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第110話「未来へのバトン①」

 キリシマは息切れしたライムに近づいた。

 ミサキがライムを守るも、意味深なキリシマの行動にナヴィは違和感を抱く。


 だが、ミサキの発言により、左手に力を溜めていることが判明した瞬間、その意図をナヴィは見抜いた。



「そうか……そういう魂胆か!! ライム、ミサキ。今すぐキリシマから離れるんだ!!

 キリシマは自分もろとも、全員を巻き込んで──“自爆”するつもりだよ!!」






 カコイマミライ

~時を刻まない島~


第110話

 “未来へのバトン”






 自爆という予想外の展開に、ライムとミサキは驚愕する。

 逃げろと言われても、間に合うかは分からない……

 そう判断したミサキはライムの前に立ち、バリアを張った。



「さぁ、これでもやれるもんならやってみなさい!!」



 距離を詰めていたキリシマは足を止め、再び後ろへと下がり始める。



「バレては仕方ない。だったら何も今、この力を使う必要性はない」



 ナヴィの助言により自爆は免れたが、遠ざかったキリシマは更に力を溜めている。これではまだ安心できない。


 自爆という強行手段に出たキリシマに、ナヴィは疑問をぶつけた。



「なぜ自爆なんていう手を!? まだ勝負を捨てるには早いはずだ」



 キリシマは下を向き、ぼそぼそと語り始める。



「もう疲れたんだよ……私は。言っただろ? 何も私もなりたくて解放軍の頭になったわけじゃない。

 私を勝手に崇拝する者もいる中で、当然、憎む者もごまんといる……


 しかしそれもすべて、責任を果たすため、使命を果たすためと、堪え忍んでここまでやってきた」



 下を向いていたキリシマは、今度は空を見上げた。



「今や見て見ろ。この島を。私の意思は島全土に広がった!! 私は使命を果たしたんだ!! もう私の役目は終わったのだよ!!


 だから……すべてを私は終わらせる。ライムと共に、“私自身”が解放される時が来たのだ!!!」



 キリシマの自分に酔いしれた発言に、ライムは全力で否定した。


  

「何が疲れただ……何が使命を果たしただ……誰もそんなことは望んでいやしない!!

 勝手にあんたがそう思い込んでるだけ! あんたがやったことは、解放軍という殺人犯を、島中に大量に生み出しただけだ!!」



 ライムの言葉がよっぽどキリシマは気にくわなかったのか、キリシマは激怒した。



「何を知ったような口を……おまえに何が分かる!! 私の辛さを……私がどれだけ悩み抜いてきたことか……おまえにそれが分かるまい!!」



 キリシマの怒りに対し、それと同じような──いや、それを上回るような勢いで、ライムも(いか)った。



「俺にあんたの気持ちが分かるかだって? それはこっちのセリフだよ!! 俺がどんだけ悩んできたことか……自分の父親が解放軍のトップ、装置の開発者……どれだけ責任を感じて来たことか!!


 元はといえば、あんたが装置を作ったせいなんだろ? そんなの──自業自得だろ!! それが使命なわけがない!!!」



 ライムは吠えながら、キリシマに向かって走って行く。

 ミサキにはライムが怒りに身を任せ、がむしゃらに動いているようにしか思えなかった。



「ちょっと、ライム!! キリシマの左手には強力な力があるのよ? 飛び込むのは危険だわ!!」



 ミサキの声が聞こえなかったのか、それとも無視したのか。

 ライムは真っ直ぐキリシマ目掛けて突っ走る。


 迫るライムを見たキリシマは、してやったりの表情で、不適な笑みを浮かべた。



「私がただで近づいて引き下がると思ったか? そこら中に、設置型爆弾(モーション)が仕掛けてある!! かかったな! ライム!! すべて計算通りだ!!」



 それでもライムはお構いなしで突っ込み、いくつもの地雷を踏む。爆発音が響き渡った。



「ライムーー!!! 」



 ナヴィの叫び声と共に、爆煙の中にライムの姿が見えなくなった。

 キリシマが思わず白い歯を溢すも……


 次の瞬間には、キリシマの笑顔が──消える。



「何っ!?」


 

 なぜならそれは、爆煙の中から傷だらけのライムが現れていたからだ。


 地雷を踏みながらも、ライムは止まることせず、勢いそのままに突っ走っていた。

 そして、キリシマの目の前まで来たライムは、神力の力を使わず……


 己の怒りの感情と共に、思いっきり右手でキリシマの顔面を殴った。



「ぐっ……!!」



 鈍い音が鳴り、キリシマは吹き飛ばされるようにして、地面に転がっていく。

 そして、自らが仕掛けていた設置型爆弾(モーション)を寝転がる際に、いくつも踏み続けた。


 ドーーン!! ドーーン!! と、爆発音がこだまする。


 相手の技を利用した、見事な攻撃をライムはやってのけたよう思えるが、これも偶然の産物にしか過ぎない。決して狙った訳ではなかった。


 意地でキリシマに立ち向かったライムに感化されてか、キリシマも意地を見せる。

 

 自らの爆弾にやられボロボロになりながらも、キリシマは立ち上がったのだ。

 その姿を見たライムは、キリシマに向けて言い放つ。



「まさかこれも計算通りなんて言わないよな? 見ろ。物事はすべて、計算通りになんて行きやしないんだ!! 


 天才と持て囃されようが、あんたもただの人間だ。そんなただの人間に、未来が予測できるわけがない!!

 先のことなんか誰にも分からないんだよ!! おまえの思い通りになんかさせてたまるもんか!!」



 時の研究者のお株を奪うような発言に、キリシマは苦笑いした。



「言ってくれるな。ライム。どうだ? 父親を思いきり殴った気分は?」



「いつか殴ってやろうと、ずっと思っていたんだ。清々した気分だよ!」 



「生意気な。だが、残念だな。ライム。結果的に、すべては私の思うがままだよ! もう十分だ……時は来た!!」



 キリシマの計画は狂いつつ、右往左往しながらも、結果的には同じ道に辿り着いていた。

 ついに溜めに溜めた左手の力を、キリシマは放つ。




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