春・司書室
三十八話目です
誤字・脱字があったら申し訳ありません
桜が舞い散る姿が眺められる司書室。
春の風は暖かさと共に、彼の隣に座る彼女の読む本のページも運び、先へ先へと物語を無理矢理に進めようとする。
そんな風を、彼は思いを馳せるように浴びて、紙だけでなく、髪もなびかせる。
「………」
彼が風を気持ちよく感じていると、強く吹いて、雹のページをバサバサとめくる。
俯いていた彼女は、ゆっくりと立ち上がり、その麗らかな風を…
「邪魔」
と、言い切った。
バンッと音が鳴るぐらいに強く、勢いをつけて窓を閉めると、春の風は部屋の侵入を断ち切られる。
「あー…」
「私の読書の邪魔は許さない…」
「そっかー…」
読んでいたページを探すために、ペラペラと紙をめくる雹は機嫌が悪い。
誰かに読書を遮られることが雹は何よりも嫌い。
声をかけられるだけなら気づかないしまだマシなのだが、
無いとは思うが、読んでいる本を取られたりしたらもう根に持つなんて比じゃない。
昔、実際にそれをしてしまった同級生の男の子は以後、彼女の中では存在しないものになった。
この事に早めに気付いておいてつくづく良かったと彼は思う。
「…………」
「…………」
なので、今本に没頭している雹のために、彼は何か飲み物でも淹れようかと席を立つ。
すると、手が後ろから掴まれる。
振り返ると、雹が手を伸ばしていて、進ませまいと力を込めていた。
「だめ…となり」
「コーヒーとか…」
「いらないから…となり座って?」
「ん、分かったよ」
言われた通り彼が隣に座ると、雹の暖かな体が強く押し付けられる。
風の音が届かないここでは、静かに、紙の音が響く。
閉じられた窓の奥には、たくさんに咲く桜の木と、長く続く階段の上から桜の散った花びらが雪のように舞っている姿が映っている。
「………」
「…………」
「……………」
「………………」
端から見れば喋らなければならないと考えてしまう空気もこの空気も、彼と彼女にとってはいつも通り。
近くの本を手に取った彼は、物語の中へと沈んでいく。
二人の身体が、支え合うように寄せられていった。




