0114・西への旅と夜
Side:イシス
途中から雑談になっていたので止め、俺は<物品作製装置>の箱に死んだ奴等が持っていた物を全て入れて魔法陣の部屋に戻る。
そして惑星へと転移したら、すぐにボルトの回収を行う。
八本のボルトはすぐに見つかったのでアイテムバッグに入れ、俺達は再び西へと歩き出す。
襲われたものの、俺達がやるべき事はハルマーの町へと行く事だ。
そこは一切変わらない。
『でも襲ってきた奴らは、ギルド長に唆された可能性もあるんじゃないの? 何で律儀に持って行くわけ?』
『簡単に言えば、持って行かせない為に襲わせた可能性があるからだ。それに俺は死なないし、殺された瞬間<時空の狭間>で復活する。バステトだって<生物修復装置>に入れれば復活するしな』
『それ以前に仲間として登録されてますから、バステトも死んだら<時空の狭間>に戻りますよ? そしてそこで復活です。あくまでも、仲間でないなら<生物修復装置>を使わないといけないだけですので』
『そうだったのか……全然知らなかった。っていうか、バステトはいつ俺の仲間認定されたんだ?』
『前の星を終わらせた後でバステトが報酬を貰ったでしょう? あれで確定しました。あの時の報酬の授与には時間が掛かっていましたが、それも復活の為ですね』
『じゃあバステトも死んだ所からやり直せるって事か? そうなると魔法陣は俺のとバステトのと二重で登録される?』
『それはありません。復活するようになったと言っても、それはあくまでも<時空の旅人>ありきです。例えば同じ星に<時空の旅人>が居ればいいですが、居ない場合は普通に死亡。そして付与されたものは全て失うのです』
『結局は<時空の旅人>ありきって事か。それだけ<時空間固定能力>って重要なんだな。まあ、それがないと<時空の旅人>になれないんだから、当たり前ではあるんだろうけど』
『というより<時空の旅人>の<時空間固定能力>が無ければ<時空の狭間>に戻る事も出来ませんよ。無理に行えば<時空間の歪み>に消えるだけです。そここそが混沌であり虚無なのですから』
『あれ? っていう事は、もしかして<時空間固定能力>って混沌や虚無に飲み込まれないって事なのか?』
『いえ、生身で混沌や虚無に触れれば崩壊しますよ。それは当たり前の事でしかありません。しかし<時空の狭間>の中も時空間は混沌としており、その中で自身を固定して維持するには<時空間固定能力>が必須なのです』
『そういう事ね。<時空の狭間>が混沌や虚無と触れるのを防いでくれてる。でも、それだけじゃ混沌や虚無の影響を防げない。でも<時空間固定能力>のある者は、その影響を無効化できる訳だ』
『正しくは混沌や虚無に飲み込まれないと言った方が正しいのですけどね。と言いますか<時空の狭間>の外は、虚無も含めた混沌と言った方が正確ではあります。だからこそ捨てたら消え去るのですから』
『聞いてても分からないから、聞いて分かる話にしてくれない?』
『すまん、すまん』
その後は適当な雑談をしつつ歩いて行き、昼を過ぎた辺りで村に到着。
もちろん昼食は<時空の狭間>でとっているのでスルーし、俺達は更に西へと歩いていく。
夕方になったものの村は見えておらず、俺達は野営が出来るような場所を探す。
当たり前だが野営などはしないものの、野営が出来そうな場所を知っておく必要がある為だ。
何かを聞かれた時に言い訳ができないと困るしな。
そう思ってウロウロするも、それっぽい場所は見当たらなかった。
やはり大半の人は村で一泊を繰り返しながら進むのだろう。
そうなると村で泊まらなかったのは失敗だったか。
『仕方ありません。宿代が勿体なかったとでも言い訳をすれば大丈夫でしょう。そもそも私達に危険は無いのですから特に問題はありませんし、生きている以上は注意を受ける程度で済みますよ』
「そうだな。説教は受けるかもしれないが、あまりお金の無い者がやりそうな事ではある。偶然にも襲われる事は無かった。これでゴリ押しすればいいだろう。夜中は探索だな」
『近くに森っぽい場所もありますし、あの辺りに入って様々な物を手に入れるのも良いと思いますよ。それとも近くに生えている草を持っていきますか? 草原並に色々と生えていますし』
『色々と多いわよねえ、草だけじゃなく花も生えているみたいだし。何の花かは知らないけど、前から育ててる薬になる花に近い物かも』
「それなら良いんだがなぁ。ま、採って箱の中に入れてからだ。その後に何が作れるかを見れば、大凡は役に立つかどうかが分かる。役に立たなくても栄養剤の材料にはなる筈だしな」
俺はそう言って草や花を刈り、その後に<時空の狭間>へと転移する。
戻ってきた俺達は<物品作製装置>の部屋に行き、箱の中にボルトや草花を入れて確認。
栄養剤くらいしか使い道がなかったので、さっさと料理を作って食事にした。
食事の後は<作物収穫室>で収穫と種まきを行い、それが終わったら寝室へ移動。
既にバステトは丸くなって寝ていたので、起こさないようにしながら寝転がり、俺もさっさと寝る事にした。
…
……
………
起きた俺達は食事をし、それが終わったら惑星へ。
今度は森の中に入って様々な物を探す。
夜中も歩いて町まで行くのは構わないのだが、それをすると明らかに早すぎるので、流石に自重する事にした。
何故なら俺達の目的地は町だ、不審な所があれば厳しく調べられるだろう。
その時に言い訳できないのは困る。
なので夜の間は進む事もせず、代わりに出来る事をやる事になったわけだ。
魔物を獲って<物品作製装置>の箱に入れれば、食い物にはなるだろう。
カマキリが居れば倒して武器の素材に出来るし損は無い。
『ただ、魔物というのは辺境に行くほど強いものが多いでしょうから、都会に向かうという事は弱い魔物しか居ないとも言えます。食料という意味ならば良いのですが、武具の素材という意味では……』
「役に立つかは怪しいな。ま、最悪は<エンシア銅>で武器を作ればいいさ。アレなら魔力に対する耐性もあるし、魔力を流しやすいから十分に使えるだろ」
『代わりに注目の的になる可能性はありますけどね。この星に<エンシア銅>のような物が無い限りは、確実に怪しまれますよ。それなら牙や爪の武器の方が遥かにマシです』
「確かに独特な見た目をしてるのは間違い無いから、同じような物が無ければ怪しまれるか。今のところは<魔力操作補佐杖>も出してないし<魔操の指環>もしていない。バステトも首輪をしていないから<エンシア銅>そのものは見られないだろう」
『とはいえ見られたら駄目な可能性があるので、これから先も見せないほうが良いですね。村ではそれなりに見られましたが、覚えている者は多くないでしょう。途中で外してますし』
「だと良いけどな。こういう事って、何故か目敏く覚えてるヤツとか居るんだよ。お前は一度ぐらいしか見てないじゃないかってヤツがさ」
『その時は、その時でしょう。適当に流してしまえば問題ありません。そもそもあの村は田舎ですし、田舎から出てくる情報なんて適当なものですから』
「ま、そりゃそうだ。都会に着くまでに多くの人を介する事で、メチャクチャな噂になるなんて事は、古今東西よくある話でしかない。というか情報網が発展した時代ですら、尾鰭や背鰭が付くんだ。こんな時代じゃ尚更だろう」
『だからこそ、誰に絡まれるか分からないのですけどね。……それにしても妙に魔物の反応が無い森です。流石にちょっと変では?』
さっきから魔力を放射しても反応が無かったんだが、ヌンも無かったのか。
となると近くには全く居ないって事になるわけで……。
確かに変だな?




