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千年の森の魔女と魔法の剣  作者: 叢咲ほのを
第1章 西の街へ
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8.西の街『フィックス』

俺は盗賊に扮した傭兵たちを倒した返り血を川で洗い、血のりのついた服を取り戻した馬車の中にあった自分の服に着替えた。ニーナが復元してくれた高回復薬ハイポーションは丁寧に梱包し、馬車に乗り3人で西の街へ向かうことにした。


フレイムソードは普段は異次元空間?に格納されている。そのため剣士の俺が手ぶらになってしまい逆におかしな状況になっている。そこで傭兵の持っていたショートソードを1本もらい、それを腰から下げておく事にした。そもそもその辺の敵ならこの剣を使えばいいだろう。というかフレイムソードが必要な戦闘ってどんななんだ?力の桁が違いすぎて、使い方がまだわからない。


それとニーナとパンドラと3人で話したのだが、ニーナが魔法使いであることと、パンドラが吸血鬼であることは、他の人間には秘密にしておこうという事になった。

強すぎる力に対して、敵意を持つもの、利用しようとするもの、面倒な人間ばかり現れるはずだ。

ただの人間のふりをしていれば、普通に街の中で生活もできるはず。

二人の目的は楽しく旅をすることらしく、それはすぐに同意してくれた。


これまで何度も人間の街を訪れたことのあるパンドラも、今まで自分が吸血鬼であることを秘密にして生きてきたらしい。

そりゃあそれが知られたら人間界はパニックに陥るだろうし、パンドラもその後人間と接することはできなくなるもんな。


しかし、だとしたら一つ不思議なことがある。初対面の俺に対してなんでパンドラは正体を隠さなかったかという事だ。

でも、もしあの時俺が敵意を持ったなら即座に殺すのも容易だっただろうし、ニーナの魔法で記憶を改ざんすることも可能だろう。

変な反応をしなくてよかった。

パンドラ曰く、俺には自分の正体を伝えたかったらしい。

自意識過剰かもしれないが、そんなパンドラの気持ちが分からないでもない。俺自身この二人に対して仲間意識が芽生えているからだ。

高回復薬ハイポーションの話だって誰にも話してはいけないと言われている極秘任務だが、この二人なら大丈夫だと思って全部話してしまった。

これが上司に知れたら大目玉だろう。


これから訪れる西の街でのことをいろいろと打ち合わせができたところで、俺たちは西の街に辿り着いた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


さほど高いとも言えない壁に囲まれたこの向こう側が、西の街『フィックス』だ。

王国の首都『セントラール』と比べれば断然小さいかもしれないが、交易で発展したこの街は、王国の中でも大きな都市の一つだ。

領主宛ての荷物を預かっているという紹介状を門の守衛に見せ、俺たちを乗せた馬車は街の中へ通してもらった。


「ほー。この活気は久しぶりだな。」


ずっと森で過ごしていたニーナは、街に人があふれている様子を馬車から楽しそうに眺めている。

街を案内したい気持ちもあるが、俺はとりあえずはさっさと領主に高回復薬ハイポーションを届けてしまいたい。またこれを狙って襲われるなんてこりごりだから。


「どうするニーナ?俺はこのまま領主の館へ向かうが、お前たちは街を散策してみるか?」


「いや、私も一緒に領主の館に行こう。」


「そ、そうか。」


ニーナがそう言うならパンドラも一緒だろう。

この二人を連れてって何か言われないだろうか?

仲間だと言えばいいか?実際強いし。

というか一つ気になっていることがある。


「ニーナ・・・、一つ確認だけど、おまえお金ってどれくらい持ってる?」


「そんなの持ってるわけないだろ?ずっとそんなものは必要ない生活をしてきたんだから。」


「パンドラは・・・?」


「私は多少持ち合わせはあるけど、大した額は持ってないわよ?」


やはり…。だとしたら森から連れ出した手前、俺がニーナの食費や宿泊費を出さないといけないか…。俺だってそんなにお金に余裕があるわけじゃない。食費を切り詰めて生きていくしかないか…。

ニーナの魔法ならいくらでも金貨を作り出せそうだけど、人間のルールに違反してるしな…。


「魔法で金を作れと言われてもやらないぞ。今の世界の秩序を壊さないようにやっていくつもりだからな。」


心を読まないでください。でもまあなんとかなるだろう。


「ああ、もちろんだニーナ。とりあえずさっさと領主に荷物を届けて、それから今夜の宿を探そう。」


そうして俺たちは街の真ん中を走る街道を抜け、丘の上に見える領主の邸宅へ向かった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

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