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階段の司書室  作者: いす
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水族館・帰宅

「いやぁ、水族館、楽しかったですね~♪」

街の向こうに夕焼けが落ちるのを背景に、階段を上りながら彼女がそう言った。

そんな彼女の手には可愛らしいイルカの人形が抱かれていた。

「まぁ、確かに楽しかったな。俺イルカにむっちゃ嫌われてたけど」

「なんでかは知らないですけど、ユキが触る度尻尾を水に強く叩きつけてましたね」

「あれどう見ても怒ってたよな」

「ワタシだったらユキに撫でられた途端に水に沈むと思いますけどね」

「助けないからな」

「ユキは人工呼吸がお望みですか。ならワタシ、その覚悟を決めましょう!」

言葉の通り、その目には溺れてやるという覚悟がある。

「危険だから止めような。もしそんなことしたら俺お前と縁切るぞ」

「じょ、冗談ですよぉ…。だから、縁を切るなんて物騒なこと言わないでください…」

彼女のイルカを抱きしめる手が震えているような気がする。

効果覿面(こうかてきめん)だったようだ。

「…あ、そういや近くの海、ついでで視たけどあそこもなかなか綺麗だったな。寒かったけど」

「えぇ、ワタシも日本で海は始めてみましたけど、綺麗でしたね。寒かったですけど」

水族館が海の近くに建てられているため、必ず海がその目に入ってくる。

どこまでも続く水水水。

見ていて壮観だった。

…寒かったけど。

「夏になったら泳げるのかね」

「…海の家とかは見えませんでしたけど…。って、あ、まさか夏のデートのお誘いだったでしょうか?ワタシはいつでもオッケーですよ!」

「違う。純粋に気になっただけ。勘違いだ」

「ワタシの水着…気になりません?」

「気になりません」

キッパリと言い切る。

今年の夏はクーラーと共に過ごすと前から決めていた。

「むー…って、あぁ、分かりましたよ。ユキがワタシと海に行きたくない理由が」

「お前の考えてるのとは絶対違うぞ」

「ユキったら、ワタシの水着姿を他の人に見られるのが嫌なんですね~♪まったくも~う~♪」

テンション高めに身体を寄せてくる。

少しだけ当たるイルカの人形の肌触りはなかなかに良い。

「全然違うんですけど」

「しょうがないですね。ワタシがユキのお家で、ユキのために水着になりましょう」

「お断りさせていただきたいんですけど」

「ま、まさか、もっと過激なのを!?」

「話を聞いて」

…始めての俺からのお誘いデートの最後は、彼女一人がキャーキャー盛り上がって胸でイルカの人形が締め潰される形となった。

…まぁでも、こんな終わり方になっても、今日という一日は楽しかった一日として記憶に残り続けるであろう。

イルカに幸があらんことを…。

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