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第112話「未来へのバトン③」

 ライムには、ナヴィの声が微かに聞こえたような気がしていた。

 それは空耳だったのかもしれない。遥か上空で、ナヴィの声が聞こえるわけがないのだから。


 けれども、何だって構わない。

 ライムはその声援を力に変え、更にスピードを上げた。



「こんなところで……キリシマの思い通りに……終わって……たまるかよ!!!」



 ライムは大声で叫んだ。

 それとほぼ同時に、爆弾の点滅と電子音のような音は、最高潮に達し……





 ドカーーーーン!!!!!




 と、今まで生きてきた中で一番の、生涯一の爆音が島中に鳴り響いた。


 

「きゃぁっっ……!!」



 強烈な閃光に爆音と共に、激しい爆風が地面に一瞬にして到達する。

 ミサキは両耳を塞ぎながら、姿勢を低くした。

 

 ミサキは薄目で、恐る恐る上空を見上げると……


 空は巨大爆弾の爆発の影響で、真っ赤に染まり、どこまでも爆炎は続いていた。

 この世の終わりを現しているかのような、地獄絵図が空一面に広がっている。



 だが、ライムの努力のおかげか、爆炎は地上までは達していない。



「時の塔は無事か!?」



 ナヴィは時の塔に目をやった。

 爆発に巻き込まれた時の塔は、グラグラと大きく揺れ動いている。


 しかし、神の創造物とも呼ばれた聖なる塔は、決して倒れることはない。踏みとどまっている。



 すべては──無事だ。

 ライムがやってのけたのだ。


 フェニックスで爆弾を空へと運ぶという、ライムの機転が功を奏し、島の人々、そして時の塔を救うことができた。


 あとはライムの命があるかどうか……ただそれを祈るだけである。

 ミサキは血眼になり、ライムを探し続けていた。


 すると……爆炎とはまた別の、“赤い光”がこちらに近づいてくるのが見える。

 ミサキはその赤い光が何なのか、すぐに勘づいた。


 

「──!! あれは……ライム!!」



 間違いない。あれはフェニックスのライムの姿だ。  

 ライムと思われる、高速の赤い光の物体は爆風に呑まれ、こちらに向かってるというよりは、“落下”しているにも見える。


 このままのスピードでは激突してしまうが、地面にぶつかる直前で、フェニックスは地面を擦るようにしながらブレーキをかけた。


 そのまま止まることなく、軽く15メートルほど慣性は働き、フェニックスの力を解いて降りようとしたライムは、体を吹き飛ばしながらゴロゴロと転がっていく。


 そしてやっとの思いで勢いを殺し、ライムの体が止まると……そこにはまるで隕石でも落下したのではないかと思われるくらいの、地面がえぐれた強烈な跡が残った。


 ミサキは大慌てで、その痕跡を便りにライムの後を追う。


 

「ライム!! 大丈夫なの!? 無事なら返事をして!!」


 

 ミサキの声に何の反応は見られなかったが、しばらくミサキが走り続けた先には……



 呼吸を乱し、傷だらけになりながらも、仰向けで寝転って空を見上げるライムの姿があった。



「がっ……ぐっ……! はぁ……はぁ……な、なんとか間に合ったのか!?」



 奇跡さながら、どうやらライムの命は無事である。

 ナヴィもライムの好判断にテンションをあげ、笑顔でライムの元へと駆けつけた。

     


「よくやったよ!! さすがは土壇場のライムだ!! あの窮地の場面から、よくやってのけた!!

 これほど凄まじい規模の爆発だ……まともに被弾していたら、島の多くを巻き込んでいたところだよ!! 時の塔も、終わりだったかもしれない!!」



 ライムはここでようやく、自分達や島の住人、時の塔を守り抜いたことを知る。

 ライムは決死の思いで、それらすべてを自らの手でもぎ取り、未来へのバトンをしっかりと繋ぎ留めていたのだ。



 キリシマの必殺技

 “異界からの解放(リターン)


 これが、まさかの不発に終わる。

 これ以上の切り札は、キリシマにないはずだ。


 キリシマは手を尽くしたに違いない。

 キリシマは未だ、ぼーっと立ち尽くし、ひたすら空を見上げている。


 恐らく切り札が不発に終わったことが、よほどショックだったのだろう……

 藻抜けの殻のように、体が完全に固まっていた。


 ナヴィはキリシマの戦意喪失と睨んで、勝利を宣言する。



「キリシマ!! もう諦めるんだ! これで分かったろ? ライムの勝ちだ!! おとなしく僕達の言うことを聞いて──」



 ナヴィがキリシマに話をしている最中……

 キリシマは突如、狂ったように高笑いをし始めた。



「はっはっはっは!! これはおもしろい……実におもしろいな!!」



 突然笑うキリシマに、思わずナヴィは警戒する。



「な、何がおかしい!! これのどこが一体、面白いことなんだ!!」



 キリシマは空を見上げたまま、ナヴィ達に背を向けた。



「まさか私の切り札が失敗に終わるとはね……ライムがここまでやるとは、考えても見なかったよ!!


 しかし、あの技は危険すぎるため、実験ができないからな。研究の成果の結晶が、まさにあの技だが……やはり実験を重ねなければ、こうも簡単に破られてしまう……


 まだまだ改善の余地があるようだ! 即ち、もっと強力な力が生み出せるということ! それを考えると……実におもしろい話だとは思わないかね?」



 キリシマは笑い狂いながら、まるで得意の科学の研究をしているかのように、流暢に喋っている。

 そして、キリシマはこちらを振り返り、ライムに目を向けた。



「おまえ()、空飛ぶ神獣を使うんだな。記憶を失おうとも、そこは親子だ……やはり我々は似ているな!!

 さぁ、ライム!! 本当の勝負は、ここらだ!!」



 キリシマは意味深な発言をし、謎の生命体へと姿を変える。


 何もキリシマの切り札は、異界からの解放(リターン)だけではない。

 これぞキリシマの最後の切り札──



 “神獣”の力を解き放った。


 すると、キリシマはみるみるうちに巨大化し、宙へと舞う。


 ライム達は上空を見上げた。

 キリシマは先程の大技、異界からの解放(リターン)と同じくらい……


 いや、それ以上の巨大な形へと姿を変えていたのだ。

 その恐ろしい変貌を遂げたキリシマを見たナヴィは、その正体を見破る。



「この神獣は……!! 神獣の中でも最強格に強いと恐れられている…… 


 神獣・ドラゴン……!!」






第112話 “未来へのバトン” 完

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