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ざまぁみろ!!  作者: 柊 風水
児木りふこの末路
3/11

暗躍した者②

 ざまぁみろと心の中で嘲笑ったのは美埼だった。


 美崎には少し年の離れた姉がいる。

 美崎は頭が良くて人に優しく接する姉の事をとても尊敬していた。

 年の離れた美崎の事を特に可愛がってくれて、美崎の希望の大学に受験する為に惜しみなく勉強を教えてくれて、尚且つ受験しやすいように環境を整えてくれた。

 合格した時は家族で誰よりも喜んでくれたのは美崎の姉だった。就職祝いに彼女が欲しがっていた高級バックをプレゼントしてくれたのも姉だった。

 だから美崎は姉の事が大好きで、一番幸せになって欲しい人だった。




 所が、ある日一人暮らしをしていた美崎の元に父親が電話をしてきた。何と姉が入院をしたと言う事だ。


 理由を聞くと、婚約していた恋人に好きな女性が出来たから別れたのだ。恋人は高校からの付き合いで勿論美崎も知っている人だった。

 とても浮気する様な人柄ではない筈だった。


 別れた事が相当ショックを受けて姉は倒れてしまった。恋人を忘れようとして食事も取らず寝ないで仕事をし続けたので体重が半分まで減っていた。

 とてもじゃないが働かせられる状態ではないので、姉と相談した末に会社を辞めて家で療養する事になった。


 両親は怒り心頭で、元恋人を訴えようとしたが直ぐに止めた。

 何故ならその元恋人が()()()()()()()()()をしたからだ。

 元恋人が好きになった女性が元恋人を公衆の面前でそれは酷い別れ方をしたのだ。

 相当惚れ込んでいた元恋人は姉以上にショックを受け、森の中で首を吊る程のダメージを負った。

 幸い、登山部に所属していた大学生グループが早期に発見したお陰で命は助かったが、鬱病を発症し精神科に入院しなければならない程の重症だったので元恋人も会社を辞めた。

 その事と涙を流しながら土下座をしている元恋人の家族の姿を見て、流石に可哀想と思った両親は訴えるのを辞めて誠意として僅かばかりの慰謝料を受け取った。僅かなのは元恋人の治療費が相当掛かる事を分かっていたからだ。


 美崎もその決定には文句はないが、どうしても元恋人を振った女性の事が気になった。

 その女性の出会う前の姉と元恋人は本当に仲が良く、美崎は自分も姉の様に素敵な恋人を持ちたいと思っていた。

『それなのにどうして?』と思った美崎は独自にこの女性について調べてみた。



 何とこの女はとある男に依頼されて元恋人に近づいたのだ。




 姉は会社ではかなり良い成績を取っていた。このまま行けばかなり良い地位に着けるのではないかと周りは噂する程だ。

 それを嫉んだある男がいた。

 その男はその会社の御曹司で、将来の跡取りとして期待されていた男だった。

 自分と同期で会社の跡取りである自分よりも優秀な美崎の姉を疎ましく思っていた。このまま自分よりも出世する同期が許せなく、会社から追い出そうとして例の女に依頼したのだ。


 女は男の従兄弟で、美人だが女性の間で『男好き』で有名な女だった。

 依頼された女は手練手管を使って元恋人を堕とし、長年付き合っていた元恋人の裏切りにショックを受けて美崎の姉は退職。

 男は最大なライバルが消えたお陰で順調に出世し専務にまで登った。



 それが児木ふり男と児木りふこである。






 美崎は二人を憎んだ。

 特に憎んだのはりふこの方で、元恋人の事を真摯に愛していればまだ良かったが塵の様に捨てて自殺未遂にまで追い込んだのだ。それを知っている筈なのに反省の欠片もない。


 美崎は忘れない。

 姉のやせ細った姿を。

 病院のベッドで死んだように寝ている姉の姿を。

 弱弱しく『迷惑掛けてごめんね』と悲しそうに笑う姉の姿を。


 美崎は絶対に忘れられないのだ。枯れ木の様にやせ細った姿は今でも夢に出てくる程だった。



 美崎はあの女をどうやって報復しようと虎視眈々と狙っていたが、転機が訪れた。


 何と件の男に理不尽な解雇された左右田達が美崎の会社に入社したのだ。しかも前の会社の同僚達が飲み会に参加してその後の顛末を幸運にも聞かされたのだ。

 その後乱入してきた同僚の一人である水野と仲良くなり、お互いの連絡先を交換していた。そこからりふこが沖縄の支店に左遷させられたと聞いた。そこは美崎の職業が探偵の友人が住んでいた場所だった。



 美崎がやったのは大したことはない。その友人に正式に依頼してりふこの事を調査して貰っただけだ。まさか左遷させられて直ぐに妻子持ちの同僚に粉を掛けていた事には驚いたが。

 ある程度りふこを陥れる証拠をたった一週間で入手できた時は、美崎も友人も思わず笑ってしまった。


 美崎は匿名でその同僚にりふこが如何して離婚したのか、どうして子供と引き離されてしまったのか、それとりふこのSNSに飛ぶアドレスが書かれた紙を匿名で送った。

 同僚は会社の稼ぎ頭で有名であるがそれ以上に、愛妻家の子煩悩で、かなりの潔癖症で社内では有名な男だ。その男が実の息子を自分の過失で殺しかけただけではなく、違法薬物を使いながらの乱交した女に嫌悪感を抱かない訳がなく。

 しかもSNSで自分と妻を別れさせようと企んでいる事を知って、妻と子を守る為に上司にこの事を相談したのは無理もない。因みにSNSは鍵垢ではなく誰にも見られる様になっていた為、美崎が少しりふこに関連するキーワードを検索しただけで直ぐに辿り着いた。


 反省する為に沖縄の支店に飛ばしたのに、そこで浮気しようとし、しかも妻子を殺してまで排除しようと考えている事が分かると、りふこは沖縄の支店よりも小さな支店に左遷させられた。

 りふこが本当に殺してまで排除しようと考えていたのかは定かではないが、SNSには明言はしていないが、仄かにそのような事を伺わせる内容が投稿されていたので、周りはこれを重く受け止めた。


 りふこが今度は悪さしない様に、田舎にある女性社員しかいない小さな支所に飛ばされた。

 それを知った美崎はその支所に働いている同い年の女性社員とSNSで仲良くなった。丁度その社員と美崎の好きなゲームが同じだった為意気投合となったのが幸いだ。かなり仲良くなるとお互いの仕事の愚痴も言い合う様になり、その社員は新しく入った社員……りふこの事を酷く愚痴る様になった。


 何せりふこは全くと言う程仕事を全くしなかった。

 当初は本社の副社長の娘だと言う事なのである程度多めに見ていたが、親である副社長達は『厳しく指導する様に』と言われて目に余る事は少しずつ注意する様になった。

 だけどその『目に余る』行為が日に何度も起こり、温厚で有名な係長(五十代女性)が激怒の雷を何度も落とすから社内の雰囲気が最悪、なのにりふこは反省の色をしないし、明らかに此方を馬鹿にした態度で此方の気分も悪いし、離婚された理由が理由だから既婚者の女性が多い会社では村八分状態になっていると美崎は知った。

 その社員はそれだけではなくある有効なネタを教えてくれた。


「どうもあの女、ウチの取引先の男性社員と不倫しているぽいっなのよね。しかも複数人」

「えー?! 大丈夫なの?」

「一応噂程度なんだけど、一緒にいる所を見たって言う人が何人もいるから多分……て感じ。どうも慰謝料とかで給料かなり減っているのに、高いブランド品とか高級レストランとか旅行とか明らかに貰っている給料の額を大幅に超えた額の物を買ったり使ったりしているのよ」

「それって……不倫相手に貢いで貰っているって事?」

「私等の間ではね。あーあ。早く辞めてくれないかな~。せっかくの取引先を潰されたら私等やっていけないよ」


 この情報をチャンスだと捉えた美崎は探偵をやっている友人の紹介で複数人の探偵を雇う事にした。

 一人でも高い探偵を複数人雇う事は只のOLである美崎にはキツイ事だが、脳足りんのりふこでも二回目でしかも複数人との不倫となっては、流石に警戒するだろう。だから念には念を入れて複数の探偵を雇った。

 これが功を奏し、三ヶ月で不倫相手全員の証拠を集める事が出来た。


 美崎はその証拠を不倫相手の奥様達とりふこの両親に送り付けた。

 後日仲良くなった社員がとてもご機嫌だったので理由を聞くと、りふこの不倫相手の奥方が全員会社に乗り込みりふこに詰め寄っていた。

 かなり興奮状態で、りふこの髪を引っ張っられたり頬を平手で叩き付けたり、そのせいでみっともなく大泣きするりふこは化粧が剥がれてボロボロで、自尊心の高いりふこには耐えがたい事だろう。


 取引先の担当全員と不倫をしていた事が会社や親にバレ、流石にこのままにしては置けないと解雇された。お陰で会社が元の平穏を取り戻したと喜んでいた。

 その平和を功労者である美崎は只微笑んで「良かったね」と返した。


 不倫相手の奥方に慰謝料を払い、りふこの家族は反省の欠片もないりふこに愛想が尽き、二度と人様に迷惑を掛けない様に山奥にある尼寺にぶち込んだ。

 此処まで男にだらしないりふこには厳しい女性しかいない尼寺など地獄でしかないだろう。






『ふん! ざまぁみろ。姉さん達を苦しめた挙句、自殺する程追い詰められたのに反省の一つもなかった鬼女!! 一生山奥から出て来るな!!!!』



 密かに嘲笑いながら美崎はビールを勢いよく飲み干した。




 因みに美崎の姉は元気を取り戻し後、良縁に恵まれて結婚し、現在妊娠中である。元恋人の方も鬱病が大分改善されて少しずつ社会に復帰している。

 彼が病院から退院して直ぐに向かったのは姉の元で、直接謝罪して姉はそれを受け取り、細々であるが交流があるそうだ。


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