Cクラスの生徒、魔法を試す
休憩時間を挟んで、Cクラスのメンバーは外の訓練場に集まった。
入学式が行われた中庭とは別の場所だ。中庭の訓練場は人数の多いAクラスが使用しているようだった。
「んしょ、んしょ」
と、ミリアがヨタヨタしながら大きな的を運んでくる。
「んしょ、んしょ……んぎゃ!」
と思ったら途中で転んで的の下敷きになった。
「先生っ!」
「大丈夫っすか?」
「ひーん、重いー!」
レントとムーノが的を起こし、ディーネがミリアを助け起す。サラは呆れ顔でそれを眺めていただけだった。
的を所定の場所に置き、ようやく次の授業開始である。
ミリアは服についた土を払ってから言う。
「で、では、実践授業を始めるわね。みんなには、この的に向かって魔力を当ててもらいます。まずは先生が見本を見せるわ」
そう言ってミリアは、的から少し離れたところに立つと、手を前にかざす。
「体内の魔力を手の平に集めて撃ち出すの。水滴でも石でも、自分のイメージしやすい具体的なものを、手に持って、的に投げる感覚でやってみると上手くいきやすいわ」
そう説明しながら、ミリアは魔力を放った。
ぼんっ、と音がして的が大きく揺れた。
同時に、円盤状の的の上四分の一と右四分の一の範囲が発色した。
「こんなふうに魔力の特性によって的が変色するわ。ワタシは火属性と風属性が得意ということがわかるわね」
そういえばレントは、自分がどの属性が得意か考えたことがなかった。
どの属性魔法も満遍なく使えるのだが、現代魔法のレベルに照らし合わせるなら、どれも中途半端にしか使えない器用貧乏ということになるのだろう、とレントは思う。
この的で自分の得意な属性を把握し、そこをしっかり強化していかないと、と彼は決意を固めた。
「はいはーい。先生。オレやってみていいすか?」
「はい、じゃあムーノくん、どうぞ」
ムーノがミリアに変わって的の前に立つ。
両手を持ち上げ、全身に力を入れて、
「ぐむむむむ……っ!」
と唸る。
やがて、彼の周りの地面の砂がさらさらと揺れた。
そして、彼の手から魔力が放たれる。
的はそよ風に押されたようにかすかに揺れた。
「あっれー、全然威力がないぞ」
「初めてならこれで充分よ。それにほら」
とミリアが的を指差す。的は下四分の一が変色していた。
「ムーノくんは地属性の適性があるみたいね。じゃあ次はディーネさん」
「は、はいっ」
ディーネが緊張した様子で的の前に立つ。
手を前に出し、目をぎゅっと閉じて彼女は声を上げる。
「えいっ」
的はほとんど揺れなかったが、左四分の一が薄く変色した。
「ディーネさんは水属性のようね」
「よかったぁ……」
ホッとした様子で息を吐くディーネ。
「じゃあ次はサラさん」
「……はい」
サラが的の前に立つ。
右手を構えるその姿は凛々しく、様になっている。
すでに魔法を扱ったことがあるからだろう。
サラの手に魔力が集まってくる。しかしそれは先の三人とは違い、赤く色づいた魔力で、すぐに炎へと変化する。
「あ、ちょっとサラさん——」
ミリアが止める間もなく、サラは炎魔法を的に向けて放つ。
ゴォ! と周囲の空気を膨張させながら、ファイアボールが的に命中する。
的は上四分の一を変色させる暇もなく、真っ黒に焼け焦げてしまった。
「調べるまでもなく、私は炎属性です」
そう言い放つと、サラは訓練場の端へ移動した。
「もうー……」
困った顔で言いながら、ミリアはべつの的を持ってくる。また下敷きになりそうだったので、レントとムーノが手伝った。
「最後はレントくんね。えーと、今はたまたま全員できたけど、すぐにはできないのが普通だから、気楽にね。ましてやサラさんはCクラスとしては例外だから、気にしないように」
「はい」
ミリアがそう言ってくるのは、レントが魔力ゼロであることを考慮してだろう。
しかしレントとしては手を抜きたくない。
どんな授業でも全力でやって、少しでも多くのことを学ぶのだ。
なにしろ古代魔法しか知らない自分と他のみんなとでは八百年分の実力差があるのだから。
レントは手を掲げ、魔力を集中させた。
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今日も三回更新予定です。
次はお昼ころ!





