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陛下、寵愛なんて望んでません。  作者: 犬村汐里


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第22話



 次の日も、また次の日も。帝は俺の宮に訪れた。


 シャンチーをして、夜をともに過ごす。


 そんな日々を過ごした。




 しかし、数日後──。


 俺が外後宮に入ってから、帝のお通いは俺だけだった。


 だからだ。いや、それ以外に理由が見当たらない。



 俺が昼休みに食堂に来ていると、目の前の席に沐陽が腰を下ろした。


 鋭い眼差しが俺を見つめる。



「志明さま」


「はい」


「言ってることと話が違う」


「なんのことですか?」


「寵愛を奪いに来たわけじゃないと言ったが、実際どうです? 今、帝はあなたに夢中だ」



 喧嘩を売りに来たようだ。こんなことを言われても困るだけなのに。



「……俺は何もしてないので、そう言われても困ります」


「噂によれば夜伽もされてるとか?」


「帝の側室ならば、夜伽をするのが仕事でしょう」



 淡々と答えれば、沐陽は何も答えられなくなる。


 ムッとした顔で、唇の端を噛んだ。



「私は……私は外後宮の第一寵臣だ。外後宮で偉いのは私だ。帝の寵愛を一番に受けてるのもこの私なんだ!」



 沐陽が大声を出したので、食堂にいた誰もが俺と沐陽の方を見ていた。



「ああ、外後宮の寵臣達だよ。沐陽さまと、謝志家の志明さま」


「後宮も外後宮も変わらないな」



 そんな、話し声が聞こえてた。後宮もこうなのであれば、姉の麗霞も大変なのだろう。



「聞いているのか?」



 周りの声に耳を傾けてしまったせいで、沐陽の方に言葉を返していなかった。



「知ってますよ」



 俺はそれだけを返した。



「なんだ……何なんだ、その態度は!」



 どうやらどう返しても不満があるらしい。



「では、どうすればあなた様の機嫌が治るのですか? そうやって俺に文句を言っても、帝がどちらに通うか決めるのは帝自身でしょう?」



 沐陽の目がつり上がる。



(あ、やばい)



 そう思ったときには遅く、沐陽が湯呑みの中身を俺の方にぶちまけた。



「あつっ!!」



(熱湯かけやがってこいつ!!)



 俺は手にかかったお湯を咄嗟に服で拭く。



「志明さま、冷やしましょう」



 そう言って声をかけてくれたのは、今日の護衛の一人だった。



「逃げるな!! 話はまだあるぞ!!」



 そういう沐陽を無視して外に出て、井戸に向かう。


 そこで手を冷やして、診察所に向かった。


 医者に念の為と軟膏を出してもらい、食堂へと戻る。


 案の定片付けられていて「だよねー」なんて呟くと、奥から顔見知りの料理人が出てきて、俺の前に定食をおいた。



「作り直しておいたぞ、志明」


「ありがとう、おやじさん」


「大変だな、お前も」


「望んでないとはいえ、あそこに入ると決めたのは俺だから。仕方ないさ」


「遅めに来てもいいぞ。お前のは用意しておく」


「ありがとう」




 料理人のおやじさんに感謝をして、俺は昼食を食べ始めた。



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