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アリアの異変

「正確に言うと、生きてるかわからないが、意思と力があるってところだな」

「ここに、何かの魂が宿っていると?」

「意思と力の源が魂だと言うなら、そうだ」

 カイが翡翠の宝石に手を伸ばす。宝石はエアの時よりも強く、カイの手をはじいた。

「触れられるのなら、確認のしようもあるのですが」

「ま、それはアリアに聞いてくれ。じゃ、事情は話したからな。もう面倒起こすなよ。俺は寝るから、あとは親父と話してくれ」

 ダンプはそう言うと、大きなあくびをして、この場所のさらに奥にある階段の方へ歩いていく。

 それを見て、エアがアリアに向き直った。手を掴む。

「なあ、アリア。教えてくれないか? ついさっきまで、この宝石は光ったことも何かを弾き返すこともなかったんだ。この宝石に何をしたんだ?」

 うつむいていたアリアがゆっくりと顔を上げる。

 ふわりと髪が浮き上がり、刹那、アリアの右手から電撃がほとばしった。

「うわ!」

 エアが思わずしゃがみこんだ後ろで、ダンプが傘のように変形させた槍を向けていた。その傘型の槍が電撃を食い止めたようだ。エアの隣では、カイがヴァンを召喚している。

「あんた、なかなか面白い技を使うんだな」

「あなたのその槍もなかなか興味深いですよ」

「悠長にそんなこと言ってんなよ! アリア、どうしちゃったんだよ!」

 アリアにもう一度向き直ろうとするエアの服をダンプが槍の先に引っ掛ける。

「お前の方が悠長だろうが」

「あああああ」

 アリアが人間とは思えない唸り声をあげ、いくつもの電撃を手の上に作り出してはエアたちに繰り出してくる。

「正気ですか? 手が焼け焦げてしまいますよ」

「だから、正気じゃないんだろうよ!」

 ダンプがエアを力づくで横に放り投げると、すぐさま槍を傘型に変形し電撃を防ぐ。「イッテエ!」と言う声は、ドンガラガッシャン、と言う音にかき消された。

「アリア、お前ここの物壊したら弁償だからな!」

 聞いているのかわからないアリアに、ダンプが叫ぶ。器用に傘型の槍を操って電撃を防いでいたが、連続して飛んでくる電撃のいくつかが後ろにそれた。

「やべ!」

 ヴァンが大きなムチで作り出した濃いモヤでそれらを吸収する。

「やるねえ」

 ダンプが口笛を吹いた。カイは横の棚に投げつけられたエアを引っ張り起こす。

「要は、雷ですからね。雲のようなものを作ればいいんです。そうすれば、アリアの手とその間でのみ放電してくれます」

 濃いモヤの範囲が広くなってくる。アリアの電撃はもはやカイたちのところまで一つも届かなくなっていた。

「う、うあぁぁぁああああー!」

 しびれを切らしたアリアがモヤを通り越して突っ込んでくる。カイは短剣を片手に、ダンプは槍をいつのもの形に変形させて待ち構えていた。

「アリア、悪いな」

「すみませんね」

 カイとダンプがそれぞれの武器を突き出す、まさにその時。

「ダメだ!」

「ダメー!!!」

 二人の声が重なった。

 エアがカイとダンプの前に躍り出るのと同時に、金床にあったはずの剣がアリアの前に浮いていた。

 双方ともに動きが止まる。

「ダメだよ! アリア、正気じゃないんだろ。殺しちゃダメだ!」

「アリア、やめて! いつものアリアに戻って!」

 エアが「あれ?」と後ろを振り返る。

 剣が浮くのはもう驚かない。そういうことも、あの翡翠の宝石はできるかもしれない。

 けれど。

「しゃ、喋った……」

 聞き間違えでなければ、女の子の声。アリアは宙に浮く剣をぼうっと見つめていた。

 ダンプが槍を肩に担ぎ、息を一つ吐く。

「そろそろ、俺、寝たいんだけどなあ」

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