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友達?
「先輩」
「……ウィンゼルさんって呼べって言っただろ」
「でも“先輩”ですから」
あれから私は、ウィンゼルと会うたびに“先輩”と呼んでやった。
「ちゃんと名前を呼べよ」
「ウィンゼル先輩」
「先輩はやめろ」
「ウィンゼル」
「呼び捨てにするなっ」
「ウィンゼル先輩」
「〜〜っ」
ウィンゼルはからかうと面白い。
最初は偉そうで嫌なやつだと思ったけど、すぐムキになって言い返してくるから、からかい甲斐がある。
年は彼が一つ上だけど、私はここに来て初めての友達ができたようで嬉しかった。
ウィンゼルは、ドーソンという名前の初老の竜術士の弟子だった。
弟子入りしたのは最近だけど、私より少しだけ早かったらしい。
だから“先輩”なんて呼ばれるのは恥ずかしいようだ。他人に聞かれてないか、いつもキョロキョロしている。
そろそろからかうのはやめて“先輩”と呼ばないようにしようかと思ったが、“ウィンゼルさん”とは呼びたくない。
なので、
「“ウィンゼル”と“先輩”のどっちがいいですか?」
「ウィンゼルっ」
「じゃあ“ウィンゼル”で」
「〜〜っ」
……ホント、からかい甲斐がある。




