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翡翠の石の修理

「お前、火傷の手当は?」

「薬、取りに来たんだっつうの!」

 てか、とダンプが続ける。

「俺、魔王退治になんて、行かねえからな。それに、俺がいなくなったら、ここの守りどうすんだよ。親父一人じゃ無理だろ」

 まあなあ、とジオが頭を掻きながら、エアたちに事情を説明してくれた。

「この武器屋はこの先の村の関所みたいになっててなあ。招からざる客がワンサカくるから、ここで追い返しているんだ」

 単純に部屋に引きこもっているという訳でもなさそうだ。

「俺は勇者とかその仲間とかまじごめんだね。自宅警備員で十分だ」

「私も反対です。何しろ、動かないですからね。強くても、戦っていて画にならないとお話になりません」

「お前に言われたくねえよ!」

「私はマネージャーなので、普段は戦いません」

 がっつり戦っていた奴が何言ってるんだ、とダンプがブツブツ文句を言う。

「ねえねえ」

 と、突然スノウが話し始めた。突然の女の子の声にジオが辺りを見回し、ダンプがそんなジオを槍で突いて、剣を指差して見せた。

 翡翠の石は、元気よく明滅している。

「喋っていい?」

「も」

「おお! まさか、喋るとは!」

 もうすでに喋ってるじゃん、というエアのツッコミは、ジオの勢いに吹き飛ばされる。

「精霊か、意志持つ魔石か、それとも呪いか!?」

「石に憑いた霊魂だってよ」

 ダンプがこれまでの経緯をジオに話す。エアもスノウを具現化して見せた。先ほどで多少慣れたのか、突風のような風を巻き起こさずに済んだ。

 武器屋の性か、ジオの趣味か、興味深げにスノウと剣と石を見比べる。

「物憑きの類か。それにしても、こうやって見えるようにする方法があるとは」

「たまたま共鳴者がいたからです。それに、憑いたと言うのは今回は正しくありません。石に宿った霊魂です。憑くのは霊だけですからね」

 はいはい、とダンプが肩を竦める。

「武器屋のおじさん、私のこと直せそう?」

「ああ、大丈夫だ。ついでに剣も見てやろう」

 剣と石の具合を見ながら、ジオが答える。

「剣の威力が変わったか、調べてもいいか?」

「出たよ、親父の悪い癖。なんでも、武器への影響を図ろうとすんなって」

「スノウが嫌じゃなければ」

 スノウもいいよーと簡単に言ってのける。

「じゃあ早速直すとしよう。ダンプ、火傷の薬は納戸の中だ。同行の話は後だな」

「俺はぜってえ、行かねえからな」

 ダンプが槍を担いでかったるそうに歩いて行くのに、カイがついて行く。

「げ! お前、なんでついてくんだよ」

「私は、アリアの様子がちょっと気になりまして。それに、万が一またあの状況になったら、私の出番になるんじゃないんですか?」

 勝手にしろ、とダンプが踵を返す。その様子を見ながら、エアはジオを見上げた。

「俺、なんか手伝うことないかな?」

 作業台の準備をしているジオに問いかける。

「じゃあ、床から円盤状の砥石を取ってくれるか。棚の近くにあると思うんだが」

「わかったー」

 目当ての道具は、小さい水車のように円盤型の砥石が縦に回転するようなものだった。見つけるのは容易かったが、なかなかの重みのあるその道具をジオのところまで引っ張って行くのに時間がかかった。

「これでどうするの?」

「ヒビ自体は小さいからな。この砥石を回転させながら表面を削って、最後に磨けば大丈夫なはずだ。少し薄くなるがいいか?」

 エアとスノウの両方が頷く。

「台座から外したいが……」

「剣と石を離すなら、スノウの気持ちが剣と連動することはないので、戻してからやってください」

 納戸から戻ってきたカイがジオのつぶやきに答えた。隣では、ダンプが槍の先に薬箱をぶら下げながら、仏頂面で歩いている。

「こいつ、マジでありえねえ。火傷の薬探すのに、ゾウの霊召喚しやがった」

「ゾウが一番鼻がいいんですよ。早く見つかったですし、踏みつぶされなかったでしょう?」

「俺は、いつあいつがこの家をぶち破らないか心配だったんだぞ!」

「だから、霊だって言ってるじゃないですか。まあ、彼らの姿が家を突き破るほど大きいとちょっと影響あるかもしれませんが」

「あるんじゃねえか!」

 二人であーだこーだ言いながら階段に向かって歩いて行く。

「なんだかんだで仲良いよね」

「俺もそう思う」

 さあ、始めるぞ、と言う声にエアはスノウを石に戻した。

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