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陛下、寵愛なんて望んでません。  作者: 犬村汐里


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第25話



 仕事は、問題なくやれた。


 帝の姿を見ても変に動揺することはなかったと思う。絶対できた。ちゃんとできた。



 ──なんて、信じ込ませないと好きだと自覚した俺には普通に振る舞うことが難しかった。



 その日の晩、帝が訪れた。


 共に碁を打っていると、帝が口を開く。



「今日は他人行儀だったな」と。


「えっ、あ、いや……そんなことはないと思いますけど……」


「どうした?」



 優しい声色が、頭の中に響く。


 じんわりと、顔が熱くなった。



「……別に……なにも……ないです……」


「俺に隠し事をするのか?」


「いえ」


「では、言ってくれないか」



 碁石を碁盤に置こうとしたとき、帝の手が俺の手を掴んだ。


 カタン、と石が手から落ちる。



「……龍輝」


「なんだ?」


「俺……あなたが後宮に行ってしまうことが、とても寂しいのです」



 うつむいたまま呟いた。


 その言葉に龍輝は静かに受け止めた。



「どうしてほしい」


「私だけを愛してほしいなんて言える存在ではありません。だから……後宮に行った次の日は、こうして私のところに来てほしいんです」



 せめてもの、わがままを告げた。



「志明、こちらへ来い」



 軽く手を引かれ、俺は立ち上がって龍輝の足に座った。


 龍輝の手が俺の頬を挟む。



「本当ならば、お前を皇后にしてやりたい。でも、できぬのだ。分かるな?」


「分かります」


「だが、志明、俺の心の中ではお前は我が正妻であり、皇后だ。これは誰にも譲れない。いつか、皇后ができるだろう。だが、お前を超える存在にはならない」


「……うん」


「志明、愛している。心から。お前を生涯かけて愛したい。約束する。愛し続ける」



 甘い言葉がほしいわけじゃなかった。


 それなのに、その言葉に心を絆されている。


 唇が重なって、俺は龍輝に身を預けた。


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