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千年の森の魔女と魔法の剣  作者: 叢咲ほのを
第7章 バスク帝国の冒険者たち
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118.バーンVSザンキ 2

 バーンとザンキは闘技場の真ん中に向かって歩き出す。そして約20mほどの距離を開けたところでお互いに立ち止まった。


 バーンは相手の奇妙な剣に目を奪われていた。

 黄色い光をぼんやりと放っているそれは、とても剣と呼ばれる形をしていなかった。

 ギザギザの刀身。

 だが剣も真っすぐの形の物ばかりではない。大きく弓状に反ったシミターと呼ばれる剣や、敵の剣を折るために複雑な引っ掛ける形状を持ったソードブレイカーと呼ばれる剣などがあることもバーンは知っていた。細かいギザギザがついていて、治りづらい切り傷をつける剣もあるという話も聞いた事がある。だからこの対戦相手の持つ剣の形も何か意味があるはずだ。変わった剣を使う奇術師ではない事はすぐに理解する。

 バーンはフレイムソードを真正面に構えた。


 ザンキも同じように、バーンの持つフレイムソードに注目していた。

 見るからに立派な剣だ。その大きな刀身は半透明で向こうが透けて見える。ガラスや水晶でできているのだとしたら、戦闘に使うにはもろすぎる。だとしたらそれは観賞用の工芸品の剣だろう。実戦向きの剣だとしたらそれはなんの材質で出来ているのか?今まで知られていない未知の材質だろうか?普通考えれば、前者である可能性の方が高い。しかし今回自分が指名された理由を考えれば、相手が見掛け倒しであるはずがない。つまりこの男は、今まで知られていない未知の材質で出来た剣を持っているという事だ。

 ザンキも油断することなく剣を構える。


 試合前からザンキは考えていた。

 この試合はセントラール王国との交流試合だと聞いていた。だとしたら、相手の良いところも引き出しながら戦うべきだろうかと。観客が盛り上がる良い試合を繰り広げた後、最後に確実に自分が勝つような戦いをするよう求められているのではないかと考えていた。しかし自分を指名したはずの皇帝からは、細かい指示は何もなかった。それは言わなくても分かっていると思われたのか、それとも相手のプライドなどは気にせずに一撃で決めて良いからなのか?

 その迷いは入場してからも変わらなかった。だが対戦相手と対峙したこの瞬間、ザンキは感じた。

 手加減をしてまで確実に勝てる相手ではないという事を。


「もし間違っていたら、細かい指示をしなかった陛下アンタが悪いんだぜ」


 ザンキは独り言をつぶやく。

 その声は向かい合っているバーンにも届かない。ただザンキが戦闘態勢に入るのを察してバーンも身構える。

 ザンキは躊躇することなく、いきなり最初からその最大の攻撃を繰り出した。


「食らえ!『貫く雷鳴シューティングクラップ』!!!」


 ザンキが正面に剣を突き出した瞬間、その刀身からバーンに向けて雷撃が飛び出した。


 ドン!


 まぶしい光と共に轟音が轟いた。


「な?」


 雷撃の光が消えた瞬間、目に映る光景にザンキの口から変な声が漏れる。殺さないよう手加減をして放った。だが運が悪ければ心臓が止まるレベルの雷撃のはずだ。だが目の前には、剣を振り抜いた格好のバーンが立っていた。

 なぜ倒れていない?

 ザンキの頭の中には疑問が渦巻いていた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 闘技場に入場してきた二人を、アルベルトたちは見下ろしていた。正面の白壁スクリーンには、拡大された二人の姿が映っているが、その姿は小さくても臨場感のあるのは生の姿の方だ。


 アルベルトはザンキの剣を知っていた。

 だからこそ、ニーナたちには絶対に秘密にしていた。ザンキの剣は雷撃を発生さえることを。

 その射程距離は数十メートル。その命中精度は一般の魔法使いの魔法よりもはるかに高い。ザンキの剣は、普通の剣から連想される近距離戦闘用ではなく、遠距離攻撃用の武器なのだ。

 バーンが火球ファイヤーボールの魔法を得意としていることをアルベルトも知っていた。だからザンキの剣の能力を知られたならば、先に火球ファイヤーボールによって攻撃されるかもわからない。そうなれば勝負は分からない。射程距離の長い方、もしくは先に攻撃した方が勝つであろう。

 しかしザンキの剣の能力をバーンが知らないままであれば、剣闘と言われ接近戦を挑もうとするだろう。そうなればザンキが先に雷撃を放ち勝利することは間違いない。ずるいようだがこれも戦略だ。


 中央に向かって歩き出した二人は、20mほどの距離を開けてお互いに立ち止まる。いいぞ!ザンキの距離だ。そして二人が構える。この間合いなら、バーンがダッシュして距離を縮める前にザンキの攻撃が決まるだろう。ザンキが構える。刀身がさらに光り出す。いいぞ!今だ!やれ!アルベルトが心の中でそう叫んだ瞬間、ザンキの剣先から雷撃が飛んだ。


「よしっ!」


 アルベルトがこぶしを握った瞬間、バーンに真っすぐ向かった雷撃は、跳ね返り空へ向かって飛んで行った。


「えっ?」


 スクリーンには、剣を振り終えたバーンの姿が映っていた。


「いいぞバーン!見たかアルベルト?」


 興奮するニーナと、一瞬の出来事に何が起こったのか分からないアルベルト。

 アルベルトはニーナに尋ねる。


「な、何が起きたのですか?」


「見てなかったのか?バーンが雷撃を打ち返したんだ。あれは私が教えてやったんだぞ!」


「雷撃を打ち返した?」


 ニーナは、誇らしげな顔でアルベルトに説明を行う。

 だが、ニーナの説明を聞いても、アルベルトには理解ができずにいた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「びっくりした~」


 それがバーンの感想だった。

 まだ十分に距離が離れていて、お互いの攻撃圏内には入っていないはずだった。何か来る!バーンの第六感が何かを察知し、慌てて剣を振りかぶる。

 その次の瞬間だった。ザンキの突き出した剣先から、バーンに向けて雷撃が発射されたのだ。

 バーンは、頭で考えるよりも先に体が動いた。

 セントラール城で、ニーナと一緒に少年がファイヤーボールの練習をするところを見学した時、ニーナからファイヤーボールを打ち返してみろと言われ、剣で打ち返す練習をしたことがあった。その時はそれはただのニーナの思い付きの遊びゲームだと思っていた。

 その瞬間の事が頭によぎり、直後、バーンはザンキの放った雷撃をフレイムソードで打ち返していた。ファイヤーボールを打ち返した時のように。もちろん飛行速度も物質の特性も全く違うものだったのだが、なぜかそう身体が動き、そしてそのイメージの通りに、バーンは雷撃を上空へ打ち返すことに成功した。

 打ち返した雷撃は円形闘技場の上空の空へと向けて飛んで行き、霧散した。

 バーンは今やっと分かった。あの時ニーナは、フレイムソードで魔法に対処する一つの方法を教えてくれていたのだと。



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