0112・愚か者の末路
Side:イシス
俺達は村を出発して西へと歩いていく。
村が二つと町という言い方をしていたので、村二つを越えたら町があるんだろう。
そこまで長い距離ではないと思うんだが、この星では何処までの距離が開いているのかは分からない。
そもそもグレイの歩ける距離とか平均的な体力が分からないし、それによって村の位置っていうのは変わってくると思っている。
馬車とかもそうだが、一日で移動できる距離に作ってあると、それがどの程度なのかは判然としない。
グレイことアンズルの体力がそこまであるとは思えないというか、人間と大して変わらないとは思うが、それも俺がそう思っているだけだからなぁ……。
不確かなものを参考にする訳にもいかない。
だから正確な距離を計る事は流石に………はぁ、下らない事をしやがって。
せっかく見逃してやったっていうのに、結局ここで散る事になるんだな。
「そこに居るバカども出て来いよ。……出て来ないとここから攻撃して殺すぞ」
俺がそう言うと「ガサガサ」音を鳴らしながら現れたのは、昨日俺に足を撃たれた連中だった。
どうせこうなると思っていたが、予想通りの事をしやがって。
「おいおい、三人組も居るのかよ。お前らも含めて本当にバカだな。俺がワザと逃がしてやった事も分かってないのかよ」
「逃がしてやっただと!? ふざけやがって! てめぇの所為でオレ達は終わりだ!! 絶対に許さねえぞ、ここでブッ殺してやる!!」
「お前が訳の分からねえ力を使う事は知ってるがな、オレ達ゃこの通り、クロスボウを持って来てるんだよ!! これならてめぇを遠間からブチ殺せるって訳だ! 覚悟しやがれ!!」
「おい、早くブチ殺すぞ! コイツの所為でまともに歩けもしねえ。全てこいつの所為なんだから、グダグダ言ってねえでさっさと殺すぞ!!」
「それで、お前らもそれに乗っかったって訳か? そういうところだぞ、お前らが上手くいかない理由はな。大事なところで選択を間違える、だから失敗して上手くいかないんだよ」
「うるせぇ!! こうでもしなきゃ納得なんぞ出来るかってんだ! ここで確実に殺してやる。お前の所為でメチャクチャだ! お前を殺したって足が元通りに戻る事はねえ。だが、絶対に許しはしねえからな!!」
「そうだ! お前の所為でこんな事になって、ぼくは家を追い出されたんだぞ!! 全部お前の所為じゃないか!!」
「そうよ! そもそも、あんたがあそこで死んでればよかったんでしょうが!! 何で私達がこんな目に遭わなきゃいけないのよ。お前が死ね!!」
「無様で醜く憐れな連中だ。自分の行いが原因の癖に他責思考。本当に色々な意味で終わってるな、お前らは。まあいいさ、ここで死ね」
その瞬間、オレとヌンとバステトは一斉に【ヒートバレット】を撃ち込み、それと同時に俺は横っ飛びで飛んだ。
クロスボウがこっちを向いているし、いつボルトが飛んでくるか分からないからな。
そしてバステトも撃った後に横っ飛びで離脱している。
平然としているのはヌンだけで、ヌンの場合はゴーレムボディだから修理すれば済むからでしかない。
ある意味で適当で済むからこそ、棒立ちで撃っている。
俺達が撃った【ヒートバレット】は連中の額に吸いこまれるように当たり、全員の命を奪った。
俺が右端の二人、バステトが左端の二人、そしてヌンが残りの四人。
それでキッチリと終了だ。全員余さずここで始末した。
俺は素早く立ち上がるとあたりを見回し、誰も居ない事を確認。
更に確認する為にヌンに聞く。
「ヌン、近くで俺達の行動を確認しているヤツは居るか?」
「………いえ、確認できません。遠くを見る為の道具を使っているのであれば、その限りではありませんが、おそらくは大丈夫でしょう。なので見ている者は居ないと思われます」
『仮に見ている者が居たらどうなの? 居なかったら?』
「見ているヤツが居ないなら、こうするんだよ」
そう言って、俺は全員の死体をアイテムバッグに入れると<時空の狭間>へと戻る。
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『<時空の狭間>に戻ってきたとはいえ、イシスが何をやる……って、まさか! さっきの死体を<物質作製装置>に入れるんじゃないでしょうね!?』
「バステトの予想は大間違いだ。俺がやるのは、ここで奴らの身包みを剥ぐという事だよ。何故なら死体はゴミ扱いされる。つまり自動で<時空間の歪み>へと送られるからだ」
「確かにイシスの言う通り、死体は<時空間の歪み>に送られますね。ですので死体の処理は放置で済むと思います。ついでに身に着けている物を調べる事によって、大凡の技術力も分かりますよ」
『技術力?』
「例えば服一着にしたって、縫製の仕方とかで技術力が高いか低いかは分かるんだよ。例えば繋ぎ目の無い服とか、縫い目の無い服とかな。そうやって服一枚でも分かる事は多い」
「イシスが死体を出してくれましたので、全て剥いでしまいましょう。それにしても変わった見た目の種族ですね? 今までにも何度か見た事がありますが、珍しいタイプの生き物ですよ」
『ヌンが珍しいって言うって事は相当に珍しいんでしょうけど、そんな奴等が大量に居る星なのよねえ。そういえば、ゴーレムのヌンとここのヌンは別でしょ? なのにすぐイシスのやろうとしている事が分かったのはどういう事?』
「ゴーレムに入っているのは私の分体ですが、情報の同期は一秒もあれば余裕で出来ます。なので戻ってきて一秒経てば状況は分かりますよ。私にとっては簡単な事です」
『一秒が分からないけど、たぶん一瞬で出来るって事ね。相変わらずだけど、反則的な存在だと思うわ』
「………よし! これで身包みが剥げた……っていうか、こいつら金を一切持ってないな。つまりは家を出される際に、無一文で叩き出された訳か。まあ、こいつらの自業自得だが、自棄になる気も分からんではない」
『女のアンゼルは胸が膨らんでるだけって感じね? 乳首は無いけど、どうやって授乳するのかしら? 本当に変わった種族だと思うわ』
バステトが何か言っているが、俺はスルー。
確かに体中がツルッツルで、男の方もそれっぽい棒があるだけだ。玉が無い。
どうなってんだ? こいつらの種族は?
「身体的特徴はともかく、金銭も無ければ自暴自棄になるでしょうからね。ワザとそうした可能性も否定できませんよ? あの愚かな女の親、もしくは村長辺りがそう仕向けた可能性があります。もしくはギルド長」
「そこまで考え始めると、困った事に犯人が多すぎる。俺達は村の外の者だ、それだけで殺してやろうってのは居る。古い時代なんぞはそんなものだし、村の外の奴等は全員敵だと考えていてもおかしくはない」
『分かるわ。里だって外から来たのは警戒されるからね。滅多に来る事なんて無かったけど、自分達が危険に晒される可能性があるんだもの、警戒するのは当たり前よ』
「それだけなら良いんだがな、連中はそうじゃない。悪い事があった際も、全部外から来た奴におっ被せるんだよ。あいつが来た所為で悪い事が起きたってな。で、叩き出すならまだ温情がある方だ。無い場合は殺してしまう」
「そこまで行くと、もはや生贄ですからね。悪い事の全てをその者に押し付けて、自分達は悪くないと言う為の生贄。古い時代が多いですが、発展した後も無くなりません。知恵ある者の癌みたいなものです」
「良性が悪性に変わるという意味でも、確かに癌と言えるかもな。受け入れる時は善意で、責任を押し付けて殺す時は悪意で。まさに癌と言われても仕方ない」
『何ていうか、碌なものじゃないわね。とはいえ里でも似たような事が無かったとは言えないのが……悲しいところかしら』
あの星の猫も知恵はあるからなぁ。
そういう意味では猫と犬も改造されてたのかもしれないし、獣人計画からそっちに移行した可能性はある。
そもそも軍の所の資料に、ゴブリンとオーガの改造なんていうのは無かったからな。
……あれ? もしかしてあそこって大国の領土だったのか?
小国があんな事をしてたんだし、大国が何もしてないって事は無いよな?




