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階段の司書室  作者: いす
64/84

電話

63話目です

誤字・脱字があったら申し訳ありません

彼女が夏風邪を引いた。

前に風邪を引いたときは、彼女が無理矢理に会いに来て、色々とドキドキしていたのだが彼女も考えたらしく、今回の会いかたは少し違った。

「もしもし?聞こえてますかユキ?」

「んー聞こえてるぞー」

「んふふ~♪お家でもユキの声が聞けるなんて嬉しいですね」

スマホの奥から彼女の優しい声音が聞こえる。

と、それ以外にも、咳が音だけ届いてくる。

「大丈夫か?」

「あ、もちろん大丈夫です!ですから、変に優しくして電話を切るとかは止めてくださいね?」

「優しさ関係なしにそろそろ切る予定だったんだが」

「ま、まだ少ししか経ってませんよ!?」

「歩きスマホは禁止だぞ」

人間、何かに集中すれば必ず何処かに隙が出来る。

だがら、電話に集中すれば俺にも隙が出てしまい、事故が起こりかねない。

ましてやこれから上るのは階段。

足を踏み外したとか、そういうことで大怪我もあるかもしれない。

「だ、だったらユキ!歩かなければ良いんですよ!」

「そしたら俺はどう帰ればいいんだ」

「だって…ユキの声…もうちょっとお家で聞いてたいんですもん…」

「えー…」

…仕方なし。と、立ち止まってスマホからの声に耳を傾ける。

だけど、電話の声からしか様子が分からない彼女は、俺の言った言葉を否定的に捉えたらしく焦りがある声音で話しかけてきた。

「ユ、ユキの声を聞くと、風邪がその…な、治るんです!」

「そんな効果俺にはない。大丈夫、しばらくは電話に付き合うから」

「そうですか…良かったぁ…けほっ…」

安心した声と共に小さく咳き込んだ音が耳に入る。

「やっぱりもう寝とけ」

「大丈夫です!超元気ですから、ワタシ!…けほっ」

また、さっきよりも辛そうな咳が彼女から聞こえる。

………。

「…なんか…買っていこうか?」

「えっ?」

「いやだから、なんか食べたいものとかあったら買って寄ってくけど」

…前に、絶対にお前の家には行かないと言ってしまったけど、こうも体調が悪いのを聞かされては不安になる。

俺が体調が悪くなった時だって、彼女は献身的に尽くしてくれたんだ。

だから…まぁ。

「…き、来てくれるんですか?」

「今日だけな」

「ほ、本当ですかっ…!…こほっ」

彼女の言葉を咳が遮る。

「ほれ、じゃ、さっさと食いたいもんとか教えてくれ。早めに買って、家教えてくれればすぐに行く」

「特に食べたいものは無いですから、直ぐに!今すぐに!早く来てください!」

「…ん、了解」

風邪を感じさせない元気な声を聞いて、電話を終わらせようとする。

「…あ、やっぱりゆっくり来てください!」

「どっちだよ…」

耳から離したスマホから、彼女からそう言われるのが小さく届く。

早いのかゆっくりなのか。

「だって…今パジャマですから…見られたら何か…乙女として恥ずかしい部分を見られた気になるんです」

「はぁ…分かった。ゆっくり行くから、そっちも倒れない程度に準備してくれ」

「はいっ!それじゃあ待ってますから!」

「んー」

適当に返すと、電話終了の文字が画面に現れる。

それを見て、やっと階段を一段上る。

と、スマホが揺れる。

切ったばかりなのにまた彼女から電話がかかってきた。

「…なに」

「ユキ!下着は黒の方が良いですか!それとも名前に近い白の方が」

切った。

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