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陛下、寵愛なんて望んでません。  作者: 犬村汐里


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第24話



 外後宮に入ってから一月が経過していた。


 今はもう外後宮の上級寵臣は俺だけになり、第一寵臣が追放されたことで、俺が第一寵臣になった。帝はほぼ毎日俺の宮に訪れた。


 そう、“ほぼ”毎日だ。来ない日もある。



 来ない日は、大抵後宮に行っているらしい。


 妃と夜伽をし、次の世代の子を産んでもらう。それも帝の仕事だ。




 今日は来ない日だった。


「来ませんね」と、凛風が言う。


「今日は来ないよ」


「なぜですか?」


「後宮に行くとおっしゃってたから」



 俺が答えると、凛風は眉を寄せた。



「寂しいですか」


「それは……」



 寂しい、と言おうとした自分がいた。



(寂しい? 俺が?)



 信じられない。だが、言おうとしたのは事実だった。



「……別に寂しくなどない」


「嘘つかなくていいのですよ」と、李翔がいう。


「最近の志明さまは、帝に夢中のようですし」


「俺が!?」


「そうですよ」と凛風も言い始める。


「そんな、俺は……別に……」


「夜だって、結構盛り上がってるじゃないですか」と凛風が口元を手で隠しながらそういう。


「いやっ……それはっ……」



 みるみるうちに顔が熱くなる。



「俺は……ただ……そ、そう! 側室の仕事を全うしてるだけであってだな!」


「じゃあ、帝のことは好きじゃないのですか?」と、李翔が聞いた。


「……」



 好きじゃない、わけがなかった。


 シャンチーや碁を一緒にしてくれる。


 時々周りに聞かせることが難しい相談事を聞かせてくれる。


 遊び相手としても、仕事相手としても必要としてくれた。



 夜だって、大切に、宝物を扱うみたいに優しく……。



「……」



 夜の光景を思い出し、そして今誰かと夜伽をしているのだろうと思うと、胸が苦しくなった。


 これはきっと──。



「……好き……だよ」


「わあ!!」と凛風が手を叩く。


「やっと認めましたね」


「うるさい! もう、お、俺は寝るからな!寝るぞ!」


「はい、おやすみなさい」


「おやすみなさい!」



 二人に見送られ、俺は寝室に入った。



 布団の中に潜り込み、熱い顔を手で覆う。



 今、帝は──。またそんなことを思って、苦しくなる。嫌だ嫌だと首を振りながら、目を閉じた。


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