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階段の司書室  作者: いす
55/84

名前の由来

55話目です

誤字・脱字があったら申し訳ありません

「そういえば、どうしてユキは春生まれなのに『ユキ』なんですか?」

帰る途中、彼女が名前の由来を聞いてきた。

確かに、春生まれでユキ…というか(せつ)なのは、おかしいと思う。

でも、昔、彼女と同じように名前の由来を聞いて知ったときには、この名前が少しだけ好きになった。

「…この名前の由来は…これだよ」

「これって…桜の花びらですか?」

夏が近づいてきているというのに、変わらず花びらを舞わせるたくさんの桜。

これに俺の名前の意味がある。

「母親が俺を生んで、目を覚ました時に、最初に目に入ったのがこれだったんだ」

「…?それじゃあ、桜とかになりませんか?」

「この花びら、よーく見てみると白色の花びらも混じってるだろ?」

「あ、確かにそうですね。真っ白です」

彼女の手のひらにふわりと落ちた花びらの色は白。

「母親が見た舞う桜の花びらは、全部真っ白だったんだよ。それこそ、本当の『ユキ』みたく」

その時の写真が家には飾られていて、俺を抱き抱える母親の後ろは雪と間違うぐらいに真っ白な花びら達が写っていた。

…由来を知ったときの思い出に浸っていると、彼女が言葉を発した。

「じゃあ、何で『ユキ』って読み方じゃなくて、『セツ』なんですか?」

………………。

「知らない」

「えっ」

「…た、確かにそうだよな…普通はユキって読み方にするよな…。あれ…なんでなんだ…」

「それは…聞いてなかったんですか…?」

「名前の雪の由来は聞いたんだが…読み方については知らない…」

「えぇ…」

「な、なんでだ?あれ?」

両親達の感動の話を聞かせるつもりだったのに、彼女の純粋な疑問で昔の両親達に謎が湧いてくる。

周りだって(ゆき)って読んでくるんだから、普通素直にゆきって読むようにするよな…。

でも…うちの両親はちゃんとセツって読んでくれるし…。

「分からないですか?」

「分からないです」

どれだけ考えても想像がつかない。

どうして紛らわしい読み方にしたんですか私のご両親は。

ちょっとこの名前が嫌いになっちゃったよ…。

「それじゃあ、この後、ワタシと一緒にユキのお母さんに聞きに行きましょうよ」

「お前も来るのか」

「えぇ、挨拶をしに行きます」

「来させませんよ?」

「えー、前は看病させてくれたじゃないですか~」

「あれは特別」

「ワタシはユキが風邪の時にしかユキのお家に行けないんですか?それってただ専属ナースが欲しいだけじゃないですか」

「…そーいうことじゃない。ただ、お前のことを母親が見たら多分怖がる」

うちの日本語すら雑な母親がこの外人を見て上手いこと対応する未来が見えない。

どう考えても穏やかに済むはずがない。

勝手に慌てて騒いで逃げそう。

「え?でもワタシ、ユキのお母さんに挨拶しましたよ?お邪魔させていただいたときに」

「…それ初耳なんだけど」

「言うの忘れてましたね。…まぁ、声をかけた瞬間に固まったんで、もしかしたら忘れてたりするかもしれませんけど…」

「…あ、だから俺が起きたときに『変な夢だった…』って言ってたのか」

「あちゃー、せっかく『未来のお嫁さんです♪』って元気に挨拶させて貰ったんですけどね」

アイドルのように声を高くしてポーズを決める。

「…もう絶対うちには来るな…」

「ふふっ♪」

「いいか、二度とだぞ」

彼女は笑顔で首をかしげる。

「…返事は」

「…………」

笑顔なのだが、頷いたり、はいと、了承する気は無さそう。

その後もひたすら確認したのだが、結局最後の最後まで彼女ははぐらかすだけだった。

無理矢理追い払った。

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