0216・登録と新しい小銃
Side:イシス
田舎というか小さな漁師町のような中をウロウロとする。
どの家も白い家であり、漆喰で建物を塗っているのがズラッと並ぶ。
海からの照り返し、つまり太陽光の反射で家が熱くなってしまう。
だから白く塗って熱くなるのを抑えるんだよな。
元の星の海外なんかでは、こういう光景は当たり前にあったと思う。
ここもそんな感じだ。
海に向かって家が並んでおり、なだらかな斜面に家が沢山建っている。
そしてその先は船が接岸できる港だ。
多くの桟橋があるが、長い時間を掛けて作ってきたんだろう事が分かる。
そういう意味では長い歴史のある町なのかもしれない。
そんな事を思いつつ町を見ていると、ハンター事務所と書いてある建物を発見した。
なぜかこの星の文字が分かるが、どうやら皆も分かるらしい。
何故なのかは不明だが。
『この星に来る前に最適化と調整を行いましたが、その所為では? あのタイミングでは既に前の星を終えていましたし、最適化だけでなく調整まで行ったからでしょう』
『となると、その星の指令が終わったタイミングで調整すれば、次の星に違和感なく潜り込めるという事ですか? 文字が読めないのは怪しまれる可能性がありますし』
『そうね。文字が読めないのは普通という場合もあれば、農民でも読めないのはおかしいって言われる場合もある。正直に言って読める方が違和感を持たれずに済むと思うわ』
そりゃな。
余程の古い時代でもない限り「字が読めるなんて怪しい」とは言われないだろ。
貴族しか字が読めないという社会でもない限り、読める事で怪しまれる事は無いな。
おそらくだけど。
俺達はハンター事務所と書かれている建物に入り、受付の所まで行く。
そしてハンターについて聞いてみると、前の星の開拓者とは違っていた。
ハンターとは賞金首を殺す仕事らしい。
そんなに悪党が多いのかよ。
「ハンターの仕事は他にもあり、魔物退治の仕事もあります。これは壁に貼り出してありますが、増えてきた魔物を間引く為の仕事ですね。町の外にある解体所に持っていって下さい。そこでお金が受け取れます」
「成る程。で、ハンター登録するのに掛かる金額は?」
「銀貨2枚です」
「じゃあ、銀貨8枚ね。これで四人分よろしく」
俺達は出された紙に適当に記入し、それを渡すと受付嬢は裏へと行った。
それなりに待たされたものの、戻ってきた受付嬢からはドッグタグのような物を受け取る。
ちなみにハンターにランクとかそういうものは無いらしい。
ただし仕事を熟すうえで、大物の犯罪者を捕縛したり殺害したりすると名前が売れるそうだ。
だから名前が売れているハンターは大概が実力者であるものの、ワザと有名になろうとしない実力者も居るらしい。
どう生きるかはハンターの自由なんだそうだ。
ちなみに壁に貼り出してあった魔物は二種類で、鳥の魔物と猪の魔物だった。
鳥の魔物は群れで飛んでいる事がよくあり、猪の魔物は東の森に沢山いるらしい。
まあ、両方ともに間引き依頼だからなぁ。
それぐらい大量に居るんだろう。
それに町の外にあった畑を襲う可能性は高そうだしな。
猪は特に。
俺達はハンター事務所を出ると、町の外に出て行く。
畑を抜けて進んで行き、下りて来た場所とは違う林っぽい場所へと突入。
そのまま魔力反応を探していると、すぐに反応を発見。
武器を抜いて近付いてみると、それは小型の猪だった。
うり坊よりは大きいものの、大型の猪に比べれば小さい。
ただし子供の可能性もあるので、猪の平均的な大きさは不明だ。
「ブルルルルルルル……!」
ドドッ、ドドッ、ドドッ、ドドッ、ゴシャッ!!
こちらに勢いよく突撃して来たのはよかったのだが、狙われたバステトはサラッと回避。
そしてその横に居たハトホルがメイスを振り下ろして叩き潰す。
頭が潰された猪は転がって止まり、そして動く事は二度と無かった。
死体を見ると頭が陥没しており、一撃で殺された事がよく分かる。
ちなみにハトホルが持っているのはフランジ型ではなく星型メイスだ。
フランジ型の場合、刃が悪くなるというか相手によっては潰れる事も当然ある。
ひしゃげたりもだが。
その点、星型メイスの方が壊れにくいという利点があり、ハトホルはそちらの利点をとったという訳だ。
どのみち【身体強化】のパワーで潰せば良いだけだし、その簡便さがメイスのいい所だ。
それはともかく血抜きと冷却を終えたらアイテムバッグに入れ、猪を探して歩く。
ついでに鳥も探しているんだが、なかなか見つからない。
ハンター事務所の壁に貼り出されていた紙には絵も書いてあったので、標的は分かるんだが見当たらないな。
もしかしたら飛んでる奴らを撃ち落せって事なんだろうか?
だとすると銃を使わないと倒せないぞ。
でも銃は売ってるし、可能性としては有りそうなんだよなぁ。
銃を使うって事は実入りはどうなんだろう?
銃弾だってタダじゃないんだし、場合によっては赤字になる。
百発百中ならまだしも、そんな事はあり得ない。
そうなると多くのハンターは鳥の魔物を狙わないだろう。
でも貼り出してあるって事は……もしかしたら罠で獲るのか?
それなら獲れる可能性はあるが、数回で罠は見破られそうな気もする。
鳥だって馬鹿じゃないし、カラスなんかは一度見たら二度と罠にかからないって聞くしさ。
そうなると罠もあまり良い方法とは言えないだろう。
ま、俺達は鳥の魔物を探しつつ、猪を獲っていくか。
猪を三頭倒した時だった。
魔力反応があるので見てみると、木の枝に鳥が留まっているのを発見。
こちらを見ているものの動く気配が無いので、小銃を取り出した俺は弾をセットする。
そして撃とうと思ったら、既に飛び立っていた。
「間に合わなかったか……。となると、鳥の魔物はこれが何か理解している? もしくはこちらが気付いたのを理解して飛んだのかな?」
『こちらの動きを警戒したという方が正しいでしょうね。それよりも私の銃を作製してくれませんか? それなら鳥の魔物を獲れそうですし』
「そうだな。ヌンさんなら百発百中の気もするし、ついでにもうちょっと良い銃に変えてこよう」
俺達は一旦<時空の狭間>に戻り、<物品作製装置>の部屋へと移動。
そして小銃と弾を箱の中に入れ、パネルから起動してウィンドウを操作。
やはり小銃と弾が追加されていた。
色々見てみると5発装填式の物があったので、そちらにする事に。
それと弾も作製可能になっていたが、弾の素材の中でもガンパウダーと起爆薬が無いので10発以上は作製できない状態だった。
この辺りは今まで手に入れてきた素材の中には無いので、新たに手に入れるか作製する必要がある。
仕方がないので弾は買うしかないだろう。
強化された弾も出ているが、作り変える気にはならない。
「それよりもイシス。先ほど箱に入れた小銃を取り出してください」
「それは構わないが、何かあったのか?」
俺は先ほど箱に入れた小銃を取り出してヌンに渡す。
ヌンはそれを色々と確認して返してきた。
「やはり思った通りですが、かなり古い型の小銃ですね。これも田舎だからなのか分かりませんが、見てくださいイシス。ライフリングすら施されていませんよ」
「………本当だな、これ滑腔銃だったのかよ。まだライフリングを刻む技術力が無いのか? それにしたって歪な発展をしてるなぁ。小銃はあるけど未だ滑腔銃、拳銃はあんな古いの。いったいどうなってんだ?」
「そういう星なんでしょうね。そうとしか言えません。それよりも小銃の作製をお願いします」
「あいよ」
俺はヌンさん用に三八式歩兵銃のような見た目の銃を作製。
ボルトアクション式で5発装填、更には要所の金属は練魔鋼で作られている。
買ってきた小銃とは比較にならないほど堅牢な小銃となった。
弾は買ってきた物を取り出してヌンさんに渡しておく。
するとポーチが欲しいと言い出してきたので適当な皮で作って渡した。
そのポーチの中に弾を5発入れ、残りの5発は装填している。
確かに弾の持ち運びが出来ないと不便だもんな。
そこまで考えてなかった。




