表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/136

第125話「導きだした答え③」

 ようやく、すべてを終えたライム達は時の塔へと帰還する。

 時の塔の前では、救護班が総出で待ち構えていた。


 まずはダイキが、背負っていたキリシマを降ろし、時の民一同でキリシマを塔の中へと運び入れる。

 その後にダイキやレオナ──そればかりか傷ついた解放軍にも、救護班は治療を施す。


 もう敵味方は関係ない。

 救護班は差別なしに、傷を負った者を救うのみ。

 キリシマが敗れたことで、早くも島の平和の訪れが垣間見えた気がした。


 もちろん、派手にやられたライムとミサキもしっかりと治療を受ける。

 そして簡単に治療を済ませた二人は、その足でナヴィと共に老師のいる天上階へと急いだ。




 ライム達が天上階に辿り着くと、老師が笑顔で出迎える。



「よくやってくれた! ナヴィに救世主達よ!!」



 ナヴィも笑顔で応じ、自分のことよりもまず、ライムとミサキの二人を讃えた。



「いえ、とんでもございません。やったのはすべてライムとミサキ。それと老師様が送り込んでくれた、塔の罪人達のおかげです!!」



 ナヴィが老師に感謝の言葉を述べていると、老師とは別の人物がもう一人颯爽と現れ、ライム達を祝福した。



「本当にやってのけるとは……感謝してもしきれない思いだ! ありがとう。みんな」



 その人物とは──


 解放軍キリシマのペア、キリシマ博士だ。



「博士!! いいのか? もう釈放されて出歩いてても?」



 塔の地下の最下層にある、特別独房室に幽閉されていたはずのキリシマ博士が、なぜか許された者しか入ることができない、天上階にいる……


 ライムはナヴィの方をチラッと見た。



「僕が博士をここに呼んでおいたんだ。なにせ装置の犠牲者を救う、一番の鍵を握る人物はキリシマ博士だからね! それと、今は特別独房室には解放軍キリシマがいる」



 博士は解放軍キリシマと入れ換えになる形で、独房から釈放されていた。

 あのボーダー柄の囚人服を着た博士の姿はない。

 そればかりか、以前より博士の見た目は小綺麗になっており、まずその違いにミサキは驚いていた。



「さっき博士を見た時はびっくりしちゃったよ! あまりにも前回との見た目が違いすぎて……最初、あの解放軍のキリシマがいるのかと思っちゃった……」



 博士は長いこと切っていなかった、ボサボサに伸びた髪の毛をばっさりと切り、伸びきった髭は綺麗に剃った。

 おしゃれのためか、口髭だけはちょこんと残している。

 また、服はビシッとスーツできめており、これぞまさに科学者といった感じだ。


 しかし、綺麗になりすぎたゆえに、今度は逆に解放軍キリシマとそっくりになってしまった。

 違いは口髭くらいで、先程まで嫌というほど見ていたキリシマが、目の前にいるのかと錯覚してしまうほどだ。



「いつまでも、あんな浮浪者みたいな格好はごめんだからね。私もすっきりした気分だよ」



 これで主要人物は全員揃った。

 

 皆が待望の、装置による犠牲者を救う方法をナヴィは語り始めたいところだが……

 目の前にいる老師に、ナヴィはたじたじだ。

 老師を前にして、自分の推測を偉そうに語るなどおこがましい。


 ナヴィは気まずそうに老師の顔を見ると、どうやら老師は、そのナヴィの困惑した表情を察したようだ。



「ナヴィよ。私のことは気にするでない! 私はもう、時の支配者をとっくに引退した身。皆に聞いて欲しい考えがあるのだろう? 私は口をつぐんで、黙って聞いておこう!」



「老師様……お気遣いいただき、ありがとうございます。

 では、ここは現・時の支配者として、僕の推測を話させていただきます!」



 ナヴィは老師にそう一声入れ、深呼吸をした。

 気持ちを一度落ち着かせた後に、ナヴィは自分の考えを述べた。



「それじゃあ、始めさせてもらうよ! これはあくまで僕の推測に過ぎないが、それと同時に僕が導きだした答えでもある!! 聞いてくれ!! みんな!! そんな僕の考えを!!」



 ライムは唾を飲み込む。

 全員がナヴィの一挙一動に注目した。



「まずは話を分かりやすくするために──問おう!

 ライム、ミサキ。君達のいた世界の時は、ラビ様によって時の軸(タイムアクシス)、“今”が止められているわけだけども……それは一体、どのタイミングだったと思う?」



「えっ……それは博士が話してくれた時に、結論出てたことじゃないか」



 ライムは博士が以前話してくれた、事件の真相の内容を思い浮かべる。

 そして、当然の如く答えた。



「未来の俺の死を視てしまった博士が、俺を救うために装置を無理矢理起動させた時……その時、ラビ様と思われる、時の民の幻が博士の前から消えた……

 だからそのタイミングだったんじゃないのか? 時の軸(タイムアクシス)が止まった瞬間は……?」



 ライムの解答に、ナヴィは頷く。

 しかし、ナヴィは神妙な面持ちで、こう持論を説いた。



「うん。僕達はそういう結論を出していたね! でも……


 それは間違いだったんだ!! 僕達は大きな勘違いをしていたんだよ!! 実際に、ラビ様が時を止めたのは……




 もっと“前”のことだったんだ!!

 博士が僕達に話してくれた出来事、現れたラビ様の幻……

 それらはすべて、“未来”の出来事だったんだよ!!」






第125話 “導きだした答え” 完

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ