お分かりいただけただろうか? 5
怪異はすべて消え失せた。
どこか現実感がなく、心臓がバクバク高鳴っている。
悪い夢でも見ていたみたいだ。
「目黒くん! 大丈夫!?」
乙希が駆け寄ってくる。
彼女の声が暖かった。
助かったのだという安堵が込み上げてくる。
「あ…」
言葉にならない声が漏れる。
だが──。
「そこの君! 何してる!!」
突如、怒声に似た声が投げかけられた。
次にまばゆいライトの光。
いつの間にか、パトカーの姿があった。
パトカーから降りた警官たちが、土手の中間にいる乙希に、ライトを浴びせてきたのだ。
「こんな夜更けに何をしてるんだ?」
二人の警察のうち、ひとりが問いかけてきた。
「えっと、あの…」
「駅から来たんだよね?」
「…はい」
「じゃあ、何をしたか覚えてる?」
その問いかけで、圭祐は状況を察した。
警官たちはたまたま通りかかったのではなく、電車の中で食材をばら撒いた乙希を捜していたのだ。
「一応は…」
「食材を投げ捨てたのは君でいい? 駄目じゃないか」
「すみません」
乙希が丁寧に頭を下げて謝った。
彼女は自分を助けるために頑張ってくれたのだ。
警官に責められて申し訳ない気持ちになる。
「あの! 彼女は俺を助けてくれただけなんです!」
圭祐は土手を登って、乙希と警官の前に割って入った。
「信じられないかもしれないけど、お化けがいて──」
「女の子が、こんな夜にひとりで、危ないでしょ」
「──え?」
「名前と学校を教えてもらえる?」
警官が乙希に尋ねる。
目の前にいる圭祐には、目もくれなかった。
「あの! すみません!」
圭祐は大きな声を出して、警官の目の前に立った。
けれども彼らの視線は、こちらを向かない。
どくん。
心臓がひとつ鳴った。
頭の隅に何かが棘のように引っかかっている。
あの怪異は何だったのだろうか?
乙希は「オクリヌシ」だと言った。何を送るのだろうか?
そして、奴らは死体に反応した。
乙希には目もくれずに、死体と自分にだけ反応を示していた。
「じゃあ、まずは謝りに行こうか。そのあと、家まで送っていくから」
警官は乙希にだけ話しかけて、そのまま踵を返した。
「待ってください!」
圭祐は反射的に警官の服を掴んだ。
掴んだつもりだった。
確かに触れることはできる。
しかし、意に反して服の形すら変えることが出来なかった。
まるで石で出来た彫刻のように硬い。
圭祐はまじまじと乙希の顔を見た。
彼女は複雑な表情をしていた。
そして、衝撃の事実を告げる。
「もう気づいていると思うけど…」
どくん、どくん。
「君は、すでに死んでいるの。一週間前に……」
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