第4話 三途の川
3月。
来月から愛華は小学生になる。
「おばあちゃんにランドセル背負ってるトコ見せたかったな……」
そんなことを考えていた夜。
おばあちゃんが死んでから、7日目の夜。
寝る前の愛華の部屋に、おばあちゃんが現れた。
---カチッ---
「おばあちゃん。あのね、
私の入学式、一緒に行って欲しいの」
おばあちゃんは悲しそうな顔で言った。
「ごめんね。愛華。
今日は、お別れを言いに来たんだよ」
「え? いなくなっちゃうの?」
「前にも話しただろ。
おばあちゃんはこれから、霊界ってトコに行くんだ。
お盆の時期には帰って来るからね」
「ヤダ!もっとおばあちゃんと一緒にいるの!」
泣き出す愛華に、おばあちゃんは優しく語りかけた。
「さよなら、愛華……
いままでありがとね。
お父さんとお母さんの言うことを聞いて
立派な大人になりなさい……」
おばあちゃんの身体が徐々に薄くなる。
「おばあちゃん、いや!」
---カチッ---
またはっきり見えるおばあちゃん。
(あらま?)
また薄くなるおばあちゃん。
---カチッ---
「おばあちゃん、また見えた!」
薄くなるおばあちゃん。
---カチッ---
はっきり見えるおばあちゃん。
薄くなるおばあちゃん。
---カチッ---
はっきり見えるおばあちゃん。
薄くなるおばあちゃん。
---カチッ---
---カチッ---
---カチッ---
何度かチャンネルを変えていると、
いつの間にか、見知らぬ河原に立っていた。
目の前には、向こう岸が霞んで見えないほどの大きな川。
川岸には、大勢の人が列を作っている。
おばあちゃんは、その中に並んでいた。
「おばあちゃん!」
おばあちゃんの元まで走り寄る愛華。
「愛華!こんなとこまで来ちゃったのかい?」
その時、
列の先頭で受付らしき白髪のお婆さんが怒鳴った。
「こら!ガキ!
ちゃんと列に並びな!
割り込みは許さないよ」
ウチのおばあちゃんが頭を下げる。
「すみません。今、帰らせますから」
白髪のお婆さんがギョッとして愛華を見る。
「お前、生きてるのか?なんで生身の人間がこんなトコにいるんだい?
早く帰らないとお仕置きだよ。このガキ!」
「愛華、もう帰りなさい。
お盆には戻るから、おばあちゃんの好きな
おはぎを作っといてってお母さんに伝えてね」
「うん、わかった。
おばあちゃんも元気でね」
「けっ、死んだ人間に元気でもクソもないだろ。ガキが」
(ガキ、ガキってうるさいなぁ。
あんたより、ウチのおばあちゃんの方が全然可愛いんだからね)
「なんだと、このガキぃ!」
(げっ、聞こえてた)
愛華は慌ててチャンネルを戻す。
---カチッ---
---カチッ---
---カチッ---
---カチッ---
・
・
・
---カチッ---
---カチッ---
---カチッ---
・
・
・
(あっ!行き過ぎた!)
---カチッ---
---カチッ---
慌ててチャンネルを戻し、自分の部屋に戻ってきた。
「今、なんか見ちゃいけないモノを見ちゃった気がする……」
「まぁ、いいか…… 忘れようっと」
6歳にしてリカバリー能力の高い愛華であった。




