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階段の司書室  作者: いす
67/84

遅い

67話目です

誤字・脱字があったら申し訳ありません

「むーっ!」

「ごめん…」

ふくれっ面の雹に対し、正座をして「ごめん」という言葉を繰り返す遠。

「遅い…!」

「ごめんなさい…」

怒れる彼女はしゃがんで、びよーんと彼の頬を伸ばす。

その伸び具合に比例して、彼のごめんが、ほへぇんと形を変えていく。

…今日、太陽が覗くいい日に彼はとてつもないぐらいに遅刻をした。

いつもならば学校の終わりに直ぐにでもここに向かう彼だったが、色々と用が積み重なり、それを片付けていたらこうなった。

「どうして…?」

「色々…友達から頼まれて…」

その事を簡潔に伝えると、彼女の頬に貯まる空気が増える。

「友達…いっつも友達…その友達…嫌い」

「あはは…」

「…なに、頼まれたらこんなに遅くなるの…?」

「あー…えーっと…」

言葉に詰まる。

それを雹は見逃さなかった。

「頼まれたことなんだからすぐに言える…もしかして…言えないこと…?」

「べ、別にやましい事ではないよ!?…うん」

「うー…」

何かを隠す様子を見せる彼に、雹は小さく唸る。

「ほ、ほらお菓子!お詫びにたくさん買ってきたから!」

それをかわすために鞄から一口サイズのお菓子を取り出す。

こうなると思って、遠が選りすぐりを急いで買ってきたのだ。

…それを見た雹は

「ほぉぉぉ…!」

凄く喜ぶ。

怒りと頬の空気は何処へやら。

散らばったお菓子に半分を支配されたテーブルを見てキラキラピカピカ瞳が輝く。

それはまさに天に光る星のよう。

「ゆ、許してくれる…?」

「うん…うん…!許す…!」

「よ、よかった…」

両手一杯にお菓子をすくい、読みかけの本が詰まった場所へと向かっていく。

…あんなに全てにときめいていた彼女だが実のところ、この量のお菓子全てを彼女一人で食べきれるという訳ではない。

むしろ、いつも半分は余らせてしまっていて、仕方なくとして残ったものは図書館の休憩用スペースに置かれるのだ。

彼女の余り物が図書館の人が来ないという弱点をなんとかカバーしているのだ。

このお菓子も大半が他の人に…と、誰にあげているのか分からない彼は自分もグミを手に取る。

オレンジ味のグミを食べていると、何かついでに彼女と頼まれ事で減ったTP(体力ポイント)も回復しそうだった。

「んふ~♪」

「幸せそうで何より…なのかなぁ」

陽気にページをめくる彼女にふと、疑問が湧く。

もし雹が怒ればお菓子が貰える、なんて考えるようになってしまったらどうなるんだろう。

…!それはいけない。

そうなって、周りからより距離を取られるようになればより雹は周りに興味を持たなくなってしまう。

いけない…それは絶対にダメ…。

ここは…より心を鬼にして…。

…でも、ここで無理に取り上げたりなんてしたら…!

どうなるかは僕でも少しぐらい分かる。

次から…次からそうしよう。

「次…次…」

うわ言のように繰り返し、頭の中に刷り込んでいく。

今度から絶対雹の機嫌取りのためだけにお菓子は買わない!

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