27話 いつも通りの
「早っ! わかったの?」
「ええ。面白い謎でした!」
愛は、興奮を抑えて、説明をし始めた。
「注目するのは漢数字で書かれていることです。これは、漢字に着目しろというメッセージじゃないでしょうか。矢印の左側の漢数字の一、四、七、十というのは、それぞれ、十二支の一番目の子、四番目の卯、七番目の午、十番目の酉ということを表しています」
すると、愛はショルダーバッグからメモ用紙とボールペンを取り出し、そこに子、卯、午、酉と書いた。
「これらの漢字から連想される、矢印の右にある数字との関連は何でしょうか?」
叶はメモ用紙を覗いて、少し考えた後、納得してこう言った。
「あ、画数だ」
「ええ。子は三画、午は四画、酉は七画です。なら、卯は?」
再び叶に問う。だが、一切の困惑もなく、すぐに答えた。
「五画! だから、?は五ね!」
それを言った途端に立ち上がり、希の部屋に駆け込んだ。
「ようやくわかったの」
勉強机に向かっていて気怠げそうな希が問うた。
「?は五じゃない?」
「……正解。もうクリアしちゃったよ」
そして希は机の引き出しから、携帯ゲーム機を取り出し、叶に返した。
叶が去っていった後、叶は大きな伸びをしながらこう呟いた。
「愛さんを呼ぶのって、ズルじゃない?」
◇◆◆◆◇
「やっと帰ってきたか。不良め」
「あなたに言われたくはありません」
愛が帰ってきたのは、九時を越えた頃だった。
「何作る?」
とりあえず二人はキッチンに移動した。
やけに広いキッチンで、二人はエプロンを着けた。
「で、食材、あるんですか」
愛は怪しそうに問う。
「一応、買ったんだけど……」
愛美は、自信なさげに冷蔵庫を開く。
愛はそれを見て、はっと驚いた。そして、変わらない様子の姉に、呆れた。
冷蔵庫の中には、自分でも使わないような種類の調味料があり、少量の野菜があり、また多めの肉があり、その他いくつかの食材があった。
「はぁ。この分野は私のほうがセンスあります」
「流石にね……」
愛は冷蔵庫の中を一通り見回して、作る料理を考えた。
「そうですね。多少野菜が少ないかも知れませんが、鍋にでもしますか?」
「いいね。じゃあ、私肉切る」
「大きさには気をつけてくださいよ」
広いキッチンに二つのまな板を広げ、役割分担を決めた。
愛は、先にボウルに水を張り、それに乾燥している麩を入れた。これは、鍋の出汁を吸わせやすくするための手順だ。
野菜室から白菜、ネギ、大根などを取り出し、適切な大きさに切り始める。
今までに培った技術のお陰で、野菜を切るのにたいした苦労はしない。五分ほどで、野菜の全てを切り終えた。
愛美は、パックから鶏モモ肉、豚バラ肉を取り出して、切り始めた。
愛とは対照的に、包丁の扱いは下手で大きな肉を切るのに苦戦している。
そんな愛美を横目に、愛は次の作業に移る。
さほど大きくない鍋に水を張り、加熱し始めた。そして、白菜の芯の部分や、大根を入れた。
愛美の作業が終わるまで待ち、先に鶏モモ肉を入れる。スープの素も同時に。
煮込んでいる間に、木綿豆腐を切り、しらたきを準備する。
スープが湧いてきたので、切った木綿豆腐、しらたき、白菜の葉も入れた。
もう、鍋らしい見た目である。
肉を切り終えた愛美は、もやしを準備する。
と言っても、もやしは特に切る作業もなく、野菜室から二つの袋を取り出し、他の具材が煮えきるのを待つだけである。
「もう美味しそうだね」
「ちょっと白菜が少なく見えますが、許容でしょう。豚バラ入れますね」
沸騰してきた鍋に、豚バラをゆっくり下ろしていく。
少しづつ色づいた豚バラを見て、最後にもやしを入れ、完成である。
愛が隣の広い部屋の大きなテーブルに鍋敷きを敷き、愛美が鍋つかみを使って運ぶ。
テーブルに箸と呑水を置いて、手を合わせる。
「「いただきます」」
広すぎるリビングに、二人の爽やかな声が反響した。




