第120話「???①」
※ネタバレ防止のため、タイトルを伏せています。
地上に残る解放軍達は、ミサキ達にすべて託す。
ライムは龍と化すキリシマを討つために、神獣・フェニックスで空へと飛び立った。
(キリシマもずっと神獣と一体化してるんだ!! 体力は自然と減ってきているはず。きっとヤツももう長くはない。キリシマ──いや、親父!! すべてを──終わりにしてやる!!)
カコイマミライ
~時を刻まない島~
第120話
“親子の絆”
再び空へと舞い戻ってきたライムに、キリシマはなぜか少し嬉しそうだった。
好敵手の帰還に、喜びを感じていた。
「また戻ってきたか。ライム!! いい加減、しぶといやつだな!!」
「それはお互い様だよ! キリシマもそろそろ限界が近いだろ!? もう全部、終わりにしよう!!」
ライムの発言に、キリシマは強がりを見せる。
「何を言っている。私はまだまだ余裕だ! どちらが先にくたばるのか見物だな!!」
キリシマは内心、今のライムの言葉に図星をつかれ、焦っていた。
バレないようにと強がったわけだが、キリシマがここまで神獣の力を使い続けたのは初めて。未知のゾーンへと突入していた。
(もう、ちまちました攻撃ではキリがない!! ライムを囲う者達も、邪魔な存在だ。体力をかなり消費する大技だが……致し方ない。一撃で──全員解放させてやる!!)
キリシマは必殺技で、一気に全員のトドメをさす大博打に出た。
キリシマはおろか、ライムにも残された体力もあと僅かだ。
お互いが、限られた一撃にすべてを賭ける。
(そうは言っても、もう俺も体がもたねぇ……
“フェニックス ダイブ” こいつでヤツの体を貫いてやる!!)
ライムはそう腹を括り、フェニックス ダイブを決めるために、キリシマとの距離を詰めるが……
キリシマは突如としてその場で止まり、何やら不審な動きを始めている。どうやら力を溜めているようだ。
(なんだ? 何かをしようとしているのか……?)
力を溜めていることにライムは気づかず、警戒していた。
その間、キリシマは必殺技の準備を着々と進める。
するとその直後、真上にある雲が、急に黒くなり、空が濁っていった。
必殺技の前兆なのだろうか?
戦況を見守るナヴィが、すぐさま空の異変に気づく。
「突然辺りが暗くなり始めたぞ……これもキリシマの仕業なのか?」
キリシマはまだ何やら力を溜め続けている。
必殺技には、かなりの準備が必要らしい。
(ライムよ。受けるがいい。我が必殺技──“神の祟り”を!!)
神獣・ドラゴンの超必殺技
“神の祟り”
天候を操り、無数の雷を落とす大技。
天からの攻撃と、光の速さで落ちる稲妻に、回避できる者などいないだろう。
そして、雷が鳴ると同時に、雨も降りしきる。
そうなれば、火の鳥のフェニックスは力を失うに違いない。
キリシマの完璧な作戦が、遂行されようとしていた。
だが、この技にはそれなりの力を溜める準備と大幅な体力を消費する。
まさに、これこそがキリシマの正真正銘の最後の切り札というわけだ。
何を始めるか警戒し、静観してしまったライム。
どうやらその迷いは命取りだったようだ。
その分、キリシマに力を溜めさせてしまったことになってしまう。
時遅くして、そのことにライムは気が付いた。
(くそっ!! 力を溜めてやがったのか!! 何だか危険な香りがする……力を放つ前に倒すしかない!!)
ライムは一気にキリシマとの距離を詰め、龍の顔付近まで近寄った。
すると、キリシマはライムの方へ顔を向け、火炎放射のような、放射状の火を吹いた。
遠くへ飛ばす、火の玉とはまた違った使い方だ。
火の鳥である、フェニックスの体が焼ける。
「あ、熱っつ!! な、何で俺に火の攻撃が……!!」
キリシマは力を溜めながらも、別の攻撃を仕掛けることが可能のようだ。
意表を突かれダメージを受けたライムは、落下し始める。
(くっ……もう落ちるわけにはいかねぇ!!)
ライムは意地をみせ、空中でなんとか踏ん張りを効かす。
しかし、キリシマの次なる攻撃がライムを襲った。
龍の長い尻尾で、ライムを巻き付いたのだ。
キリシマはライムの体を完全に捕らえている。
キリシマは目一杯の力で、体を縛りつけるが、この技は一度、ライムは食らっている。
そう何度も同じ手を食らうライムではない。
「何度も同じ目に遭って……たまるかよ!!」
ライムは自らの体を燃え上がらせるように発火させた。
フェニックスを纏う炎は数倍にも膨れ上がる。高熱を帯びたライムの体に耐えきれず、キリシマはやむなくライムを離した。
「ぐっ!! 考えたな」
「熱いだろ!? 一気に行くぜ!! キリシマ!!」
呪縛が解かれたライムは、再びキリシマの頭上へと近づいていく。
だが──機は熟したといったところか。キリシマは溜めた力を放出するつもりだ。
「ライム!! もう手遅れだ!! 私の必殺技──“神の祟り”をくらうがいい!!!」




