓人。


花山先生「......落ち着いた?」

拓人「はい、なんとか......」

深呼吸を終えた拓人は、少々呆れ顔見せながら花山先生のことを見つめる。

拓人「それで、誰から聞いたんですか......って、まあ大体わかってますけど」

花山先生「あら? 誰かしら?」

拓人「夏美でしょ?」

花山先生「お~、あたりです!」

花山先生は驚きと感動が混じったような顔を浮かべると、拓人は頭をポリポリ掻いてからこう続けた。

拓人「夏美がこういう性格って言うのは知ってますから。俺を心配して言ったに違いないし、

先生でもあり顧問でもあるあなたには、説明したかったんでしょうし」

花山先生「......それだけ夏美さんのことが分かっているってことね!」

拓人「ま、まあ一応幼なじみやってますし......///」

拓人が少し顔を赤くしながらそう答えると、花山先生は少し微笑んでから拓人に告げた。

花山先生「大丈夫、私は拓人くんの味方よ」

拓人「......」

花山先生「顧問として、できるだけ拓人くんに力になりたいとも思ってるし、

これを他の誰かに口外する子も絶対にしないわ」

花山先生の瞳は、いつもらしく優しく、だが少し真剣な瞳をしていた。

その瞳に、拓人は吸い込まれたような感覚に見舞われたが、これも教師の力なのだと悟った拓人だった。

拓人「はぁ......まあでも、よろしくお願いします、色々と」

花山先生「もちろんです!」

先生はそう言うと、大きく膨らんだ胸元をぼいんと拓人の前に出して、OKのサインを出した。

しかし、拓人の視界にはOKサインよりも、大きな胸元にしか届かなかった。



拓人「それで、なんで俺が茜の家に今日の放課後行くってことになってるんですか?」

花山先生「まだその話を引きずっていたの?」

拓人「当たり前でしょ!」

拓人は再度茜の家に行くかどうかの話をし始めると、先生は「やれやれ」と首を横に振った。

花山先生「良い経験になるじゃない!」

拓人「何がですか」

花山先生「女子生徒家に入れるのよ!?」

拓人「余計ダメじゃないですか!///」

花山先生の提案にツッコミを入れながらも、拓人は内心迷っていた。

拓人「でも......やっぱり行った方がいいですよね?」

花山先生「そうね、あなたにもきっとその方がいいと思うわ」

拓人「でも......」

拓人「(俺も行きたいのはやまやまなんだが......ほら、やっぱり茜と言っても、

女子の家に行くわけだし、なにより俺が来たところで茜が嬉しがるとは思えねー......

でも先生もこんなこと言ってるし......あーもう!)」

拓人は激しい葛藤を繰り広げていた。

茜の見舞いに行くか、それとも他の誰かに譲るか、

この二つの選択肢に、拓人は十分に悩んでから、ついに決断を下した。

拓人「先生俺......」

花山先生「はい......」

緊張の瞬間。

文面だけ見たら完全に拓人が先生に告白してるように思えるが、それとは大間違いだ。

拓人が下した答え......それは......


拓人「俺、茜の家に行ってきます」

花山先生「ホント!? 助かるわ~!」

拓人が下した答えは......家に行くことに決めたことだった。

拓人「(そう、俺が行くことに決めたのは”あくまで”お見舞いのためと、先生にお願いされたからだ。

うん、それ以上もそれ以下も他の感情など微塵もないぞ......)」

自分にまで言い訳をしている拓人を横目に花山先生は、とても分かりやすく喜んだ。

拓人「なんで先生がそこまで喜ぶんですか?」

その喜びっぷりを見て、拓人はおもわずそう聞いた。

花山先生「だって! 少しでも役に立てたかなって思って!」

興奮冷めやらない状態でそう言い終わると、また喜びを露にした。

普段は軽い感じの先生で、不思議なところも多いが、改めて教師だと思い知った拓人。

それと同時に、良い顧問を持ったな......と、しみじみと感じた拓人であった。






拓人「............着いちまった......」


ビュービュー


5月の暖かい風がなびくここ、茜の家前にて、とある男子生徒が、ぽつんと突っ立っていた。


男児「おかあさーん! あのひとなにやってるの?」

男児の母「こら、ダメよ。見ちゃダメ!」


そのとある男子生徒は、様々な表情を顔に浮かべたり、頭を抱え込んだりしていたそうな。


その男子生徒を男児は興味津々に、母は怪訝そうにその男子生徒を見つめていた。

























お知らせなのですが、投稿について、

再来週から泊りがけの用事があるので、再来週は投稿できないです、すみません。

明日と来週1回は投稿したいと思いますので、何卒。

これからも応援よろしくお願いします!


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