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中編



 *****



 イルシャ教総本山大神殿では、各地方神殿から異常事態発生の報告が相次いでいた。

 内容の共通項は『鮮やかなピンク色の物質が原因と思われる人体・環境への多大な損害』。


 大神殿地下シェルター司令室でモニターを注視していた神官が告げる。

「ピンクの不審物の正体は、おそらく外界由来危険物だ。

 更なる被害拡大を防ぐ為、速やかなる浄化が求められる」


 別の神官が

「この時の為に開発した秘密兵器を使い、この世界に入り込んだ外敵を駆逐するぞ!」

と手に持った筒状の物を振り上げると、

「「「「「おうっ!」」」」」

とその場にいた他の神官達も筒状の物を振り上げた。



 *****



 小さな村の教会にマーガレットが運び込まれた。

 意識が朦朧としてぐったりとした少女に、修道女メールが透明な液体を飲ませる。

「少しずつ、無理しないで。気持ち悪かったら吐いて良いからね」

 そう優しく声を掛けながら飲ませていく。


 始めはケホケホと咽むせたりゲェーッと吐いたりしていたのが徐々に落ち着き、自分でコップを持って飲む頃にはマーガレットの顔色もすっかり戻った。


「マーガレットはこの実を食べたんだ」

 アランは大人達にマーガレットが食べた草の実を見せようと籠を持ってきた。

 籠の中には艶々したピンク色の草の実が二つ、異様な存在感を放っている。

 草の実と一緒に入れてあった薬草は無残に萎びており、実に近い物に到ってはどす黒く変色して腐敗臭が非道い。

 あまりの悪臭と不気味さにアランは思わず「ひっ!」と籠を放り投げた。


「皆、下がりなさい!毒気にやられますよ!」

 神官が村人達に警告する。


 鼻や口を押さえた村人達が遠巻きに見守る中、神官は手に持った筒状の得物から


 ブシューーー!!


と白くキラキラしたものを噴出し、草の実を中心に籠全体に掛けていく。


 すると鮮やかなピンク色は即座に色褪せ実は小さく萎み、やがて灰のように散り散りになって消えてしまった。


 悪臭も消え去り爽やかな風が皆の頬を柔らかく撫でる。


 おぉ、凄い、流石大神殿の叡智だ等の賞賛を右から左へと流して神官は得物を振り上げる。


「元凶を浄化しに行きます!」



 *****



 狩人達から報告を受けた神官は、急ぎその猪の元へと向かった。手には浄化水の入った筒状の得物。


「あ、彼処あそこだ!」


 案内で先頭を行く狩人が指差す先には、立ち枯れた草木と地面に頭を突っ込ませた元猪の死体。


 仕留めたばかりと聞いていたが腐敗が進んでいるらしく物凄い悪臭が漂ってくる。そして何故か所々がピンク色に染まりウニョウニョと蠢いて見える。


 神官はあまりの悪臭と醜悪な見た目にクラクラしながらも

「悪しきもの、退散せよ!」

と元猪の死体に万編無く浄化水を振り撒く。


 ピンク色だった所は色褪せ萎み、小さく散り散りになり消滅してしまった。


 その後、死体の周囲も念入りに浄化水を振り撒くった。


 周囲に爽やかな風が吹き渡る頃にはピンク色も不穏な気配ももう何処にも感じられなかった。



 *****



「あら、薬師の婆様。如何なされましたか?」

 神殿に行くと修道女メールから声を掛けられた婆様は、直ぐさま司祭様達に取り次いでもらい事の次第を説明していく。


「成る程、この花が…」


 婆様の話から、これは緊急回覧で告知された外界由来危険物であると判断した司祭様は神官達に指示を出す。


 神官達は即座にその花に浄化水を振り撒き、マイクに浄化水を飲ませて介抱した。



 *****



 アレンとソフィアから事情を訊いた村の大人達と神官は、アランの案内でピンク色の実があった場所へと急いだ。


「あっ!あそこ!」

 アランの指差す方へと皆が目を向ける。


 そこには無数の鮮やかなピンク色の草の実が艶やかに存在を主張しており、周囲の枯れ腐った草木との対比が著しい。


 悪臭も強く、近づくのは困難かと思われた。が


 ブシューーー!


と神官が背に担いだ容器から伸びた管で浄化水を噴射すると、立ち所に悪臭は消え去り、その勢いのままピンクの実とその周辺も浄化していった。



 *****



「一体どうなっているのだ?」

 回復したマイクは神官達を案内してピンク色の蕾を見つけた街道脇まで来たのだが。


「何でこんなに増えてるんだ?」


 辺り一面ピンクの花畑。

 芳しさに隠れた異臭が花片と共に風に舞う。


 花粉を吸引したと思しき人々や馬牛等の家畜、よく見れば小動物や小さな虫に到るまで死んでしまったかのように横たわっており、静寂が場を支配していた。


「一刻の猶予も無い!」


 浄化液を満たした容器を背に担いだ神官達は素早く一定の間隔を開けて横に並ぶ。


「構え!」

 彼等は容器から伸びた管をピンクの花畑に向けると

「浄化作業、始め!」

の掛け声に合わせて一斉に浄化水を噴射した。


 あまりの鮮やかさで毒々しさを感じるピンクの花畑は瞬く間に色を無くし萎んでいき、燃え尽きた灰のように風に吹かれて空に紛れて消えてしまった。


 浄化されて回復した者達が動き出して、場の静寂を破っていく。


 爽やかな風が、安堵の表情を浮かべた皆の間を吹き抜けていった。





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