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第101話「罪悪感と責任感②」

 ライムとミサキは二人のレベルの高い会話に、全くと言っていいほどついていけない。ただ黙って静観するしかなかった。


 博士は自分が時の軸(タイムアクシス)を生きていたと証明すると同時に、ライムも時の軸(タイムアクシス)を生きていた者と証明づける。



「私と同様に、ライムも同じことが言える。私はライムの交通事故を防ぐために、学校前の交差点に装置の座標を設定していた。ライムが時空の歪みに飲み込まれたのは、その場所なんだろ?」



 ライムは当時の記憶を呼び起こし、思い出す。



「あぁ、場所はそこで間違いない。確か時間も博士が指定した通りだ! 俺は遅刻ギリギリで……もうすぐ学校のチャイムが鳴るって時刻だった気がする!」



 これでライムも時の軸(タイムアクシス)を生きていたことが証明された。


 3日後の未来に、全く同じ時間に同じ状況となっている可能性も否定はできないが──

 それこそ極めて低い確率だ。これは証明されたと言っていいだろう。



 こうして自身とライムが時の軸(タイムアクシス)を生きていた事を証明し、それを踏まえたうえで、博士は話を続けた。



「それを前提として話をさせてもらうが、私とキリシマがどうして、こうも性格が違うのか……その理由は──


 私が感じる気持ちと、未来のキリシマが思う気持ちが違うからだ。

 私には“罪悪感”があるが、恐らく未来のキリシマにあるのは──“責任感”だ!!」



 さすがのナヴィにも、博士の話す違いの意味が分からなかった。その理由を問い詰める。



「罪悪感と責任感……どうして、そう変わってしまったと思うんだい?」



「それは、この事件の真相を知っているかどうかで違いが生じる。私は自ら装置のボタンを押し、過ちを犯してしまったと、罪の意識を感じているが……


 突然、時空の歪みに飲み込まれた未来のキリシマの方は、何が起きたか全く分からない……


 しかし、それでも未来のキリシマにも分かっているはずだ。自分の生み出した装置が、事件の根源であることを!!」



「なるほど! 未来のキリシマは、なぜ自分が時空の歪みに飲み込まれたかの、その理由を知ることはないが、過去の自分が何かやったに違いないと考える……

 きっとこの異世界に巻き起こる大事件は、全部過去の自分のせいだと……だから責任感が生まれるわけか!!」



 もちろんあくまでキリシマ博士の憶測に過ぎなかったが、かなりの説得力がある。

 いや、本人のペアなのだから、考えが一致するのは当たり前とも言えるのかもしれない。


 これで二人のキリシマの性格の違いは理解できた。

 だが、解放軍キリシマを倒すには、まず大きな問題がある。それは──



 果たしてキリシマはどこにいるのか?


 ということだ。キリシマの居場所が分からないのだ。


 この広い異世界、通称『時を刻まない島』の中での人探しは、困難を極める。

 ましてや島全土に渡って、大々的に指名手配を行っているキリシマだ。

 それでも所在が分からないのだから、かなり難易度の高いことなのだろう。


 不思議と目撃情報が出回らないのも、何か“裏”を感じざるを得ない。

 キリシマの意志は拡大し続けているため、キリシマを崇拝する解放軍に加入した者達が、情報を揉み消しているに違いない。

 世に出る情報より、抹消されてしまう情報のが多いことこそが、解放軍の加盟人数の多さを物語っている。



 そのライム達の“これから”にのし掛かる、重大な問題……

 ナヴィは無理難題と承知のうえで、博士に尋ねてみた。



「博士……これが僕達の今後の大きな課題にもなるんだけど……キリシマの居場所がまるで分からないんだ。ペアの博士なら、何かヒントが──分かったりしないかな?」



 険しい顔つきのナヴィの姿を見て、博士は思わず笑みを溢した。



「はっはっは! そんな困った顔しなくても、それは簡単な話だよ! キリシマの居場所だろ? 分からないなら、誘き出せばいい!!」



 ダメ元で聞いていたナヴィは、まさかの博士の返答に驚きを隠せなかった。

 

  

「えぇっ!! 簡単な話なのかい!? 大変なことだと思ってたのに。誘き出すって……一体どうすればいいんだ?」



「それは──ライム。ここでおまえの出番だよ!」




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