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乃々宮莉亜瑠の殺戮事情  作者: 堕天使 黒猫
13/14

死の天使 Full version〜1〜

そう遠くはない昔の(はなし)

従来語り継がれている死の天使の物語とは、ほぼ180度違う噺。

古めかしいが、こう語り始めよう。

今は昔、と。

✙✙✙✙✙✙

今は昔、冷酷で残忍な少女がいた。

いつもいつも、狂ったように笑い続けていた。

彼女は両親を殺し、友達を殺した。

その死体を前にして、少女は嗤っていた。

「あはははっ!はは、ふふふふっ」

村人は、彼女をこう呼んだ。

《死神》と。

誰も少女に近付かない。

それが少女にとっては嫌で、自分を避ける人を殺して回った。

やがて村人は、少女に恐れをなして別の村へと移っていった。

村に自分以外の人間が居なくなった少女は、寂しさのあまり泣き叫んだ。

少女は、孤独が嫌だっただけ。

少女は、ただ寂しかっただけ。

それが歪んでしまった結果として、人を殺してしまった。

殺している最中(さなか)は、孤独を忘れられたから。

血で汚れた自分を見て、再び少女は泣き喚いた。

やがてそれは地を震わすような絶叫に変わる。

少女の心にあった寂しさは、憤怒となった。

何故、皆自分を避ける?

何故、皆自分を拒む?

何故、皆自分を見下す?

嗚呼、腹立たしい。

少女は村を転々としながら、殺戮をし続けた。

少女にとっては報復で、村人にとっては恐怖だった。

いつしか初心を忘れ、少女はただの殺戮機械(しにがみ)となった。

少女の前に、死の天使と名乗る少年が現れた。

「君と一緒に居てあげる」

少女は、戸惑った。

今迄嫌という程の人間を見、殺してきたが、こんな人は初めてだった。

「大丈夫、僕も殺人者(おなじ)だよ。だから、君を怖がらないし、ずっと側にいてあげる」

死の天使は、微笑んだ。

表面上は優しいが、陰で北叟(ほくそ)笑んでいた。

それに少女は気付かずに、死の天使を信じ込む。

「私と…ずっと一緒に居て?」

「うん。ずっとずっと、ね。約束」

少女は微笑み、死の天使が差し出した小指に自分の小指を絡めた。

それが、契約の言葉であることも知らずに。

それからは、二人で殺戮機械(しにがみ)となった。

少女は一緒に居てくれる少年(しのてんし)を、とても大切に思ったいた。

正体を隠して行ったとある村で、二人は目撃した。

1人の少年を、大人数で虐めている現場を。

それもわざわざ、人通りの無い場所を選んで。

「ねぇ…どうして、あんなことをするんだと思う?」

少女は、死の天使に尋ねた。

「自分より、劣っていると考えているから、だろう」

違う、と少女は言う。

「あの、虐められている方のこと。どうして、黙って蹴られているの?」

それが少女には、不思議でならなかった。

「ねえ、どうして?殴り合いで勝てなければ、ナイフでも金槌でも鉈でも、持って来ればいいのに。黙って我慢しているだけになる必要なんて、ない筈」

暫く黙って、死の天使は口を開いた。

「本人に、聞けばいい」

名案よ、と言って、少女は少年に近づく。

死の天使はその間、村を周遊した。

そしてさっきの疑問をぶつけた。

「自分がされて嫌なこと、だからかな。きっと、あの人達は分かってないだけだから」

「何を?」

少年は、傷だらけのまま笑顔を見せる。

「人を傷付けることの、辛さ」

少女は目を見開く。

そんなこと、考えたことなどないから。

「人を傷付けるなんて、簡単よ?辛さなんて…」

「じゃあさ、自分が傷付けた人を忘れられる?」

勿論、と言いかけて、少女は気付いた。

自分が殺した人の顔が、次々と浮かんでは消える。

誰1人忘れてはいない。

「あ、れ?」

思わず少女は声を漏らす。

忘れられないのは当然、少女は殺人を愉しんでなどいないのだから。

そう、だ…私は、寂しくて────

人殺しは、望んでない。

ただ、本当に寂しかっただけ。

「───寂しい、の」

少年は、少女の身の上話を聴いた。

少女が人を殺したことも、臆せずに聴いてくれた。

少年は、少女を抱き締めた。

「同じだよ。僕も──寂しいんだ」

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