↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セブンスブレイブ・オンライン ~小鬼勇者が特殊装備で強者を食らいます~  作者: 月束曇天
第六章:大体作者が思いつきで始めて迷走する奴

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/271

第九十七話:腰を抜かすほどビビる相手

「……随分長いですね、ここ。移動の方がボス戦よりも面倒くさそうですよ」


「そう言うなよリン。マッピングも道中の敵の詳細も、全部デスペナ覚悟で偵察隊の人たちが頑張ったから情報が丸っと手に入ってんだ。

だから、こうしてなるべく敵が少なめかつ出来る限り最短でボス部屋に近い道を進めてるんだっての」


 第四都市解放レイドボス戦に繋がる、第四の迷宮。

 マップを見る限りじゃ普通のダンジョン四つ分はあろうかという程の長さで、初見なら心が折れそうだ。

 そんな迷宮の四分の一に差し掛かるところを、俺たち遊撃隊と雑魚狩り隊の混成部隊の半分が先行して歩いていた。

 道の分岐点は少なく、一本道をしばらく行ったところで二つに分岐する小部屋を通った後に、一つの道に戻るって程度だ。

 やや薄暗いので、接敵までは近づかないと難しい。

 だがまだモンスターに出くわしていないので、割と安心して進んでいる。


『遊撃隊、そちらでは何かあったか』


『何もねえ、アルトリアの方も後ろで異常とかは――』


『ない』


『さいですか』


 遊撃隊と雑魚狩り隊のメンバーを混成した舞台は、ボス攻略用の本隊を挟むようににして前後を歩いている。

 今現在先頭を歩いている七人のうち、遊撃隊のメンバーは俺、オリオン、リン。

 雑魚狩り隊から来たのは【モードレッド】、ユージン、【カステロ】、【ボルクス】の四人。

 モードレッドは王の騎士団、カステロとボルクスはアルゴーノートのメンバーだ。

 カステロとボルクスはアルゴーノート出身ってだけあって、ギリシャ人みたいな白い布と茶色のサンダルって出で立ちに加えて、頭には何か植物で作ったような冠をつけている。

 モードレッドはアルトリアに似た金髪と緑色の目をしていて、髪型は細部が違うって程度でそっくりに見える……けれど、目つきがちょっと悪いから顔を見れば間違えることはなさそうだ。


「フン……何故俺たちが雑魚狩りなぞを……!」


「兄よ、これもレイドボス戦は必要不可欠なことです。今は耐える時です」


「ボルクス。お前がそう言うのならば、甘んじて受け入れよう」


 自分が配属された場所が気に食わないのか、どこか苛立つカステロ。

 そんなカステロを兄と呼びながら諫めてくれる、優しそうなボルクス。

 リアルで兄弟なのかどうかわからないけど、少なくとも仲は良さそうだ。

 出来れば喧嘩とかはしないでくれよな、俺は仲裁よりも両成敗派だし。


「ま……雑魚だけブッ殺すのは楽で助かるぜ。

俺頭悪いからよ、ボス戦はスキルだけ使ってるか雑魚殺すのが好きなんだよ」


「なんとなく気持ちはわかるッスね。

俺も、一体のボスよりも多数の雑魚相手の方が楽しいッスよ」


 王の騎士団のモードレッド……コイツは一言で言えばバカ、らしい。

 装備の大半が攻撃特化で、防御性能はほぼないに等しい武装。

 全身ガチャガチャと音を立てる鎧のくせに、攻撃特化とか予想もつかねえ。

 AGIは多少上げてるみたいだが、それでも大して高くはないみたいだし。

 第三回イベントで起用されなかったのはランスロット曰く『ユリカの方が強かったから』らしい。

 全部ランスロットから聞いただけだからホントかどうかは知らんけど、嘘ではなさそうに見えてくる。


「おい、リーダー」


「なんだ? なんか見つけたのか?」


「……あぁ、暗くて分かりづらいが、前の方に六体いる」


「よし、倒そう」


 一体や二体なら、適当に引き付けて無視できるが……六体は無理だ。

 全滅させないと本隊の方に余計な消耗をさせかねないからだ。

 とか考えてるとオリオンは弓矢を取り出し、矢を番えて引き絞り始めた。


「よし……【エクスプロード・アロー】」


「この距離でか」


 俺たちがまだ視認できないくらいなのに、オリオンはもう矢を放った。

 他の皆ももう戦闘の準備はしているが、攻撃を放ったのはオリオンのみ。

 彼の放った矢は小さな火を纏って高速で飛んで行き――

 薄暗い一本道で、ドカンと爆発を起こした。


「よし……まずは1」


「すげえ、見えねえのに当てたぞ」


「オリオンさんには見えてる……んッスかね」


「あぁ、俺には見えてるぜ……キッチリな! 【ビーストブレイク】!」


 オリオンは驚くモードレッドとユージンに応えながら、第二射を放つ。

 名前からして獣に強いであろうその矢は風を切りながら飛び、ドシュッ! とクリティカルであろう音と共に、敵との距離が近くなってきたことを俺たちに知らせる。

 恐らく第一射でこちらに気付き、走って向かってきてるんだろう。


「2」


 オリオンが新たに矢を番えていると、四体の狼の姿が見えて来た。

 俺たちでもしっかり見える距離となると、もう狙撃をするより俺たちが攻撃した方が早いだろう。

 ので、俺は盾を前に構える。


「接敵まで後二秒ほどか、ボルクス!」


「殺します!」


「まぁ待てよ……【流星弓】!」


 オリオンの第三射目の弓は、俺も持つ流星シリーズの弓矢。

 淡い青のオーラを纏う星々と矢が二体の狼を吹き飛ばし、その軌跡を残した。

 ……あと二体か!


「はぁぁッ!」


「でぇぃっ!」


 カステロはチャクラム……のような刃付きの円盾を投擲。

 それは狼の喉元に命中、すかさずボルクスが怯んだ狼に向けて繰り出した斬撃がクリティカルヒットしてHPを大きく削る。

 ……よし、俺も負けてられねえな!


『ガァァッ!』


「ふっ、モードレッド! 頼んだぜ!」


「任せな!」


 飛び掛かってくる狼の噛みつきを盾で受けとめ、モードレッドに向けて蹴っ飛ばす。

 俺のパスを受けたモードレッドは瞬く間に両手剣を二回振るい、狼のHPバーを削る。

 そこへ、弓からこん棒に切り替えたオリオンがやって来て――


「潰れろォッ!」


「うわ」


 ドゴォッ、と鈍い音と共に狼の頭部を粉砕した。

 バリン、とガラスが砕け散るような音と共に狼は素材及び金となって消えた。

 ……カステロとボルクスの方も、ユージンがトドメを刺して終わらせたようだ。


「よし、皆特に消耗はしてないか?」


「矢を三本使ったくらいだし、特に問題はないぞ」


「こっちも問題はないぜ。むしろ、ギアを上げるのに丁度いい」


「フン、この程度の戦闘で消耗する雑魚はいるまい」


「言い方……」


「出番も消耗もナッシングッス」


「私なんて、動いてすらないですけどね……アハハ」


 ……この迷宮での初戦闘だが、特に何か起こることもなく終了した。

 ついででオリオンの弓矢の火力が異常なことと、リンが寂しそうなことがわかった。

 まぁ、出番なしってのもアレだよな。


「なんだリンの嬢ちゃん、戦えねえとつまんねえか」


「私だって、ちょっとは役に立ちたいですよ」


「んじゃ、次出た時はよろしく頼むぜ」


「ホントですか!?」


 さっきとは打って変わって優しい声色のオリオンの言葉に喜んで目を輝かせ、ぴょんぴょん跳ねるリン。

 ……後ろの方に敵が出てないか、一応連絡はしておくか。

 と、俺はカオスにボイスチャットを繋ぐ。


『そっちになんか出たりしてないか』


『あぁ、虫が出たから少し倒して、後は凍らせといた』


 後ろの方に行かなくて良かった、と心底思った。

 つーか、虫が出るとか聞いてねえ……いや、まぁ出会わなきゃいいんだ。

 もし万が一、奥が一、兆が一にでも出会ったら味方に任せりゃいい。


「リーダー、次来るぜ」


「え、もうかよ!」


 さっきの狼からの戦闘からそんな経っていない。

 となると、ここからモンスターがうじゃうじゃと出てくるってわけか? 偵察隊は道中の敵はどんなのがいるか、とだけしか知らないと言っていた。

 頻度やどこから出るかなんて、明確な事は知らなくても仕方ないか。


「よーし、今度こそ私の番ですね!」


「おう、任せたぜ! リンの嬢ちゃん」


 オリオンは矢を取り出す素振りも見せず、リンを前に向かわせた。

 と思ったら……弓を取り出してこん棒を番えてやがる。


「……オリオンさん、何してるんッスか」


「敵の数は七体だし、一体くらいいいかなって」


「いや、そうじゃなくて。なんでこん棒を番えてんだ!?」


 こん棒を矢の代わりにして弦を引き絞るとか、見たことねえし聞いたことねえ!どんなパワー馬鹿なら出来んだよ、そんな芸当……!


「エクスプロード・アロー!」


「えー……」


 ポカーン、と口を開けたままのユージンを傍にオリオンはこん棒を射出した。

 すると、それはリンが走って行った位置からほんの少し逸れた軌道を描いて――


「わ!」


 リンの驚く声と共に、爆発した。


「さ、今度の敵はスケルトンたちの群れだ。期待してるぜ、リーダー!」


「お前なぁ……!」


 オリオンのこん棒による射撃で、五体のスケルトンがこっちに向かってきた。

 内二体は盾を持っていたであろう左腕と、武器を持つ右腕が片方ずつ砕けていた。

 あぁ、オリオンが倒した奴の爆発に巻き込まれてたのね……哀れ。


「よし、武器を持たぬ方を倒すぞ」


「了解!」


 カステロとボルクスの二人は走り出し、右腕がもげたスケルトンに斬りかかった。

 モードレッドは端っこの方にいる剣と盾のどちらも持つ方に剣を向けている。

 ……ユージンもいつの間にか動いていて、盾を持たない奴の首を刎ねていた。


「俺も負けるか!」


 そうだ、リーダーなんだから……バシッと決めねえとな! 俺は兄弟が二人がかりでスケルトンに挑むせいで余った二体――そこに狙いをつける。


「フェニックス・ドライブ・マルチ!」


「転がれ!」


「ハッ!」


 二人が盾しか持たないスケルトンを倒したところで。

 ボルクスに近づくスケルトン、オリオンに近づくスケルトン。

 そのどちらにも当たられるように二体の不死鳥を象った炎を放つ。

 カステロのおかげで、ボルクスには当たらず済んだ。


「……危ないですよ、兄に当たったらどうするつもりだったのですか」


「避けるって信じてたからだよ。あと軌道は俺が操作できるし」


 初対面の奴だけど……まぁ、これくらいなら避けるとは思った。

 別に当たっても致命傷にはならないだろうし、そん時は俺のポーションをあげるだけだ。


「リンちゃんはどう……って、どうしたッスか」


「……なんで、こうなったんだろう」


「何があったんスか……あっ」


 スケルトンの群れに飛び込んで姿がやや暗くなっていたリンに追い付くと。

 リンはため息をつきながら、如何にもガッカリしてるような雰囲気で体育座りをしていた。

 何があったのか……と俺も覗いてみると。


「ご、ごめんッス……わざとじゃないんッス……」


「わかってます……ハハ……」


 どうやら、ユージンは盾を持ってない方を倒した時。

 調子に乗って持ってた剣の片方をそのまま投擲したようだ。

 すると、それがリンと戦ってたスケルトンの頭にヒット。

 刺さった剣は地面にカランと音を立てて、リンの悲しみを訴えて来るようだった。


「ハハ……やっぱり、私が弱いだけみたいですし……アハハ、もう帰りたい……」


「雑魚と戦えぬ程度で何を落ち込むか。くだらん……」


「兄よ、世の中にはそれを楽しむ者もいるのです」


「そうだそうだ、戦うのはおもしれーぞ」


 カステロが無神経なことを言ったせいで、リンが更にしゅーんと落ち込み始めてきた。

 オリオンはこん棒を拾いながら、無言でリンの肩に手を置いて慰めていた。

 なんだか、急に不安になってきたな……リンがすっかり自信を無くしてしまってる気がする。

 仕方ない、メンバーを慰めるのも隊長の責務ってやつですかね……。


「リン、元気出せ。お前は十分強いし、役に立ってくれるよ。

アーサーはそれをわかって、ここにお前を呼んだわけだしな」


「……ありがとうございます、ちょっと嬉しくて元気出ました」


 単純か! と言いたくなるくらいに態度が変わり、リンは立ち上がった。

 まぁ、元気でいてくれることは何よりだけども。


「よし、この調子でどんどん進んで行こうぜ」


「おう! 仕事はキッチリ果たさねえとな!」


 俺の声にモードレッドが応えた所で、進軍は再開した。

 本隊や殿とは定期的に連絡をしつつ、雑魚が湧けばたまに倒し、たまにスルー。

 そんなことを続けて一時間程経ったところで、中ボス部屋に。


「……ここが中ボス部屋ッスね。如何にもって感じッス」


「情報によれば、ここに出る中ボスはランダムのようだな」


「偵察隊が三度以上も下見に行ってくれたおかげですね。

デスペナルティはすさまじい物でしたが……」


 カステロとボルクスが感心したように言うが……俺は緊張しながら扉に触れる。

 中ボス……大した強さじゃないとは言えど、本隊に消耗をさせてはいけない。

 そのためには、俺たちが出来るだけ速攻で倒すことが必要なのである。


「随分デカいな……よし、俺に任せてくれ」


「俺も手伝うぜ、オリオン」


「んなら、俺も」


 と、真ん中にオリオン、左右に俺とモードレッドが散って扉を押す。

 かなり硬い……初めてSBOのダンジョンに行ったあの日を思い出す重さだ。

 腕で押してるだけじゃ、いつまで経っても開く気がしない。


「ッ……! かってー、これじゃ開かねえな」


「特別なキーは必要ないって情報のはずだしなぁ……」


「STRの問題じゃないのか」


 ピクリとも動かない扉に、俺たち三人が悩んでいると。

 リンが『何やってんだコイツら』って顔で、壁の方を指差していた。

 扉のすぐ近くだったので、見たつもりでいたが見ていなかった。


「コレ……七人で押せって書いてますけど」


「すまん」


 そりゃ、どれだけ押しても開かないわけだ。

 と、納得しながら俺たちは七人がかりで押すと扉はすんなりと開き、扉の奥の松明の炎に部屋が照らされる。


「……確認できている情報じゃ、スケルトンかゾンビか熊だったよな……」


「確かそうだったッスね、まぁでも何が来たって怖くは……お?」


 ドシャッ、と天井から落ちるように出て来た中ボスモンスター。

 HPバーを三本持ち、現実で出会えば失禁不可避のサイズに、気色の悪い色をした――


「蜘蛛だな」


「情報になかった敵ですね……」


「まずは攻撃パターンを見極め、その後はそれを凌ぎながら倒すぞ」


「兄よ、その役目は我らで受け持ちましょう」


「……ところでよ、なんでリーダーは固まってんだ? おーい?」


 オリオンとユージン省く四人がボスを前に抜刀していた所で。

 俺は身の毛がよだち、ガタガタと震えてその場から動けず、へたり込んでしまった。

 動かなきゃいけないとわかっていても、本能的恐怖がソレを上回ってきた。

 巨大蜘蛛……即ち虫、つまりは……つまりは。


「あ……あぁ……あああああ……! こ、これ、む、無理……だ……!」


 腰を抜かすほど、ビビる相手だった。

プレイヤーネーム:ブレイブ・ワン

レベル:60

種族:人間(ヒューマン)


ステータス

STR:80(+110) AGI:100(+95) DEX:0(+20) VIT:40(+165) INT:0 MND:35(+100)


使用武器:小鬼帝の剣・改、小鬼帝の小盾・改

使用防具:邪竜のハチガネ、小鬼帝の鎖帷子・改、小鬼帝の鎧・改、小鬼帝のグリーヴ・改、悪魔ズボン(黒)、アダマンタイトガード、回避の指輪+2

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。