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それでいいと思う

 キンドさんとはもう少し話したというか、俺やアイスラから見てのヘルーデンはどうですか? みたいな雑談を交わす。

 その中で、店の開店はもう少しあとになる、ということを聞いたので、ラックスさんたちにハルートたちと、知人に宣伝しておくと言っておいた。

 それと、魔物の買い取りについては、少し心配される。

 というのも、本来魔物は冒険者ギルドで買い取ってもらうからだ。

 それが一つの貢献や指針となって、冒険者ランクが上がる。

 要は、キンドさんが買い取りはするが、それでは冒険者ランクが上がらないと心配されたのだ。


「うん。まったく問題ありません」


 冒険者ランクを上げるためにヘルーデンに来た訳でも、「魔の領域」である森に入っている訳ではないからである。

 こちらとしては、ある程度金になれば、それでいいのだ。


 あとは、俺が独自に母上と手紙のやり取りができるようになっていることを伝えると、「もうですか? ……行動が予想よりも早いですね」と非常に驚いていた。

 なので、もし母上に早急に伝えたいことがあればそれで伝えられるので、その時は呼んでください、と言っておく。

 それに合わせて、定宿と化している宿屋「綺羅星亭」のことも教える。


 そうして話している内にいい時間になったので、また来ます、と言ってからこの場をあとにした。


     ―――


 翌日。朝食を食べにアイスラと共に食堂へ向かう。

 ハルートたちが居たので一緒に食事を取る。

 近況について話し、こっちはジネス商会を教えておく。

 ハルートたちの方は、冒険者ランクを早々に上げた方がいいと思うから上げないか? とマスター・アッドから提案されたのを受諾して、そのためにマスター・アッドからの直接依頼という形で、ヘルーデンの近隣にある町に赴いていたそうだ。

 移動には、馬車よりも速いので、ぐるちゃんとちーちゃんを使ったらしい。

 まあ、下手に見つからなければ別に構わない、というか、それもハルートの力の一つだと思う。


「しかし、冒険者ランクを上げた方がいい? なんか急な話に聞こえるが?」


「た、多分だけど、シークさんとサーシャさんのためだと思う。強さに見合ったランクにしたいのと、やっぱりランクが上の方になると冒険者ギルドで発言力が増すから」


「……? 強さに見合わせたいのはわかるが、そこにどうして発言力が関係してくるのかわからないな」


「あ、ああ……それは、その……」


 ハルートが言葉を濁すと、シークとサーシャさんが少しの怒りを含んで口を開く。


「『血塗れの毒蛇(ブラッディーバイパー)』の残党を、俺と妻が片付けた件が広まっていて、一部の冒険者パーティからの勧誘が煩いんだ。弱いハルートではなく、自分たちのパーティに来ないか、とな」


「どうやら、ハルートが弱いままだと思っているようなのよ。今も私と旦那で鍛えているから、少しずつでも確実に強くなっていっているのに。失礼しちゃうわ」


 なるほど。

 それは確かに煩わしいな。


「つまり、面倒な冒険者パーティが居る、と?」


「ああ。大半の冒険者は特にそういうことがないというか、『姐さんと行動を共にしていた人たちですよね。なんかわかんないことがあったら、なんでも俺らに聞いてください』みたいな感じで優しかったんだがな。姐さんって、アイスラさんのことだろ?」


「だから、私もヘルーデンの冒険者にはいい印象を持っていたんだけど……そういうのが居るとね」


「あ、でも、あれは少し前にヘルーデンに来た高ランクパーティだって聞いたな」


 ハルートがそう付け足す。

 う~む……こういうのも、俺が責任を取る範囲に入るのだろうか?

 でも、冒険者パーティを組んでいない俺が出張るのも違う気がする……が、このまま煩わしいのが続いて、シークとサーシャさんが怒りから暗殺能力を解放してしまうのも困る。

 ……でも、暗殺の場合だとシークとサーシャさんがやったとはわからない……いや、違う。

 二人が暗殺をしたくないと思っているのなら、尊重してやらせるべきではない。


 どうしたものか。


「ジオさま。少々席を外します。直ぐ戻りますので」


「え? うん。わかった」


 アイスラが席を立ち、食堂の外へと向かっていく。

 トイレ……いやいや、そういうことを考えるのは失礼だ。


「……ジオさ……煩わせ……許せま……」


 何か呟いていたが、それよりもアイスラの後ろ姿から少し怒りを感じたのは……気のせいだな、きっと。

 アイスラはそのまま食堂を出ていき……少しして戻ってくる。


「おかえり。アイスラ」


「ただいま戻りました。ご安心ください。ジオさまが煩わしく思う存在はもう居ません」


「ん?」


 この日の夜にハルートたちとまた食堂で会って夕食を共に食べるが、その時に煩わしく思っていた一部の冒険者パーティが大人しくなったというか、妙に礼儀正しくなって「姐さんの仲間にもう手は出しません」と言われた――ということを聞いた。

 言われた言葉と朝食時のことを思い出してアイスラを見るが、アイスラからは笑みを返されるだけ。

 アイスラが何かしたのかもしれないが……まあ、煩わしくなくなって礼儀正しくなったのなら、それでいいと思う。


     ―――


 それからさらに数日が経った。

 この数日の間にジネス商会・ヘルーデン店は開店したので、その日はキンドさんへ直接「開店おめでとうございます」と伝えに行った。

 ジネス商会・ヘルーデン店は連日多くの人が足を運んでいる。

 キンドさんは「では、ヘルーデンで一番の商店になるように頑張りますか」とやる気に満ち溢れていた。


 やる気に満ち溢れているのはハルートたちも同じである。

 連日依頼を成功させているそうなので、こちらが考えるよりも早くランクは上がっていくかもしれない。

 新しい冒険者というのはこれからも来るだろうし、早く煩わしさから解放されればいいな、と思う。


 ただ、こちらの方は芳しくない。

 中層の探索は続けているが、特にこれといったモノは見つけていなかった。

 すべてを巡った訳ではないが、手応えを一切感じない。

 中層は一旦通過して、深層の探索に向かってみるのもいいかもしれない、と考える。


 しかし、ここ数日の中層探索で一つ思うことがあった。

 いくら「魔の領域」と呼ばれる場所とはいえ、魔物との遭遇が多くなっている気がする。

 つまり、魔物の数が増えているのではないか? と思った。

一部の冒険者たち「「「ああんっ!」」」

アイスラ「これより、ジオさまが煩わしく思う者たちを矯正します」


※過激な描写となりますので、終わるまで花畑をイメージしてください。


一部の冒険者たち「「「これからは誰にも迷惑をかけず、健全な冒険者となります!」」」

アイスラ「よろしい」

作者「健全な冒険者とは?」

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