第107話「使命②」
「私は間違ってなんかいない!! これが私の“使命”なのだから!! 間違っていたとしたら、今までの私は何だったのだ……私だって、人殺しなんかしたくない……
心を鬼にして、すべてを犠牲にしてここまで来たというのに……それが間違いだったなんてことが、あってたまるものか!!!」
キリシマは断固として、ナヴィの話を認めなかった。
本当は頭では理解していても、認めてしまえば、今までの自分の行いは、すべて無駄となってしまう……
そんなこと、今更言われてもキリシマは信じるわけがなかったのだ。
哀れなキリシマの姿を見たライムに、虫酸が走った。
難しい話はナヴィに任せ、だんまりを決め込んでいたが、とうとうライムは我慢できず、その重たい口を開いた。
「いい加減にしてくれ……もうやめよう……間違いを認めてくれ」
「──!! ライム………」
父としての記憶はないと言われようとも、見た目はそのままの、実の息子だ。
そのライムに面と向かって言われたキリシマは、多大なるショックを受けていた。
しかし、キリシマは負けじと、自分の信念を貫く。
「おまえは騙されているんだ。ライムこそ気づくべきだ! 記憶を失っているのだろ? 何か変なことを吹き込まれたに違いない……どうして父の言うことの方を信じないんだ!!」
ライムの言葉すらも、キリシマには通じはしない。ナヴィは呆れていた。
「見苦しいぞ!! キリシマ!! 自首すべきだ……そうすれば、今からでも被害を減らせるかもしれない!!」
「貴様……ナヴィと言ったな? 私は科学者だ。こんな話を知っているか?」
キリシマは、ある例え話を出した。
「科学者とは誰に何と言われようと、自分の信念を曲げない生き物なんだ。新事実を発見し、学会や論文で発表しても……今までの事実を覆すものなら、それは認めてもらえず、バカを言うなと笑い者にされる!!
そして、一生バカにされ続けるも、その者の死後、正しかったことが判明し、ようやくその事実が認められるんだ。学者の中では、よくある話なんだよ!」
突然、学者の話を長々としたキリシマに、ライムは戸惑っていた。
「その話がどうしたって言うんだ!!」
キリシマはため息をついて、やれやれと言った様子で、小さく首を横に振った。
「ライム……おまえはそんなに頭の悪い子だったかな? まさに今の状況と同じってことなのだよ!
誰が何と言おうと、私は自分の考えを、行いを信じる!! いち科学者として、私は戦う!! 私と一緒に来ないつもりなら──
解放してやろう!! ライム!!」
キリシマは構え、戦闘体制を取った。
『実の息子を殺すつもりか?』
ナヴィは驚いたが、キリシマの思想を考えれば、そのような結論に至るのも無理はないのかもしれない。
(キリシマにとっては、今を生きる者も未来を生きる者も関係ない……存在を消すことが、救われることと信じている……だからライムすらも手にかけるのか!!)
ライム、ミサキ VS 解放軍キリシマ
やはりこの形になるべくして、なってしまったようだ。
ひたすら話を聞き続け、疲れきっていたミサキは、今一度気合いを入れ直す。
「やっと話が終わったと思ったら……結局こうなっちゃうのね! もう、仕方がないわね!」
ライムも覚悟を決めた。キリシマに銃口を向ける。
「やるしかないのか……だったら、俺がキリシマを──止める!!」
キリシマに狙いを定めるナヴィは、ライムに念をおした。
「ライム!! キリシマは必ず生け捕りにするんだ!! 装置の犠牲者を救うには、“キリシマ”は鍵になるはずだ。加減しろってのも難しい話かもしれないけど、そこのところ、よろしく頼む!」
「おっと、そうか……」
ライムはガンの力を一度解いて、手を降ろした。
もちろん殺すつもりはライムにはないが、その辺の微調整は難しい。
手を止めたライムに対し、キリシマはライムに向けて“何か”を投げた。
キリシマにとっては、そんな相手の都合は関係ない。お構いなしだ。
「──!! 何の神力だ……?」
何の能力かは定かでないが、まだ距離があるうちに、ライムは飛んでくる謎の小さい楕円形状の物体に向かって発砲した。
「なんだか分からないけど……放っておくわけにもいかないだろ!」
神力・ガンで、ライムが謎の楕円形の物を撃ち抜くと……
バーーン!! と、大きな音を立てて、その楕円形の物は破裂した。
破片が飛び散り、ライム達は慌てて、手を顔の前に出してガードする。
「なんだ、今のは……俺のガンが当たったと同時に、“爆発”した!?」
ライムの言葉を聞いたキリシマは、ニヤリと笑った。
「よく気づいたな。ライム!!
私の神力は“ボム”──爆弾の能力を持つ!!」
第107話 “使命” 完




