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報告と提案

「えっ、亜由美ってまひろんと付き合ってなかったの」


キラキラした瞳がこぼれ落ちんばかりに見開かれている。


「モデル時代から亜由美の大ファンのまひろんと!?付き合ってなかった!?」


麗は口に運びかけた唐揚げ定食の唐揚げを、ボロリと落とした。


「何やってんですかぁ」

「ずっとあの忠犬に『待て』させてたってこと?」

「忠犬って…」

「いや、大変躾の行き届いた亜由美の犬だなと…」

「し、しつけ…?」

「亜由美がいるイベントは絶対来てくれるし、亜由美ルール的に嫌がることは絶対しないじゃん。細かいルールも教えられた通りにお行儀よく足そろえて守っている感じ?そんで尻尾をパタパタさせて撫でられるのを待ってる」


亜由美からすると麗が大雑把なだけなのだが、麗には亜由美はマイルールが厳しく設定されていると思っているらしい。


「あー…そう、見えるんですねぇ…?」


亜由美の笑顔が引き攣る。


「や、だってさ、亜由美だって、まひろんにだけは砕けた口調でしょ。ゆるふわで気の強い完璧な社長秘書様どこいったと思うもん」

「…ハァ?」

「ツンツンしちゃって可愛いなあって思ってたのよ。」


亜由美がプライベートのことを訊かれるのを嫌なのを知っているから、麗には何も訊かれたことはなかった。


恋バナや噂好きの麗の話を、一方的に聞くばかりで。


「まひろんも亜由美の家族も、亜由美のこと大好きだもんねー」

「……そう、みたいですねぇ」


もし、佳央理が言っていたことが本当だとしたら。


「親、口うるさく言うの、大事にしてるからだと思います…?」


怖さ半分、期待半分で、恐る恐る口にした。


「うん。連絡するたびに、亜由美のご両親は亜由美の体調ばっか心配してるし、仕事の活躍より元気で楽しそうなことの話のが喜ぶなー。」

「ふぅん…」

「だから最近は仕事の話はせず、楽しそうに仕事してる写真とかイベントの写真送ってあげてる」

「いつの間に…」


意外な言葉に、胸のあたりがじんわり暖かくなった。


大事じゃないから、亜由美のことはどうでもいい、わけでは、どうやらないらしい。


「帰って来なくて心配する気持ちもわかるしさー」

「…お気遣いどーも」

「でも、帰りたくないなら仕方ないよね」


実家に帰りたくないと、真紘にも麗にも言ったことはないはずだ。

適度にメッセージも返信しているし、年末年始や法事にはちゃんと帰っている。


麗が意外と亜由美のことを知っていて、こそばゆい。


「帰りたくない…っていうか、1人がいいというかぁ」

「まひろんは特別ってことかー」

「………」

「ん?毎日のように亜由美の家にいるよね?これは合ってる?」

「毎日、では…」


ないが。


…アレ?


「よく亜由美の家にいるみたいだから、とっくに付き合ってて同棲してると勘違い?してたんだけど」


言われてみれば、真紘は何かと理由をつけては連絡してきて、亜由美の部屋で過ごす。


平日はそのまま泊まることもあれば、遅くに実家に帰ることもある。土日はなんだかんだ亜由美の部屋で過ごすことが多い。

買い物に付き合ってくれることもあるし、ついでに服を選んであげることもあるし、日用品を買えば大抵荷物持ちをしてくれる。


ハタと、亜由美はサバの味噌煮をほぐす手を止めた。


「…週3、4日は会うのってもしかして」

「友達ならないね。高校生じゃないし」

「……距離感がおかしかったんですかねぇ」


亜由美は親しい友人が多くないから、そんなものだと気にも止めていなかった。


友達が多い真紘からしたら、付き合わないだ何だ言ったところで説得力がなかったということだ。


「んー、2人が心地いいなら他人はいいのよ。社会人になってからできた友達とは違うでしょ」


うんうんと頷いて唐揚げを頬張る麗。


真紘がこまめに亜由美に会いにきてくれていたのって、実はもしかしなくても結構負担だったんではないだろうか。


洗濯くらい一緒にやってあげることはあっても、行き来するのは楽ではないだろう。

そんなことを考えながら、亜由美は麗の惚気やら愚痴やらを聞いた。





◇◆◇





「まぁくん」


食事を終えて、のんびりしていた真紘に、亜由美は切り出した。


「一緒に住む?」

「………っえ!?」


真紘は実家暮らしだ。

両親とは不仲ではなさそうだが、昔からやや放任のようで、亜由美もあまり話したことはなく、顔見知り程度。


だから、あまり帰らなくても厳しくは言われていないだろうが、そう遠くない距離でも通うのは楽じゃないだろう。


よく何年も続けてくれていたものだ。


「超今さらだけど、毎日のように来るの大変かなって」


ポカンとして固まる真紘。


亜由美としては、他人と暮らすのは無理だと思っていたが、そもそも真紘は一緒に住んでいるようなものだし、時間を共にしても苦ではない。

だったら真紘の負担が減るならそれもいいかなと思ったのだ。


「イヤならいいけどー」

「ま、待って!住む住む住む!めっちゃ住む!!」


ガシッと亜由美の両肩を掴む。


「ん。まぁくんの荷物置く場所ないし、どっか広いトコ借りようか。」

「あーちゃん大好き!住む!今日から住む!」

「だから今日からは狭いってぇ…」


真紘は大型犬よろしく亜由美にぎゅっと抱きつき、亜由美は呆れつつも真紘の背中をポンポンと撫でた。




本格的に同棲するとなったら、やれ籍を入れろだ、姓をどうするだ、結婚式は盛大にやれだ、仕事は子どもはと親族から横槍が入り、ブチ切れる亜由美。折れない両親。そうよねと苦笑いで援護してくれる佳央理。


そして、同棲しない!両親とも絶縁する!と啖呵を切った亜由美を宥め、間に入ってほとんど1人でうまいこと執りなしてくれた真紘を見直すのは、また別のお話。




(惚れ直した?)

(………ちょっとね)

(!!!あーちゃん愛してる!!!)

(はいはい)






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