第68話 友人との夕食の時間
ブックマーク、評価、ありがとうございます。
拙作ですが、よろしくお願いします(#^.^#)
読んでくださっている方の中にはお気付きの方もいらっしゃるかと思いますが……
私、エピソードタイトルをつけるのが苦手です(;^_^A
くだらないタイトルですが、読んでくださると嬉しいです。
「だって、王太子殿下はレミリア様の事が好きで好きでしかたがないって様子でしたよね?」
無邪気にカノン様が言った言葉に、私はまた眉間に皺を寄せた。心の中で彼女の言葉を反芻する。
『好きで好きでしかたがない』……?
「え? それってカノン様だけが気付いただけでなく、周りの人も気づいているって事ですか?」
「はい! とても分かりやすかったですよ。態度にもでてました!」
カノン様は元気に微笑み返す。
私は恥ずかしすぎて、じわりじわりと顔が熱くなってきた。
ダリル殿下ってそんなに分かりやすかったの!? 気付いていなかったのは、私だけ?
「どこからどう見ても、王太子殿下はレミリア様の事を初めて会った時から気になっておられたようですよ。周りもそれに気づいて贈り物が一時に比べるとかなり減ったですよね」
カノン様の言う通りだった。最初は誰からのものか分からないほどの量の贈り物だったけれど、最近は殆ど無い。あれは単に皆、物珍しさに興味があり、すぐに失せたのだろうと思っていた。
「本当は婚約者のいらっしゃらない方は、レミリア様を狙っていたようですけれど、王太子殿下が相手では勝ち目が無いとお思いになっているようです。アルト様のお話ですと、まだ何人かの男子生徒は諦めていらっしゃらないようですが……」
カノン様の次から次と出てくる言葉に私は次第に顔が青くなり、背中に冷たい物が流れ落ちた。
「それは? どちらの家の?」
黙って聞いていたクリスティーナ様が微笑みながら口を挟んだ。微笑んでいるのに目が笑っていない。
こ、怖い……。クリスティーナ様、笑うなら目も笑ってよ……。
カノン様はクリスティーナ様の表情に臆することなく淡々と、いえ、面白がって答える。彼女はとても楽しそうに見えた。私は二人を交互に見ながらパンを一口大に千切り、口の中へ入れた。
「アルト様の調べですと、あのバラ事件の……カーミン公爵家のヨハン様とか」
「あの方はまだレミリア様の事を諦めていらっしゃらなかったのですか?」
私は二人の会話を聞いてビックリして、口に入れたパンを噛まずに飲み込んでしまった。息が出来ずに慌てて私は飲み物をごくごくと飲む。喉につっかえた物が取れると息を吐いた。
「レミリア様、食事はちゃんと噛んで食べないといけませんわよ」
その様子をクリスティーナ様は呆れた表情と声で私を一瞥した。
いやいや私は、それどころでは無い。聞き間違いだと言ってほしい!
「ち、ちょっと待って! 今、トンデモナイ爵位が聞こえたような気がするのだけれど……公爵家って言わなかった!?」
「そうですわ、カーミン公爵家よ。現国王の王弟殿下がカーミン公爵ですのよ。だからヨハン様はダリル殿下と従兄弟になりますわ。あの時、私はダリル殿下にバラを渡した男子生徒が誰か言わなかったのですが、公爵家となればすぐにバレてしまいますわ」
クリスティーナ様は、「ああ、何故こんな事になるのかしら……」と言うと吐き捨てるように溜息を吐いた。
えええ!? あの可愛らしい男子生徒が!? そういえば髪が黒かったかも。
「本当に厄介ですわ! どうしてヨハン様が諦めてくれていないのかしら。それだけレミリア様が魅力的だから仕方がないのかしら……年下のくせに、本当に生意気ですわよ!! でも……公爵家だと、侯爵令嬢の私では太刀打ちできませんし、悔しいです!!」
「そうなんですよね。アルト様も頭を悩ませておりました。残りは子爵令息や男爵令息ばかりだったようなので、そちらは何とでもなると」
「はあ!? 男爵? 男爵が伯爵令嬢を婚約者にしようと!? バッカじゃないの!? これほど魅力的なレミリア様を!!」
「わわわわわ! クリスティーナ様、お、お言葉が、乱れていらっしゃいます」
私は慌ててクリスティーナ様を止めた。放っておくとどこまででも乱れた言葉が出てきそうです。それに私はそこまで魅力でも何でもないし……。
「あら? ゴメンあそばせ。私としたことが、少々言葉使いがい誰てしまって……」
少々どころでは無いわ。ここが私の部屋だからと言って、言いたい放題。まだ夕食の時間帯だ。誰が部屋の前を通るか分からない。部屋の外まで聞こえていないか心配になってきた。
「あら、勉強机の上にあるお花は……この間の……」
クリスティーナ様が机の上に置いてある紫のスターチスの花に気づいた。花を見に机の所に行く。心の中で、しまったと思った。
目のつかない所に片付けておくべきだったわ。
また何か言われるのかと思っていたけれど、クリスティーナ様は花より違う物が気になったようだった。それは、先程寮母から渡された2通の手紙だった。
「2通ともご友人からの手紙ですか?」
「え?」
兄ラルス・レグルスと元婚約者のクリフ様からの手紙だ。「兄からの」と言いそうになって、そこで私はとんでもないことに気づいた。タラタラと汗が流れて来る。
お兄様、なんてことをしてくれてるのよ!
家名をレグルスと書いてある以上、兄からの手紙だと言えない。そして、もう一つの手紙はクリフとしか書かれていない。手紙も片付けてなかったことに後悔した。
ああ、私の馬鹿!! 馬鹿!馬鹿!馬鹿! ついでにお兄様の馬鹿!
「ねえ、レミリア様。お二人ともご友人?」
横目で睨むようにチラリと見て来るクリスティーナ様。そんな中、カノン様は平然と夕食を美味しそうに食べていた。
「あ、ラルス・レグレスと書いてある方は先日の従兄……の弟です」
ああ、何という苦し紛れな事を言ってしまった。背に伝う汗が止まらない。
私の馬鹿馬鹿馬鹿! 嘘に嘘を重ねてどうするのよ! お兄様の馬鹿! と心の中私はで叫んだ。
「変わった方ね。封筒に『心して封を開けよ』なんて書く人初めて見たわ」
ソウデスネ。ワタシモハジメテミマシタワ。
「では、もう一人の方は? あら? どこかで聞いたことのあるお名前……」
「あ、その方は、前の学園の同級生だったの! 同じような名前の方って結構いらっしゃるのではないのかしら?」
間違ったことは言っていない。けれど、汗が止まらない。同級生には変わりない。変わりないけれど、その手紙の送り主が元婚約者などと口が裂けても言えないわ。
「そうね……同じ名前の人とかもいらっしゃるわよね」
私は、うんうんと縦に首振り頷く。クリスティーナ様は疑念を抱いていたけれど、納得してくれたようだった。
尋問のような夕食の時間が終わり、クリスティーナ様とカノン様は部屋から出て行った。
ふう、と私はベットに横になる。食べたのか食べていないのか分からない夕食の時間が終わり、疲れた体に気が抜けたからか、そのまま眠くなって寝てしまった。
ふと目が覚めれば、カーテンの隙間から薄っすらと光が差し込む。私は重たい瞼を開きサイドテーブルに置いてある時計で時間を確認し、飛び起きた。もう朝の五時だった。
「……っえ! 五時? そんなに寝てしまっていたの?」
少しうたた寝するつもりが、ぐっすりと寝てしまった。昨夜は夕食後、何もせずに寝てしまったので、湯あみをする。
ゆったりとお湯に浸かり、うーんと体を伸ばす。昨日のダリル殿下の告白を思い出す。やっぱり、どう考えても私は、王妃という器ではない。
一貴族としての教育は受け知識も多分だけれど、そこそこある。だけど王族に嫁ぐ予定が無かったから、そちらの素養がない。
「はあ……」と気の抜けた声が洩れる。
もし……ダリル殿下が王太子という立場でなければ、考えは違ったのだろうか、と沈思黙考してみた。
以前のクリフ様との婚約期間には向き合ってこなかった事に少なからず後悔した。だからダリル殿下は自分の想いを私に伝えてくれた事にちゃんと向き合わなければいけないと思うのだけれど……まだ、ダリル殿下と出会って日が浅い。恋愛対象や婚約者など、今は到底考えられなかった。
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