第124話「導きだした答え②」
ミツルギの目的は、キリシマの抹殺。
ライムがキリシマを倒そうが、ミツルギにはそんなことは関係ない。
ミツルギは塔から送られた助っ人の数人に、取り押さえられていた。
「離せ……離せよ!! 俺にキリシマを……キリシマを殺させろ!!」
「暴れるな! キリシマはもう敗れたんだ! それでいいじゃないか!!」
取り押さえる味方になだめられるも、ミツルギは言うことを聞かず暴れ続ける。
「それでいいはずあるか!! キリシマは気を失ってるというのに……なぜ誰もトドメを刺さない!? 俺が──俺がキリシマを殺してやる!!」
ミツルギの目は血走っていた。あの“赤い目”になっている。
キリシマのことになると、意地でも止まることのないミツルギの癖は、相変わらずのようだ。
ここに来て、今からミツルギの相手を……?
ライムにはもう、そのような力は残っていない。すべてを出し尽くしている。
ダイキ達含めた、周りの味方もそうだ。
もうそんな余力は誰にも残っていない。
(おいおい……勘弁してくれ!! これからミツルギと戦うのか? 無理だ……もうそんな体力、残ってるわけないよ!!)
せっかく大将のキリシマを倒したというのに……
ミツルギの強さは、一度手合わせしたライムはよく知っている。
まさかの伏兵が、味方に紛れ込んでいた……
疲れきった味方達に対し、ミツルギのアドレナリンは全開で、あり余るほどの力を見せている。
ミツルギは力で強引に、押さえつける者達の制止を振りきった。
自由になったと同時に、ミツルギは一目散にキリシマに向かって走り出す。
みんなで繋いで、ようやくここまで来たのに……
万事休すか!?
ライムは不覚にも諦めていた。
しかし、このタイミングで、まさかのもう一人の助っ人が現れ……
この窮地を救うことになるとは……誰もが予測できなかったことだろう。
キリシマ目掛けて走ろうとしたミツルギに、その助っ人は近寄り……
首元をガブリと鋭い牙で噛みついた。
すると、ミツルギは嘘のようにパタリと倒れ、その場で気絶した。
「!!! お、おまえは…………
解放軍のハヤテ!!」
まさかのもう一人の助っ人とは、ヴァンパイアの神獣を扱う、解放軍のハヤテだ。
「お前もいたのか!! この戦場に!!」
驚くライムと同様に、解放軍の相手をしていたミサキも、ハヤテの登場に目を丸くしている。
戦いの場に敵としてハヤテがいれば、ミサキも気づきそうなものだが……
ミサキが気づかないのも無理はない。
それもそのはず、ハヤテはたった今、この戦場に着いたばかりなのだ。
相変わらずアスカルト洞窟を拠点に置いていたハヤテは──
洞窟内に籠っていたことが仇となり、ウェダル平野でキリシマが抗争を繰り広げている事柄に、かなり遅れて気づくこととなる。
ハヤテは慌ててこの戦場へとやって来るも、その頃には戦争は、終焉を迎えていた。
いきさつはこの通りだが、ライムにはハヤテの行動に、深く疑問を感じていた。
『なぜハヤテは自分を助けるようなことをしたのか?』
ダイキ達のように、ライムの手助けをする義理はハヤテにはない。
「なぜあんたが俺達のことを助ける? あんたは大のキリシマ信者のはず。それがどうして……」
「勘違いして頂かないでほしいですね! 坊っちゃん! 別に私はあなたを助けたつもりはない……この成れの果てを見れば、どちらが勝ったかは一目瞭然だ」
傷だらけの多くの解放軍、何よりキリシマの敗北……
ハヤテはここからの巻き返しは不可能と踏んでいた。
そこに来て追い討ちをかけるように、キリシマを殺害しようとする者が現れる……
いくらハヤテが負けを認めようとも、黙って見過ごすわけにはいかない。
「あなた達がキリシマ様を塔に連れてって、どんな拷問をするかは知らないが……目の前でキリシマ様が殺されるところを、指をくわえて黙って見てるわけにもいかないでしょうに!!」
「そういう理由か……何にせよ、助かったことには変わらない。ありがとう!! ハヤテ!!」
どこまでも素直なライムは、ハヤテに礼を言って深々と頭を下げた。
ハヤテはそっぽを向いて、ふて腐れるようにして言葉を吐く。
「そんな真っ直ぐな目で見られても困るんですよ。ったく……キリシマ様に変なことでもしたら、承知しませんからね!!」
捨て台詞だけ残し、この場を去るハヤテ。
そんなハヤテに向けて、ナヴィは一歩前へ出て力強い口調で言った。
「うん、キリシマだけではない。犠牲者となった異界人の全員が、救われるように努めるから。だから心配しないでくれ!!」
堂々とナヴィは、そう言って見せるも、ハヤテは何の反応を見せることなく、足早に去っていった。
まさかの助っ人にも救われた形となったが、こうして──
ライム達の未来を守る者達 VS キリシマ擁する解放軍
二つの勢力の全面戦争は、ライム達の勝利によって幕を閉じた。