第133話「運命の選択①」
ライム達はキリシマ博士に別れを告げ、博士は未来を正しい道へと導くために、元の世界へと帰っていった。
ナヴィの推測は果たして当たっているのか……
己を信じるナヴィだが、答えはまだ出ることはない。
吉と出るか、凶と出るか……
ナヴィは天上階で、脱け殻となって動くことのない兄──ラビ・ホワイトの前で、両手を握って手を合わせていた。
祈るような形で、その答えが出る“時”をひたすら待ち続ける。
(ラビ様。私の推測は当たっていたのでしょうか? きっとラビ様も、私と同じ考えに違いない。そうだと信じたい。
お願いです。ラビ様。博士を……みんなを助けてください!!)
カコイマミライ
~時を刻まない島~
第133話
“運命の選択”
一方、その張本人のラビは──
今もまだ、ライム達の世界の時を止めながら未来で生き続け、装置による犠牲者を少しでも減らすために、日々動き続けていた。
そんな大忙しのラビに、その衝撃は突然やってくる。
「!!! 博士が……キリシマ博士が元の世界に戻った!!」
ラビが博士の存在を確認した。
ついに、ラビが待ちに待ったこの時が訪れたのだ。
ラビが止めた“今” 、時の軸を再び動かす──その瞬間が。
異世界でキリシマが消滅したことにより、消滅した3日後のキリシマの世界線以外の、すべてのキリシマの存在が、時の流れに復活する。
ラビは一番に、ナヴィが救世主と共に、この危機を救ったことを思い浮かべた。
「もしや、ナヴィが!? ナヴィがやってのけたのか!?」
実は、散々頭を悩ませた、このナヴィの推測……
ナヴィが唱えた説は………
見事に当たっていたのだ!!
ラビが未来を予知して、時を止めていたように……
ナヴィも未来を予知して、ラビの意向をしっかりと汲み取っていた。
これぞ二人はまさに、時を支配する──時の支配者といえるだろう。
──しかし、そんなナヴィの活躍も、こちらの世界にいるラビには、当然分かるわけがない。
ラビにはもうひとつの、最悪なパターンも頭をよぎっていた。
即ち、今のラビには2パターンの可能性が頭の中にあることとなる。
そのまず1つ目が、最初にラビの頭に浮かんだ、ナヴィがラビの意向を汲み取り、成し遂げるという最高の形。
そして2つ目が、単に未来のキリシマが死亡し、片方のキリシマ博士が戻ってきただけという形……この2つのパターンだ。
仮に後者の場合。この状況で、再びラビが時を動かすこととなれば……
時を動かす反動で自らの命を落とし、更に事態は最悪な展開へと進む恐れがある。
完全にラビの無駄死となってしまうのだ。
だがそれでもラビは、前者のナヴィを信じる方を選択した。
「いや、ナヴィは私を継ぐもの。必ず──必ずやってくれたのだと、私は信じる!!」
根拠など、何ひとつない。
しかし、ラビはナヴィを信じていた。
まさに二人は一心同体。
ナヴィがラビを信じるなら、ナヴィもラビのことを信じている。
(動け……時よ!! ナヴィは私を継ぐ……
時の支配者だ!!!)
一体、どれほどの間、時の軸は止まり続けていたことだろう。
過去の歴史の中で、これほど長期に渡って“今”が止まっていたことはない。
そうした類を見ない緊急事態の出来事も、ようやく終わりを告げようとしている。
ついにラビが……
止められた時の軸
“今”を……動かした!!
「ぐっ……ぐわわぁぁっっ……!!!」
“時”を動かしたと同時に、ラビに凄まじい反動が訪れる。
(ぐっ……くっ……やはり、耐えられぬか! いくら実体はここにはないと言えど、時を止めただけでなく、今度は時を動かした。二度目となれば、私の体は………)
「ぐわわぁぁぁっっ………!!!」
あまりの衝撃の強さに、ラビは叫びながらも気を失った。
そのことにより、ラビの意識は元いた、異世界の天上階へと戻る。
「!!! ラ、ラビ様!? ラビ様が……今動いた!!」