莉亜瑠と穂露
私は、血濡れのガラスの破片を持って考えた。
状況を確認する。
まず、自室で私は返り血で真っ赤に染まっている。
眼前には、ピクリとも動かない殺し屋の男。
何故か私を狙っていた殺し屋を何故か返り討ちにする私。
不思議ばかりだ。
「派手にやったな。さすが、死の天使」
死の天使?
それはなんだ。
というか、何故この部屋に生存者がいるんだ。
私は普段の男喋りを抑えて話し掛ける。
「あなたも殺し屋?」
返答次第では殺さなくては。
「ん、まぁな。ああ、安心しろ。お前を狙ってなんかいない。死の天使に挑むなんて出来やしねぇ」
「ねぇ、貴方の言う死の天使って何?」
私は少年に問う。
銀色の髪にワインレッドの瞳。
意外に若く、顔立ちが整っている。
だが、無表情だ。
「知りたいか?なら、教えてやろう、ついて来い」
私は少年に一目惚れした。
もっと知りたいと思った。
だから、素直について行く。
裏口から外に出ると、雨が降っていた。
少年は構わず歩いていく。
「あ、あの、濡れてしまいますよ?」
少年はまるで聞こえていないかのように歩き続ける。
このままでは見失ってしまう。
少し躊躇ったが、私は雨の中を歩く。
到着したのは、廃墟だった。
「お邪魔しまぁす」
一応挨拶。
「風呂、貸す。先入れ」
なんか、誘拐された気分。
「いえ、それより早く死の天使の話をしてください。あ、私は乃々宮莉亜瑠です」
「りある、か。変わった名前だな。俺は乃木坂穂露。俺も名前が変わっているだろう」
私は急かす。
「早く話して下さい。乃木坂さん、私のことを死の天使って呼んでましたよね?」
「穂露でいい。そんなに知りたいなら、話してやるが、少々長くなる。先に風呂に入らないか?」
私が断ると、穂露さんは語り出した。
一世紀くらい前のお話。
ある少女は両親に見捨てられ、孤独で、全ての笑っている人が嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで仕方なかった。
だが、いくら殺したいと思っても、少女にそんな力は無かった。
少女はある女の子に出会った。
女の子は、死の天使だった。
死の天使は言った。
「貴方に力をあげましょう。貴方の望みを叶えましょう。貴方と貴方の子孫へ、私はずっと取り憑きます。貴方をもう、孤独にはしません」
少女は自身を蝕む孤独から逃れるために、死の天使に、取り憑かせた。
それから少女は殺意を抱くたびに死の天使に乗っ取られ、殺意を抱いた相手を殺すようになった。
死の天使を恐れ、少女の周りに人は寄らなくなった。
だが、ある少年はそんな少女を支えた。
その少年に、少女は恋をした。
少年のおかげで少女は殺意を抱かなくなり、それから誰1人殺さなかった。
「だが、死の天使はまだ生きて取り憑いている。その少女の子孫が莉亜瑠だ」
確かに私は殺し屋に殺意を抱いた。
「恐らく莉亜瑠が返り討ちにした殺し屋も、死の天使のことを知って殺しに来たんだろう」
私はしばらく沈黙した。
「莉亜瑠は、独りなのか?」
私は頷く。
「なら、この家に住め。どうせ戻っても死刑だ。いいだろう?」
私はもう一度、頷く。




